33_回し始め

「はい、じゃあ宜しくお願いします。บรรลุพุทธภาวะ」


再び噴出した風音さんの霊気を、琥太郎が丹田を中心に回転させながら圧縮していく。


「ふぐぅっ、はふぅっっ…」


やっぱり風音さんが顔を赤らめながら、ちょっと辛そうな顔をしつつも頑張っている。

琥太郎は先程ほど風音さんの霊気を圧縮せずに、ある程度霊気の回転が落ち着いてきたところで操作を中断する。それと同時に、丹田を中心に霊気が綺麗に回転していたのが、少しづつ回転が止まりながら霊気も乱れていく。そこでまた琥太郎が操作して、霊気の回転が落ち着いてある程度圧縮されたところで、また操作をやめる。


「ふむぅ~!」


なんだか風音さんが、会社では聞いた事がないような声を先程から出しながら頑張っている。しかし、それでもやはり琥太郎が操作を中断すると霊気の回転が止まりながら霊気の流れも乱れてきてしまう。


「風音さんどう、何か掴めそう?」

「はい、霊気が体の中で動いているのは感じられていて、琥太郎先輩が操作を中断した後も、私の意志で霊気がちょっと動いてる感じもつかめてきてはいるんです。だけど、確かに私の意志によって霊気が動きはするんですけど、その動きをまったく制御できないというか、思うように動かせない感じです。」

「えっ、それって物凄い進歩なんじゃない?」

「はい。私もそう思います。今まで、体の中の霊気の動きをここまでしっかり感じながら術を発動させるなんて事ありませんでしたから。」


どうやら成功に向けて確実に前進しているようだという事で、その後もこまめに休憩をはさみながら、琥太郎が霊気を回転させながら圧縮して、風音さんがその回転を維持しようとするといった事を続けた。


「風音さん、すごいよ!俺が霊気の操作をやめた後も、霊気の回転を維持できる時間が確実に伸びてきてるよ。」

「霊気を回転させる、そのまわす感覚というか、リズムみたいなものがちょっとづつ解ってきてるんですよね。自分でももうちょっとって感じなんです。だから、本当に申し訳ないんですけど、琥太郎先輩ももうちょっと続きをお願いしていいですか。」

「もちろんだよ。せっかくここまでやってるんだし、絶対成功させようよ。」


そんなやり取りをしながら休憩をはさんだ後、数度の失敗の後に、ついに風音さんが霊気の圧縮に成功した。


「おぉ~、風音さん、出来てるよ!綺麗に回転させながら、霊気がしっかり圧縮されてるよ!!」

「ふんっ!」


琥太郎が、風音さんが自身で霊気を圧縮出来た事を喜んでいると、風音さんが圧縮した霊気を石に向けて放出した。

風音さんの右手の平から石に向けて放出された霊気は螺旋状に回転をしながら、拡散せず、まっすぐ石に到達する。すると、先程同様に霊気を浴びた石が青白く輝きだした。


「うおぉぉぉ~風音さん! ちゃんと霊気が拡散せずに石に届いてるよ!!」

「ありがとうございます!やっとここまで出来ました。あとは、琥太郎先輩が最初の霊気の回し始めを手伝ってくれているのを、全部ひとりで出来るようにしなくちゃですね。」


今はまだどういうわけか、風音さん一人で霊気の回転を始める事が出来ない。琥太郎が軽く霊気を回してあげると、そこからは風音さんがその回転を加速させながら圧縮していく事が出来る。先程から風音さんが自身で霊気を回し始めようと頑張っているものの、霊気はモヤモヤと丹田の方向に少し寄っていくといった程度で、しっかり集めて回すというところまでは出来ていない。それを琥太郎が軽く回してあげさえすれば、ほぼ確実に風音さん一人でしっかり圧縮して術を発動させられるようにはなった。


「はぁ、難しいです…。なんで最初の回し始めがうまくいかないんだろう。ここまで出来てるのに。」

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る