第6話:優等生の苦悩

 その一方で、部活の方は新入部員が3人入った。新入部員への指導を葉月と2年生に任せ、篝は部活宛の学校祭の出し物の案内を見ながら、顧問の先生と職員室にて相談していた。


「学校祭でやるのは例年通りの方向ではありますが、テスト前最後の部活なので、早いうちに計画書は作っておきました。細かい役割はテスト終わってからでも決められますし。」


「確かにそうね。秋川さん仕事が早いねー、昨日貰ったばかりなのに。」


篝は苦笑いを浮かべながら、顧問の先生と一緒に部室へ戻っていった。部長になりたての頃は葉月に助けてもらってばかりだったものの、後ろを向かずに葉月や後輩達に向き合えたことが、成長の証だ。


 その後の定期テストも、葉月は総合トップを取った。慌ただしく学校祭が終わると、葉月はため息をついていた。


「葉月、どうかしたの?」


「それがねー…。『市外の難関校も視野に考えてみたら? 篝ちゃんに合わせたいのは分かるけど、あんたの学力で地元の高校行くのはもったいないよ』って、昨日お母さんに言われたんだ。」


そんな時、不意に顧問の先生が訪ねてきた。


「2人とも、まだいたのね。」


「それがーかくかくしかじかで――」


篝が事情を説明し、先生は人生の先輩の1人としてこうアドバイスをする。


「先生にも、葉月さんのような頭のいい友達がいた。でも、私のために両親を説得して、一緒の高校に行くことを選んだの。人生は、親御さんが決めることじゃない。自分が決めること。別々な道を選んだら、お互い後悔すると思う。入部してから貴方達を見てきて、そう思ったの。」


先生からのアドバイスは、葉月だけでなく篝にも響いた。翌週の学力テストが終わり、篝も同席の上で葉月は両親を説得した。


☆☆☆


 今年の夏休みは、葉月の誕生日の前の日で終幕。それでも、篝は日付変わるのと同時にお祝いメッセージを送った。その後の花火大会も3年連続で見に行き、手を繋ぎながら一緒の高校に行こうと願っていた。


 前期期末テストが終わり、部長と副部長を後輩達に託し揃って引退。それから暫くたち、三者面談がやってきた。葉月は母親の前で担任の先生に対し、


「後悔はしたくありません。学力だけが全てではありません、〇〇高校一択です。」


そうはっきりと言った。かつて両親に説得した時も『学力だけが全てではない』と言い放ったのだ。一方の篝は、


「〇〇高校に進学して更に自分のレベルを上げたいです。」


と、更なる目標を掲げていた。隣にいた輪は、姪の篝の成長をひしひしと感じていた。葉月との出会いでひと回り大きくなったのだろう。


 強い意志をもった2人は、一緒の高校に揃って合格した。合格発表後、篝は笑顔で両親に報告した。そして、中学校の卒業式。


「高校でも、よろしくお願いします。」


輪と葉月の両親が挨拶を交わしていた。


「これからも、よろしくね!」


篝と葉月も、改めて挨拶を交わすのだった。


――――――


※ストーリー編成の都合上、第6話は今までより短い内容となっております。

 穴埋めになるか分かりませんが、次回予告を軽めにさせていただきます。


[次回第7話、高校生編スタート! 少しばかり予告]


 高校に入学し、高校でも茶道部への入部を考えていた篝と葉月の前に新たな仲間出現! その女の子はおっちょこちょいで、ちょっとドタバタの幕開けと、なりそうです…。


 それでも、篝と葉月は彼女を温かく迎え入れ、少しずつ親睦を深めていきます。

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