やぁ、みなさんこんにちは!


私は、ついさっきそこの幼稚園児の男の子に作られた雪だるまである。

なぜ雪だるまが意思を持っているかって?

それは、みんなご存知の転生さ。私の生前の名前は、白川愛弥、享年25歳だ。末期のガンで長い闘病の生活を経て、どうやら死んだみたいだ。いやー、雪だるまに転生とは、

これが本当の放置プレイっていうやつか!

という冗談はさておき、私こと雪だるまがどのようにできたか、振り返ろう。


        ◇

〜10分前〜

ん?なにか子供の声が聞こえてくる。

「んしょ、あとは目のとこにこれをつけて」

「パパー、ママー、雪だるまができたよ!」と喜んではしゃいでいる。

「おー、なかなかうまく出来たじゃないか」

「あらー可愛く出来たわね」と若夫婦と幼稚園児ぐらいの男の子の家族が私を見ている。


えっ、なんだって!さっき雪だるまって言わなかったか?

たしかに尋常じゃないくらい体が冷たいけど、まさかそんなわけないよな。神様よ!

自分の目で確かめようと、お腹の辺りを見ると鼻ににんじん、白い氷のお腹が見える。左腕の方を見ると、ハエ叩きが突き刺さっている、右腕の方を見ると、ほうきが突き刺さっている。

うん。そうだね、見るからに雪だるまだね。

うああー!なんでぇー!!シクシク泣いていると、父親が「もう寒くなってきたから家の中に入るか」と言うと男の子と母親も家の中へと入っていった。


        ◇

このようなことが起こり今に至るわけだ。


私がいるこの場所は、住宅街にある一軒家の玄関のすぐ横で作られた。家の前は急な坂道で、道路が凍っているようだ。

今、スタッドレスタイヤを装着している車が坂道を登ろうとしている。半分くらい登って行ったけど、ツルッとタイヤが滑ったみたいで、コントロールを失って、バックのままこっちの方に滑り落ちてきた。

うあぁー!ヤバい、ヤバいと、私に車が突っ込んで来た。ドスンと音がなった瞬間、意識が薄れていった。2度目の死を確信した。

もし生まれ変わったら、今度こそいい人生をおくりたいと神に祈った雪だるまなのでした。


めでたしめでたし


と思いきや、「よし、その願い叶えてやろう」となにやら神様っぽい声が聞こえたような‥


しばらく真っ暗なところを漂っていたら急に強い光が目の前に現れた。


目を開けると見知らぬ森にいた。目で見える範囲を見回しても木しかない。

「えー、ここはどこなんだーー!」と思っていたら声として出ているようで森の中に聞き慣れない俺の声が響き渡る。

あれ、話せるようになっている!やったー!と喜んだ束の間、いったいこれからどうしようと悩んでいると、なにやら目の前画面が出てきた。


プロフィール

雪だるま

HP1000

[機能]

頭にあるバケツ

→飲み水がいくらでも湧き出る。

鼻(にんじん)

→にんじんミサイル、いくらでもおいしいにんじんが飛び出る。にんじんが好きな動物に目掛けて打つと懐かれる。

右手(ほうき)

→ほうきで、目の前を掃除できる。

左手(ハエ叩き)

→伸縮自在、唯一の攻撃アイテム。

目(ビー玉)

→よくみえる。

「なんじゃこりゃー!使えねぇ機能ばっかりじゃん」と思わず叫んでしまった。

どうやら転生ものでよくある異世界に来てしまったようだ。雪だるまの姿で異世界とか無理ゲーすぎる!


何か他に使えそうな機能は無いかと調べたら、ページの一番下に追加機能という項目がある。

《動けるようになる》5ポイント消費

→足が追加

→車輪追加


ポイントってなんだ?画面で調べると、どうやら自分のレベルに応じて追加機能と引き換えできるポイントのようだ。

今はレベル???、ポイント500と表示されている。レベルがいまいちわからないが、ポイントが500あるなら使ってしまおう。


うーん。雪だるまに足ついていたら変だし、車輪追加にしよう。

すると足元が光った。

下を覗いても車輪が見えないから足元に内蔵されているようだ。


やったー、これで動けるようになったー。

動けるのはやっぱりいいなと辺りをぐるぐる回っていると、〈ピコーンピコーン〉となんやら頭の中で音が鳴り始めた。

なんだろう?と思っていたら目の前に画面が表示された。


【警告】

まもなく表面上の氷が溶け始めます。

表面上の氷が溶け始めると、HPがだんだんと減り続けます。

マイナス10℃以下の場所に10分間滞在してください。全ての氷が溶けると生命機能が停止します。氷が全て溶けるまで1週間の猶予があります。


自分のプロフィールを見て見ると、本当だHPがだんだんと減ってるヤバい!こんな森に冷蔵庫なんかあるわけないじゃないか!ここから移動して、どこか街にいかないと!と雪だるまは、道を探して動き始めたら立て看板を見つけた。


えっと、これ何語?うーん、読めないな。矢印が左に向いているから、とにかくそっちにいこうと道を歩み始めた雪だるま。


さぁ、これから雪だるまの冒険が始まる!

その冒険譚はまた別のお話である。


終わり

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

読み切り〜季節の移ろい〜 もっちゃん(元貴) @moChaN315

★で称える

この小説が面白かったら★をつけてください。おすすめレビューも書けます。

カクヨムを、もっと楽しもう

この小説のおすすめレビューを見る

この小説のタグ