陸斗と別れて私が活動を再開してから、今日でちょうど一年経つ。未だに誹謗中傷のDMは来るし、陸斗のリスナーさんからは絶えず監視され、私が何か発言するたびに匂わせだと言われ叩かれる。それでも諦めずにこの活動を私なりに一生懸命やってきたつもりだ。


私は配信サイトを同接数の多い枠から順にサムネイルだけを眺めて回っていた。そしてスクロールするとその先になつかしい名前を見つけた。




…あっ、陸斗、今の時間に配信してたんだ…

ちょっとだけ見てみようかな、、?




私が枠に入ると陸斗はちょうど歌枠配信をしていた。陸斗はその後も可愛いキャラは変えずに活動していた。サポーターの数も、Twitterのフォロワーの数も以前の何倍にもなって、昔から上手かった歌もさらに上達していて、ここまで伸びたのもすごく納得できる。きっと見えないところでも努力を重ねているんだろう。すごいなあ、は…。

私がいま見ている配信主はもう私の知っている人じゃないみたいに感じた。私はしばらく配信を見てから満足してパソコンを閉じた。




………あれッ⁇さっきまであれだけ自分の数字が伸びないって悩んでいてそれしか考えられなかったのに、今もうこの人を見てすっかり忘れちゃってたな……なんでだろ………?










「あー……」



もう潮時かな…?8年もこの活動を続けて努力して辿たどりついた結果がここ……



「よしッ!」


私は一度閉じたパソコンをまた開いてキーボードをカタカタと心地よく鳴らして打ち、最後にマウスを動かしてクリックすると勢いよく席から立ち上がった。





【飴玉転音からの大切なお知らせ】

突然のお知らせとなってしまい申し訳ありません。私もこのようなお知らせはもっと早くするべきだったとは思いますが、今、させていただきます。私、飴玉転音はちょうど1ヶ月後の今日(20XX.XX.XX)に行う配信をもって、この活動を引退させていただきたいと……

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

飴玉は口の中で転がって甘く溶けて 雨宮踏葉 @Amamiya_Touha

★で称える

この小説が面白かったら★をつけてください。おすすめレビューも書けます。

カクヨムを、もっと楽しもう

この小説のおすすめレビューを見る

この小説のタグ