45_決着
ドッ ドッ ドッ ドッ ドッ ドッ
琥太郎が上空へと向けた右手の平から、先程までよりも少し大きい、ソフトボールサイズの「気」の連弾が上空へ向けて6発撃ち出された。
美澪は、琥太郎の左手から引き続き撃ち出されている連弾と同様に右手から発射された大き目の連弾も横に躱して避ける。しかし右手から撃ち出された大き目の「気」弾は、美澪の動きに合わせて軌道を変え、美澪を追尾してきた。
「うっ!」
美澪は軽く舌打ちすると、今度は躱しきれないと判断し、飛んできたソフトボールサイズの「気」弾を爪による斬撃で払い落とした。続く2発目も爪による斬撃で払い落そうとするも、琥太郎の「気」弾には当たらず外れ、斬撃が背後の倉庫に向かって飛んでいく。
「やばっ!」
琥太郎が慌てて倉庫に向かって飛ぶ美澪の斬撃を「気」の操作によって上空へと逸らす。その瞬間、琥太郎は倉庫の方から強い妖気を感じた。
ボワンッ
「えっ、何?」
美澪の斬撃が当たりそうになった倉庫が一瞬強い妖気に包まれた気がした。
琥太郎は上空の美澪に向けて引き続き左手から「気」の連弾を放ちつつ、横目でチラリと背後の倉庫の方を見る。しかし、そこに特に変な妖気などは無く、目に映ったのは何事もない普通の倉庫だけだ。
「「……あれっ、今のって気のせいじゃないと思うんだけど…、何だったんだろう。」」
上空の美澪は、空中に妖気の足場を作りながら琥太郎の「気」弾を上下左右へと躱しつつ、爪による斬撃で迎撃しようとしていた。しかし、追尾型の「気」弾に対処出来たのは結局3発目までだった。
続けざまに飛んできた4発目は払い退ける事が出来ず、左肩に被弾してしまう。大きく態勢を崩された美澪は、そのまま5発目、6発目と立て続けに「気」の連弾を被弾した。更に、同時に連射されていた琥太郎の左手からの連弾も被弾し、まるで糸の切れた人形のように上空で身体が吹き飛ばされてしまう。
琥太郎が慌てて連射を止めるも、美澪はそのまま妖気の足場を作る事も出来ずに地上に落ちてくる。琥太郎は美澪が地上に衝突する前に「気」のクッションを作り美澪の体を受け止めると、慌てて美澪に駆け寄った。
「美澪、大丈夫?!」
「う~ん、やっぱり琥太郎には全く歯が立たないなぁ。琥太郎が変わらずに強くて嬉しいような、でも、やっぱり悔しいような…、う~ん、やっぱり悔しい!」
「え~っと、それよりも体は大丈夫なの??」
「うん、凄く痛かったけど、大きな怪我はしない程度に琥太郎は手加減してくれてたでしょ。だから、痛いけど大丈夫だよ。」
琥太郎は軽く目を閉じて周囲の空間に残って漂っていた美澪の妖気を集めると、横たわっている美澪の体へとその妖気を戻していく。
妖は自身の妖気で身体が満たされる事で怪我が治りやすくなり元気にもなる。妖気の濃度が上がれば、更にその効果も上がるのだ。
「ヘヘヘ…、この感触、久しぶりで懐かしい。琥太郎がこうして妖気を体に戻してくれるのってやっぱり気持ち良い。」
「美澪が動かないまま上空から落ちてくるんだもん、びっくりしたよ。」
「相手が琥太郎じゃなかったら、自力でなんとか着地しようとしたかもしれないけどね、琥太郎と一緒なら琥太郎は絶対に私の事を守ってくれるでしょ。だから、琥太郎の「気」弾を連続して被弾しちゃって完全に負けたと思った時点で、もう全部諦めてそのまま落っこちてきたの。」
「いや、もちろんなんとかはするつもりでいるけどさぁ、それでも美澪が動かなくなって落ちてきたら、それはびっくりしちゃうよ。それに、万が一何かあったら大変だから、一応美澪自身も自分で受け身位はとれる体制をとって欲しいんだけど。」
「琥太郎なら万が一なんてないもん。」
「「……う~ん、そこまで信頼されちゃうとプレッシャーだなぁ。ところで、さっき倉庫から感じた妖気って何だったんだろう。絶対に気のせいじゃないよなぁ。」」
琥太郎が背後の倉庫の方を振り返って見る。そこにあるのは一見すると何事もない、今日の営業を終了した後の普通の倉庫だ。
琥太郎は、倉庫全体を視界に収めつつ、グッと集中して倉庫の気配を探った。すると、閉まっている出入口のドアの横の外壁の陰から、何やら気配を消して潜みながら、そっとこちらを覗いている何かに気づいた。
「あっ、何かいた。」
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