2_再会
今、目の前で号泣している女の子からは、はっきりと女の子の放つ「気」が見えて、感じられる。その「気」は妖の「妖気」だ。長い間見る事も感じる事も出来ずに忘れかけていたけ感覚だけど、今はまた確かに「気」が見えていて感じられる。しかもこの女の子の「気」は知ってる! この「気」ははっきりと覚えてる、琥太郎の大好きだったとても懐かしい「気」だ。
「えっ、もしかして…… 」
とその時、部屋の入口の方にも何やら別の「気」を感じた。そちらを振り返ると、そこには20歳くらいの女性が立っていた。
身長は160cmくらいだろうか。
膝上丈の黒の半袖のワンピースで、しっかりと膨らんだ彼女の胸までかかる大きめの襟は白色。
緩くウェーブのかかったセミロングの髪には2つの白いリボン。
白いストッキングにアンダーリムの黒ぶち眼鏡。
いわゆるゴスロリといった感じのファッションだろうか。顔は小さくて可愛らしいものの、なんだかこっちをめちゃめちゃ睨んでる。
彼女が纏っている「気」は霊のものだ。しかも、なんだかかなりの「怒気」をはらんでいる。
「もうっ、あなた達なんなのっ! ここは私の場所なんだから!! とにかくもう出ていってよっ!」
こちらに向けた彼女の両手の平の周りが鈍く銀色に光った。強烈に圧縮された彼女の霊気だ。
「あんたこそ何よっ!!」
目の前の女の子も部屋の入口の霊の方に向かって右手を向けると、彼女の右手の平が再び青白く光った。彼女のはやはり強烈に圧縮された妖気だ。次の瞬間、霊の女の子の手の平の霊気の塊と、目の前の女の子の手の平の妖気の塊が同時に打ち出される。
ボワンッ!
打ち出された霊気と妖気が部屋の真ん中で衝突するも、それらは巨大な2つの水風船のようにボヨンボヨンと大きく波打ちながら部屋の中央で静止した。琥太郎が、打ち出された霊気と妖気をそれぞれ咄嗟に操作したのだ。
「ちょっとっ、何やってるの!こんな狭い部屋でやめてよ!!」
琥太郎は叫んで、大きくため息を吐くと、立ち上がって部屋の窓を開けた。そして部屋の真ん中で静止している彼女たちの圧縮された霊気と妖気を空に向かって拡散させる。
「「……すげー久しぶりなのに、案外体が覚えてるもんなんだなぁ」」
久しぶりに「気」を操作出来た事に、琥太郎は感慨深く自分の手や体を眺めた。
「それでっと、なんだか訳がわからないから2人ともちょっと落ち着いてよ。いろいろ話を聞きたいからさぁ。」
「えっ、あなた私の事が見えるの?!」
霊の女の子が驚いて目を見張っている。
「うん、さっき突然見えるようになったんだ。君は幽霊さんだよね。」
「そうだけど、あなたは私が霊なのに怖くないの?」
「あぁ、昔はいつも霊とか妖とか見えてたからね。霊や妖の友達もいたし。慣れてるから大丈夫だよ。まあ、結構長い事見えなくなっちゃってたんだけどね。ところで…」
琥太郎は目の前の女の子に目を向ける。
「美澪… だよね?」
「琥太郎、………うわぁ~~~んっ ………どうして忘れてたのっ! 私はずっとずぅ~っと琥太郎の事を気にしてたのに!!」
「いやっ…、忘れてたわけじゃないんだけど………、 だって、美澪はどうしてそんな子供っぽい見た目なの? 中学生位にしか見えないよ。美澪は俺と1歳しかちがわないでしょ?」
「人間は私達よりも歳をとるのが早いんだよ。大人の姿に成長するのも人間の方が早いんだよ。」
「そうなんだ、ハハハ、じゃあまだまだ美澪はお子ちゃまなんだね。」
ズドンッ
美澪が琥太郎に向かって青白い妖気の炎弾を発射したが、炎弾は琥太郎に当たる直前で弾かれて天井で静止した。そして開けっ放しになっていた窓から出て、外で拡散して消えてしまった。
「なっ、何やってるんだよ!こんな至近距離で危ないってば!!」
「お子ちゃまじゃないもん!! それに琥太郎には絶対に私の攻撃は当たらないでしょ。私だって1度くらいは琥太郎に攻撃を当ててみたいのに。」
「「気」が見えて扱うのなんて超久しぶりなんだよ。きちんと操作出来るかもまだわからにのに危ないってば。しかも昔よりも攻撃が強くなってない?」
「当たり前でしょ!私だって成長して強くなってるんだよ! でも、やっぱり琥太郎には当たらなかったけど。なんかちょっと悔しい。」
「やっぱり当てる気だったんじゃん! あんなの当たってたらひとたまりもないよ。もう………」
「だけど、また私の事見えるようになったんだね。嬉しい。とっても とっても とっても嬉しい!」
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