第二章 始まりの狂気と狂う歯車編
第7話 深淵を目指せし冒険者
『アルカディア』それはゲーム、ダンジョンオブアルカディアのクリア後に行くことが可能になるルートに存在する最後のダンジョンであり、このゲームにおいての謎が隠されているとされていた。
アルカディアは一般的に呼ばれている名称では無い。アルカディアはダンジョンの最奥に存在している部屋であり、基本的にはその地に存在している大穴の名称で呼ばれている。
それは大陸中央に存在する大穴、通称『深淵』いつから存在しているか不明であり、入ったものが帰ってきたことはなく、故に謎が謎を呼びいつしかこの世全ての財宝があるだとか、この世界の秘密が隠されているとか色々な噂が存在している。
ゲーム時代、俺は部屋の扉まで行くことは出来たがそこからの流れは知っての通りだ。だから俺はこの世界で前世見れなかった先を見たい。
そのためにはレベルを上げる必要がある。それも尋常じゃないほどの、ゲーム時代に俺が挑んだ時のレベルは200を少し超えたぐらいだったはず。
つまり今の俺の肉体を考えると、その倍のレベル400でようやく最低条件だろう。安全を考えるならレベル500は欲しいところだ。
それにこれはレベルだけに限った話で、他にもスキルや魔術、武器など必要なものを考えたらキリが無い。これが主人公なら物語の中で手に入るものもあるが、俺は自力でどうにかするしかない。
やはり考れば考える程、その難易度の高さに辟易する。だがやると自分で決めたのだから、逆にやることが多すぎて楽しみだと思うことにしよう。
とりあえずレベルを上げなければ始まらないのでレベル上げを頑張ろう。
そんなことを考えた翌日。
「僕冒険者になるよ」
そんなことを家族に言ってみた。
「あーそうか、うーん」
「本気なのナル?」
「本当に?」
家族の反応は様々で父さんは何か悩んでいる様子で、兄さんと母さんは本気なのか聞いてくる。
「うん。僕は深淵に行きたいんだ」
「なっ、何を言っているんだ?」
父さんと母さんは信じられないというい目で、兄さんはよく分かっていない顔をしている。
「深淵てあれかい? 物語に出来ててくる、行くことが出来たら何でも願いが叶うという」
「うーん。厳密には違うんだけどそんな感じかな」
家に数は少ないが存在している本にそんな話のやつがあったことを思い出す。
「ダメよ、そんなバカなこと許すわけないでしょう」
母さんの反応は当然だろう。深淵の存在を知っている人からすると死に行くようなものだ。そこに行きたいという息子を止めるのは当たり前だろう。
「ナル、昔お前に俺の話を聞かせてやったの覚えてるか?」
「もちろん。覚えているよ」
「お前はそれでも冒険者になるのか? 俺のように現実を知り諦めることになるかもしれないんだぞ、もしくは死ぬかもしれない。しかもお前が目指しているのは誰も生きて帰ってきたことがない深淵だ。なんのために行きたいのかは分からないがそれを理解した上で冒険者になりたいというのか?」
「うん。僕はそれでも冒険者になって深淵......アルカディアに行きたいんだ。それに父さんが言ったんじゃないか僕は父さんじゃないって。だから僕は自分で考えて生き方を決めたんだ」
「......そうか、確かにそうだな」
「あなた!」
僕が話すと父さんどこか納得した様子で少し黙り込んだ。そんな父さんの様子をマズいと思ったのか、母さんは父さんを呼ぶ。
「カナミ、ナルは多分俺たちの意思だけでは止まらないと思うぞ。昔の俺がそうだったからな。だが条件は付けるぞナル」
まぁそれはそうだろう、これは完全に俺の我儘なんだから条件ぐらいはあるだろう。
「わかりました」
「条件その1は後と2年はこの村にいろ、成人になるまでは一緒に過ごせ。その間に俺が知っている全てを教えよう。その2は冒険者で特級にならない限り深淵には行くな、これが条件だ」
それは条件と言えるのだろうか?どっちにしろ暫くはレベルを上げないと行けないので、村の周辺でレベル上げをするつもりだったし、特級冒険者レベルにならなければどっちにしろ深淵に行った所で無駄死にするだけだ。
「それでいいなら、大丈夫です」
「そうか、特級になることが条件なんて普通の奴が聞いたら無理難題というだがな。カナミもこれで許してやってくれないか?」
「もう、あなたはいつも自分だけで決めてちゃうのね。──はぁいいわ、ただし魔術の練習はより厳しくしますからね」
「分かったよ。ありがとう母さん」
「僕が出来ることは何もないけど頑張りなよ、ナル」
「うん。兄さん」
そうして無事話し合いは終わり、僕は冒険者になることを許された。
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