32_練る
「風音さん、もう一度試してみたいんだけど、さっきの浄化の術をまたやってみてもらってもいいかな。」
「はい。บรรลุพุทธภาวะ」
あらためて風音さんから放出されている霊気の流れを見てみるが、やはりお腹の中で集められたり圧縮されたりしている様子はなさそうだ。そこで琥太郎は、風音さんの体から外に向けて放出されている霊気を、全て外には出さずに風音さんのおヘソの下あたりに向けて流してみた。
「ふぐぅっ」
風音さんからなんだか変な声が出たが、琥太郎は構わず霊気を風音さんのお腹の中で圧縮していく。
「ふぐぅぅぅぅっ」
風音さんがいよいよ大変そうな感じになってきたので、そこで琥太郎は圧縮した霊気を風音さんの右腕を経由させて、手の平から放出させてみた。
ボフォッ
風音さんの右手の平から勢いよく霊気が噴出する。今度は先程よりも大幅に勢いがあるものの、やはり手の平から放出された霊気は目標である石にまっすぐには向かわずに、広範囲に拡散してしまっている。
「う~ん、これだとまだ駄目か…、風音さん、悪いんだけどまだいける?」
「はっ、はい。大丈夫です…、だと思います…。ふぅ~、บรรลุพุทธภาวะ」
風音さんの祝詞とともに噴出した霊気を、琥太郎が再び風音さんの丹田に向けて流す。しかし今度は、まっすぐに丹田に向けて流して圧縮するのではなく、丹田を中心に時計まわりに霊気を回転させながら圧縮していく。
「ふぐぅっ、はふぅっっ、はあぁ~ん」
なんだか風音さんが、ちょっと変な声を発しているが、構わず圧縮を続ける。
「あっ、あぁ~」
先程直線的に圧縮した時よりも更に霊気が圧縮出来ているようだ。そこで琥太郎は、回転させながら圧縮した霊気を螺旋状に回転させながら、再び風音さんの右腕を経由させて右手の平から放出させた。
すると今度は、霊気が風音さんの手の平サイズの太さを維持したまま、目標の石まで到達した。しかも、石に霊気が到達した時点で琥太郎が霊気の操作をやめたのだが、その後も風音さんの霊気は螺旋状の回転を維持したまま石に届き続けている。そのうちに、霊気を浴びている石が青白く光りだした。
「えっ?!」
それを見た風音さんが、驚いて術を解除した。
「なるほど…。風音さん、今のならうまく出来るかも。」
「はぁはぁはぁ… えっ、琥太郎先輩、何をしたんだかまったくわからないです。はぁはぁはぁ…」
「風音さん、だいぶ息が上がってるけど大丈夫?もしかして痛かったりする?」
「いっ、いえ。痛くはないんですけど、もぞもぞするっていうか、その…、だっ大丈夫です。」
「そっ、そう?大丈夫ならいいんだけど。無理はしないでね。」
「はい。本当に大丈夫です。はぁはぁ… だけど、最後のは何をしてたんですか。」
琥太郎はあらためて風音さんに施した霊気の操作の内容を説明した。
「丹田を中心に霊気を回転させながら圧縮して溜め込んでいくんですね。それがお父さん達がしきりに言ってた練るって事なんですね。」
「う~ん、風音さんが教わってきた練るっていう動作で間違いないかどうかはわからないんだけど、こうすると全方向に無駄に放出されちゃってた風音さんの霊気が、無駄なく対象に届くっぽいかな。」
「きっとそうなんだと思います。それを絶対に覚えたいです!」
上がっていた息も収まり、風音さんが俄然やる気だ。
「一人で術を唱えていた時と、最後に俺が補助した時の感覚の違いってわかる?」
「はい、琥太郎先輩に補助してもらったのは、なんだかお腹の中で動く「気」を感じられていました。だけどもっとしっかり違いを感じ取りたいので、まだ何度か補助を続けてもらってもいいですか。」
「うん、それは問題ないんだけど、本当に無理はしないでね。」
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