番外編2:とある記者とチョコバー
私はスポーツ誌の記者だ。
本来、バスケットボールを志望したのに人手不足ということでプロレスに来てしまった。
何でと初めは思っていたが、最近プロレスの面白さが分かってきた。たまに女子プロレスを見るが、男とは違うカッコよさがある。
たが、SNSで叩かれるのは勘弁して欲しい。
こちらも締め切りギリギリにコメントが来たり、編集がいない時がある。今日もエナドリを飲みながらを頭を抱えてるのだ。
「なに、昔よりかはマシになったと思うぜ」
と、編集長は言うがそんなものだろうか?
そう思っていると、社内電話がかかってきた。
誰だ?こんな番号は知らない。
今、誹謗中傷対応のためホームページに電話番号は乗せてないのに。私は、おそるおそる電話を取る。
「はい」
「……本波だけど」
「は!?」
カタストロフ本波!?
あの、ロートルのおっさんがいったい何の用だ?
まさか、これがクレーマーって奴か!?
「あのさ」
「は、はい……」
喉を鳴らして、おそるおそる誹謗中傷の対応をする。
「字、間違えてんだけど」
「は?」
「今月号の123ページの俺の名前。本じゃなくて元気の元になってるぞ」
「あ……はい!」
「あとなぁ、36ページの大手団体のチャンピオンの必殺技の名前も違うぞ。どうなってんだ!」
その後、誤字脱字をとことん言われた……なぜ私が説教されなきゃならんのだ。
「アンタのところの記事は腹立つ時もあるが、イイもんだ。だから、編集長にしっかりしろと言っといてくれ!」
「は、はい」
電話は切られた。
な、何なんだあのおっさん?
「モトさんが、電話か……」
編集長が顔を青ざめている。
「あの人、昔テキトーな記事書いたら編集部に殴り込んで来たからなぁ。飛ばし記事クラッシャーとか言われてなぁ。後、プロレス馬鹿にした他の格闘技の道場破りとか他団体の殴り込み……あぁ、浮気したからって自分のところの社長を血塗れにするまで殴り飛ばしたり、奥さんと浮気相手にも元芸能人知らんがだかいい気になってんじゃねぇぞって、二人が号泣してしばらく口が聞けなくなるくらいに説教してたな」
なんて人だ。
今ならパワハラで訴訟ものだろうなと思う。
「まぁ、めんどくさい人だから挑発みたいな事はするなよ。余計に絡みに来そうだ」
そうかと思いながらしかし、そんなひどいものだろうか?
「ちなみに、俺の机の傷」
編集長の古い鉄の固い机が、ひび割れている。
「これ、モトさんが素手で叩いてヒビを入れたやつだからな」
思わず背筋が凍る。
「同業者以外には手を出さねぇと言ってるが……ホントに気をつけろよ」
うなづいて、デスクに戻る。
だが、怖さと同時に興味が湧いてきた。
私はチョコバーをかじりながら彼のデータを追い始めた。
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