106.リザードマン達の独立
城塞都市『青の都』。
ガルカト王国の国境付近のリザードマンが多く住まう街だ。いや、正確にはガルカト王国だった。
青の都は、つい先日独立宣言をした。ガルカト王国に対して反旗を翻したのだ。
そもそも、リザードマンは元々湿地帯や沼地を好むなど生活様式や文化や習慣がガルカト王国とは合わない。気位が高い事で知られたリザードマンの中にはガルカト王国に属する事に対して不満を持つ『反ガルカト派』が少なくなかった。ここ数ヶ月、ガルカト王国の『王選び』が始まった事を機に、『反ガルカト派』が暴走し今回の蜂起に至ったのだ。
他国にはリザードマンの国__魚人国が存在する。同じリザードマンとして、青の都は魚人国に独立の協力を仰ぐ。だが、今は魚人国はガルカト王国のヴァンドレイル領と大戦をしているので兵を割けられない。
城塞都市青の都の城主は、疲労と絶望が入り混じった表情で司令室を巡り歩いていた。顔中に汗がびっしりと出て、袖で拭う。その様子を数人の重鎮達が暗い面持ちで眺めていた。
魚人国と連携がとれない。その間に、金獅子の団が青の都を鎮圧しにくるという通達があった。
――無敵の騎士団金獅子の団。
ルーデルで彼らの存在を知らない者はいない。攻められれば青の都はひとたまりもない。城主は妻や子供達、城塞都市の全ての民達の顔が頭に浮かび、胸が締め付けられるような感覚に襲われた。
――我々はリザードマンの誇りを守るために独立した。だが、この選択は間違いだったのか?
城主は葛藤に悩まされつつ、ある人物を待っていた。
「......の、ご到着!」
兵士の掛け声と共に、司令室に小さな歓声があがる。
影に紛れて、『ある人物』が到着する。彼は後ろに部下を数人従えて司令室訪れた。
彼の出現はリザードマン達にとってまさに天の助けだった。城主の心に一筋の希望の光が差し込んだ。
「お待ちしておりました! 此度の戦に協力してくださるとのこと、青の都の全ての民に代わって誠に感謝します」
「気にするな。敵が共通だっただケの事。今後も帰国との友好を大切にしたいと考えていル」
その言葉に城主の心は喜びに満たされた。しかし、次の瞬間、喜びは疑念に変わった。
「しかし、恐縮ですが、一つお伺いしてもよろしいでしょうか?」
男は頷いた。
「貴国も現状、オークとの領土争いに注力しているはずです。そのような状況下で我々を支援して下さる理由をお聞かせ願えますでしょうか?」
「それは貴殿も薄々察しているのではないカ?」
「......『選ばれし王』の出現、ですか」
城主の言葉に男は首を縦に傾けた。
「平民として育ち、ならず者の集団をルーデル一の騎士団金獅子の団に成長させ、妖精や自然そのものを味方につける奇跡の男__レオナルド......。『反ガルカト派』が剣をとった理由がまさにそれです。『選ばれし王』はかつてダークルフという種を丸ごと滅ぼした力を持つ存在。もし、レオナルドが本当に次の『選ばれし王』になってしまったが最後、多くの種族は人間に永久に支配される事になる。それはガルカト内部であっても同じ事」
「......」
「......動機はわかりました。が、貴方方を疑う訳ではございませんが、本当に我々を支援する余裕などあるのですか?」
「......ああ。たしか二、我々は兵力をそれほどこちらには割ける余裕はない。よって奇策を打とうと考えている」
「......というと?」
男の口元がゆっくりと歪む。
それを目にした瞬間、城主の背筋に冷たいものが走った。
「――生贄をささげル。お前達の街を、な」
司令室の空気が一変した。
――ザッ
男の部下達が瞬く間に剣を抜き、司令室にいたリザードマン達を一斉に斬った。司令室が一面血の海に染まる。混乱が起きる間もなく、城主をはじめとするリザードマン達の息の根は止まった。
男は冷笑を浮かべて、部下達に命令した。
「リザードマン兵を
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