3_解けた封印
「あのぉ~、お話が済んだら、ここから出て行ってもらえますか?」
霊の女の子が少し気まずそうに話しかけてきた。さっき程怒ってはいなそうだけど、それでも表情はまだ少しイラついて見える。
「えっ、だってここは俺が借りてる部屋だよ。」
「もともとは私が契約してたんだよ! その時の彼氏に殴られて私死んじゃったけど…。その後もずっと静かにここで暮らしてたのに、あなたがここに来てからは超迷惑してるんだから!」
「えぇっ? この部屋ってそんな事があったの?! 契約した時に不動産屋さんも大家さんも何も言ってなかったけど。(だからこの部屋、少し安かったのか…)。だけど、俺が来てから迷惑してるって、俺の前に何人もここに住んでた人がいたでしょ。俺そんなに騒音を出したりしてないし、掃除だって凄くたまにだけどやってるし、そんなに悪い住人じゃないと思うんだけど。」
「あなたがここにいると、なんだか頭痛がするし乗り物酔いみたいに気持ち悪くなって吐き気がしてくるし、とにかく近くにいられるとめちゃめちゃ辛いんだから! …って、あれっ?今は平気になってるかも。なんでだろう?」
「あっ、私も琥太郎の傍に近寄ると頭痛くて気持ち悪くなってたんだけど大丈夫になってる!」
「そういえば、繁蔵爺さんが俺の封印は俺自身の能力を封じ込めるだけでなく、かなり強力な魔除けの効果もあるって言ってた。きっとそのせいだと思う。そのせいで幽霊の君に迷惑かけてたなら、なんかごめんなさい。」
琥太郎は霊の女の子に頭を下げた。
美澪がじっと琥太郎の全身を見つめながらつぶやく。
「封印が解けたんだね。」
「やっぱりそうなのか。封印をした神主さんの話だと、封印は15歳を過ぎたくらいで枯れてなくなるだろうって話してたんだ。だけど、15歳を過ぎても何も変わらなかったから、能力自体が無くなったと思ってた。そうかぁ、今まで封印が残ってたのかぁ。」
どうやら時間とともに弱っていた封印が、美澪と霊の女の子が争った際の「妖気」と「霊気」の圧力によって弾けて解けたようだ。
琥太郎は右手と左手それぞれの手の平の上に、色の違う7つづつの「気」の玉を作り、それらをジャグリングのように回転させて見つめた。琥太郎が子供の頃に1人でぼーっとしながらよくやっていた遊びのようなものだ。
「「……この感触、なんか懐かしいなぁ」」
「ところで、さっき2人は喧嘩してたみたいだけどどうしたの?」
「あの霊が突然攻撃してきたんだよ!」
「だっ、だって、ただでさえ近くにいられると頭がガンガンして気持ち悪かったのに、今日は知らない妖の娘までズカズカと入ってくるんだもん。私の部屋なのに! もういい加減我慢出来なくて追い出そうとしてたの!」
美澪と幽霊の女の子がふたたび睨み合う。
「ねえちょっと2人とも!、お願いだからもう喧嘩しないでよ。」
睨み合ってる2人の視線を遮るように琥太郎が2人の間に立って、霊の女の子の方を向く。
「もう俺の封印も解けたみたいだし、頭が痛いのとか気持ち悪くなるのは無くなったんでしょ。だったらこれまでどおり俺がここに住んでいても問題ないよね。それと、美澪は俺の幼馴染で友達だから部屋に入ってもいいでしょ。」
琥太郎は美澪を振り返り、
「美澪ももう彼女と喧嘩しないで仲良くしてね。」
美澪はなんだかちょっと不満そうだ。
琥太郎は再度霊の女の子の方を見る。
霊の女の子は美澪が今後も出入りする事になりそうな事に驚いてか唖然としてこっちを見てる。
「そうだ。俺もあらためて自己紹介しないといけないね。俺は焔琥太郎。それと、彼女は幼馴染で水虎の美澪。よろしくね。」
「えっ、え~っと、え~~っと…、私は神宮寺流伽(じんぐうじ るか)だよ…。だけど…、なんていうか…、今までは琥太郎に私が見えてなかったから同じ部屋にいても見られる心配とかしてなかったんだけど…、私が見えちゃってるとなると、同じ部屋に住むのは気まずいっていうか、恥ずかしいっていうか…」
「あっ、そうか…、確かにそれは…」
琥太郎はあらためて流伽を見るが、流伽は霊であるという点を除けば、大学生位のかわいい女の子だ。出るところもしっかり出ていて、スタイルもかなり良い。さすがにこんな女の子と一緒に住むというのは琥太郎も気恥ずかしいし何より落ち着かない。
すると突然、
「私も琥太郎と一緒に住むっ!」
背後で美澪が叫んで琥太郎の腕を引っ張った。
「えっ、えっ~~~!」
「えっ~~~~~~!」
琥太郎と流伽が同時に美澪の方を見て叫んだ。
美澪は妖が人間よりも成長が遅いというとおり、本来23歳であるはずなのだが、見た目は15~16歳、中学生か、せいぜい高校生といった感じ。
顔は幼い頃の面影が僅かに残っているように思う。幼児特有の丸っこい顔つきが少しシャープになって、クールな感じの美人になりつつある。
身長は低い。ネコ耳(美澪の場合にはトラ耳か?)を含めて150cmになんとか届くくらいだろうか。
胸は、注意してよく見ると僅かに膨らんでいる。
ホットパンツとニーハイソックスの間に覗く太ももは、細いながらもしっかりと筋肉がついている。
パンッと張った小さめのお尻から、ギュッと細くくびれたウエストのラインは、既に完全に女の人のそれだ。
まだ多少は幼さが残る見た目とはいえ一緒に住むとなると、やはり問題があるのではないだろうか。
「みっ、美澪、え~と、それはまずくない?」
「何がまずいのっ? 霊の女の子とは一緒に住めるのに、私とは一緒に住めないってわけ?!」
「わっ、私も嫌っ! どうして私が突然妖さんと一緒に生活しなくちゃいけないの? 琥太郎はここの入居者だから仕方ないというか、まあそれはそれで困るんだけど…、あなたは全く関係ないじゃない!」
「関係なくなんかないよ! だって、幼馴染で仲良しなんだから。それよりも、琥太郎と知り合いでもなんでもないあなたが一緒に住む方がおかしいよ!」
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