番外編:土用の丑の日のうなぎとコブラツイスト
コブラツイスト。
体にその名の通り、蛇のように絡みつきアバラを締め付ける技。
毒蛇のように猛毒が体に回り、痛みが襲いかかる。
「ハァァァッ!!」
くっ!痛みが、痛みが右の脇腹に来る!
俺は、力を込めて外そうとするが相手の体がどこかで邪魔をして抜け出せない。
くそッ!じわじわと体力を奪われる!
どうすればいい!?
……待てよ、俺もまた蛇になればいいのか?
こう、体を柔らかくして骨の無いようにすれば抜けられるのでは?
やってみるか!
首を振り、背中の力を抜く。さらに、腰の力も抜いていく。
おっ、相手がびっくりした顔をしてやがる!
これなら抜けられるかもしれないな。
後は、脚の力を抜いて
……って、アレ?何か、視界が揺れているな。
って、倒れてないか?
そう思った途端、俺はマットに伏せらせ、脚を取られる。
「ワン!ツー!」
し、しまった……また。
「スリー!!」
丸め込まれた。
ゴングの鳴る音と歓声の沸き立つ中、俺は内心うめいた。
□◆□
「やられた……」
そうだった。コブラツイストにはグランドコブラといって、そのまま倒れ込み丸め込まれ、フォールを取られる技がある。
何かに集中すると他の技の事を考えられなくなるのは、俺の悪い癖だ。
その分、一つの技を極めるのは出来るかもしれないが……だから俺は時流に置いてかれたのかもしれない。
だがそれを言っても仕方ないか。
俺は俺の出来る事をして、増やしていけばいい事だ。
さ、飯にしよう。
今日は、土用の丑の日。
ウナギを食うのがいいというのは、昔の何か電気治療とか薬の博覧会とかに色んなのに手をつけた人が考えたそうだ。
色んな事を出来るとは、不器用な俺には少し羨ましい。
確か名前は……忘れちまったな。肝心の名前を忘れるとはこりゃ、いけねぇや。
ガキの頃ならおぼえてたかもしれないが……ま、いいや。気が向いた時にでも勉強すっか。最近学び直しって流行らしいから乗っておくのもアリかもな。役に立つかは分からんが、バイトや派遣の際に給料アップするとか聞いたし、何か資格でもとってみるかね。
今日はスーパーでパック入りのウナギを買った。
アメリカに行ったVtuberの姉ちゃんがバイトしてた注文アプリのところに、うな丼屋がたまたま無かったからうな重をかき込むのも今じゃ出来ない。
だが、自分のやり方次第では美味くできるもんだ。
とりあえず、鰻をレンジに入れて温める。
ご飯は……あるな。丼に入れて少しタレをかけてみるか。
後は、キュウリの漬け物があったからこれを小皿に寄せて……っと。
すると、レンジのいい音が鳴った。
開けると、いい音とともにうまそうな香りが漂ってくる。
それを丁寧に箸でつかみ、丼の白米の上にのせる。
湯気とともに、米のいい匂いが漂ってきた。
さて、食べるとするかね。
俺は卓に丼や皿を乗せて座った。
座って手を合わせる。
「いただきます」
□◆□
あぁ、かみ応えがたまらん。そしてタレがきいてて美味い。
これは、ご飯がすすむな。思いっきりかきこもう。
白米とウナギを一緒にかき込み、ゆっくりと味わう。
あぁ……今日のコブラツイストを思い出す。
ウナギの味が来た後の白米のあっさりとした二段構え。
これは、たまらん。
おお、そうだ。漬け物も食べよう。
……いいな。あっさりとしてて、うな丼の濃さに間をつけてくれる。
そして、またうな丼に取り組む。
うん。ウナギが無くなっても、タレで米が美味いな。
ゆっくりと噛みしめて食べよう。
「ごちそうさまでした」
□◆□
姉ちゃんが自分で作ったという歌を鼻歌で歌いながら丼を洗う。
昔と違ってぜいたくはできなくなったが、やり方次第では美味くできるもんだ。
人に寄ってはみみっちいというかもしれないが……ま、言いたい奴には言わせておこう。
しかし、昔食った鰻重八段重。また食いたいなぁ
……いっその事、自分で作ってしまおうか?
師匠は飯をうまそうに食う奴は料理の腕もあると言ってたしな。
またギャラがたまって一年に一回の贅沢って事でやってもいいかもしれない。
そういえば、師匠は
「ウナギは冬が一番うめぇんだよ」
と、言ってたが本当だろうか?俺にはいつ食っても美味いものは美味いのだがなぁ。
まぁ、いいや。
これくらいなら
変な商売持ちかけられるよりかはマシだ。
さてと、明日は久々にナカが開いてるレスリング道場にでも行こうか。
……まさか、各団体のメンバーがこっそり練習しあってるとはなぁ。
昔読んだ漫画の秘密道場のようだが……俺、ついていけるかな?
いや、いらん不安をしてもキリが無い、風呂でも入って寝よう。
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