シーン3 ダンゴムシVSメインヒロイン

「さぁ、手塚くん。今日こそ私たちと一緒にお昼を食べましょう」


 高嶺は胸に手をやり、まるで幼子を諭すような口調で公人に話しかける。


「……何度誘いを受けようと、僕の返答は変わらないぞ。Noだ。断固拒否する」


「どうしてそんなに拒むのかしら。こんな埃っぽいところでご飯を食べていたら、焼きそばパンだって美味しく感じないでしょうに」


「あいにくこちとら埃が大好物なんだよ。とにかく、放っておいてくれ」


「またそんな意地悪を言って私を困らせるのね」


 高嶺は、今度は眉を下げ、幼子のようにしゅんとした。大きな瞳に潤みが帯びていくのが、公人からもよく見える。


 さすがに罪悪感に耐えきれなくなったのか、公人はややあってから口を開いた。


「……逆に聞くが、なんであんたは僕みたいなダンゴムシにそこまでこだわるんだ」


 当然の疑問。


 ここ数日、高嶺に幾度となく繰り返した問だ。答えは今日もきっと一緒。そんなことはわかりきっているが、公人は尋ねざるを得なかった。


 高嶺は潤んだ瞳のまま、心底不思議そうに首を傾げ、言った。


「そんなの、決まっているじゃない。あなたがこの物語の『主人公』だからよ」


「……相変わらず、何を言っているのか、ワケがわからん」

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