第8話 それは初めての冒険の始まりか
そんなこんなで俺はレベルを上げるために村から離れた森の中にやって来た。
ちなみに父さんと母さんは仕事があるので付いて来ていない。その代わり母さんの使役獣である『放浪の狼ニケ』が危ない時の護衛兼道案内役である。
放浪の狼は様々な狼種の中で稀に現れる特殊個体であり、群れに所属せず1匹だけで行動する謎が多い個体でもある。そのため放浪の狼と1口に言っても個体によって強さや種族なども違ってくる。
放浪の狼のゲーム時代の特徴としては必ず一匹で現れ、何処のエリアにも低確率で出現し個体によって能力にかなりの差が存在する特殊な魔物であった。
ニケは魔力と親和性が高い『灰魔狼種』で感知能力や魔力による身体強化で能力を向上させるので明確な欠点がない種族である。母さんが冒険者時代に弱っているところを助けたら、懐かれたそうで契約したらしい。引退後は俺たちの家で一緒に過ごしている。ニケは6級レベルの魔物までなら問題なく倒せるので、ここら辺の弱い魔物は全てワンパンである。
そんなニケを連れて森の中を歩いていた。この森の中には1年前に父さんとニケが一緒に来た際にニケが魔力を感知し、その場所へ行ってみると初級ダンジョン──通称緑のダンジョンがあったそうだ。
緑のダンジョン推奨レベルは1~15でゲーム時代はチュートリアル用に使われていたダンジョンである。
緑のダンジョンは魔物が外に出てくることも無く、逆に溢れ出る魔力が土地を豊かにするため、父さんも特に攻略したりはせずそのまま残り続けていたようだ。
そんなわけで道中俺でも倒せる魔物をニケに探してもらいつつダンジョンへ向かっていた。
「ガウッ」
「お!見つけたかニケ」
どうやらニケが魔物を見つけたようだ。ニケに付いて行くとそこにいたのは子供程の身長をした薄緑色の人型の魔物がいた。
「ギギッ」
「まぁ、ゴブリンだよな」
そこにいたのは出でてくる作品によって、最弱にも最強にもなる魔物ゴブリンである。
「ギャ!」
「よいっしょ」
恐らく何も考えていないのだろう、ただ真っ直ぐに突進をしてくるので横に避け、止まった所を後ろから蹴り飛ばす。身体強化された足で蹴り飛ばされたゴブリンを追いかけ、そのまま剣を突き刺す。
「グェェエエ!」
「レベルupは流石にないか。よし、ニケ周囲を警戒しておいてくれ」
「ガウッ!」
無事に倒すことが出来たので短剣を引き抜きゴブリンの体を切り開く。魔物には全て魔石が体の中に存在し、これは魔道具や魔術礼装等に用いられるため、倒したら回収し俺が冒険者になった時換金し武器等の資金源にするつもりだ。
最初は俺も解体するのに躊躇していだが意外と慣れるものだった。
「しかし、身体強化は魔力の燃費が悪いな今の一瞬だけで13ある内の3も魔力を使ったのか」
身体強化は魔力を扱える人間なら誰でも使うことができるが、その代わりに魔力の燃費と長時間使用すると全身が筋肉痛になり丸1日動けなくなる。
今の俺は魔力が少ないがそれでもかなりの消費量だ。常に実践で使うには魔力量を上げるしかないが、魔力だけを上げるわけにはいかないので使い方をどうにか工夫するしかない。
「見つけた」
ゴブリンから出てきたの薄い緑色の光を放つ小さな石ころであった。この世界の魔力には色があり、内包する魔力量によって色が変化する。
順番は緑、青、赤、紫、銀、金、黒の6種類でこの色の中で、色が薄かったり濃かったりもする。これはダンジョンの階級を表すのにも使われている。
「ニケ終わったから行こうか」
「ガウ」
魔石を取ったのでダンジョンに向かってまた歩いて行く。
それからもう一度ゴブリンを見つけてそれを倒し、10分程歩いて行くとだんだん魔力の密度が上がり、視界に可視化された緑の魔力が見えるようになってきた。
「ガウッ!」
「よくやったニケ、ありがとう」
この世界で生まれ変わってから初めて見るダンジョン。ダンジョンの先に続く道からは高密度の魔力が溢れ人が見えるレベルにまでなっている。
「すごいな」
少しアホっぽい感想だが、思わずそんなこと言葉が出てしまうほどにどこか圧倒されるような何かがあった。
「ガウ!」
「別にビビっている訳じゃないからな? それじゃあ行くかニケ」
圧倒されようがそれは最初だけ、この世界最初のダンジョンで俺はどこまで強くなることができるかワクワクしながら、ニケと共に緑のダンジョン第1層に足を踏み入れるのだった。
ダンジョンオブアルカディア ~ゲーム世界のモブに転生したので物語を気にせずレベルを上げる~ 小森 @neaem
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