60.招かれないダンスパーティー(1)
「――――それで、リオは『王子かもしれないけどとりあえず保留枠』になった訳? 貴族ってつくづく面倒くさい連中だよねえ」
金獅子の団英傑の一人__ドワーフのヴィクターは言った。
「まさかあのリオが王子だったとはな! ガハハハ!」
続けて、ケンタウロスのベンがいつものガハハ笑いをする。ちなみに、彼はお気に入りのゲイリーが昨晩捕まって意気消沈していた訳だが、一晩寝たらまたいつもの調子に戻った。
今、リオやルーナ達は上級街にいた。
行賞の儀が終わった後、夕暮れ時。
貴族達が住まう上級街は、金や白い大理石で飾り立てられた高級な邸宅が立ち並んでいた。今は、行賞の儀にいたリオや副長ヘイグ、ルーナに加えて、ヴィクターやベン、後は数人の金獅子の団の傭兵達が、上級街の一角に集まっていた。
行賞の儀の後の夜、貴族達のダンスパーティーが開催されるのだが、急遽金獅子の団がその警護を任される事となった。そこで、リオが手近に今夜予定のないメンバーに声をかけて集まったのが彼らだった。
彼らは、まるで飲みにでも誘うのかというくらい軽い調子で大任を任され、しかもとびっきりの大ニュースを聞かされることとなる。
――――リオは、本当は王子様だった。
この話は結局、結論が微妙なまま終わってしまった。痴呆症の王がいきなりリオを王子だと主張したところで周りの貴族達は納得いかなかったのだ。また審議の機会を設けると言われたが、果たしてどこまで本気かはわからない。当然、世間にもこの事は公表しない、とされた。
「どうでも良いけど、あんたらはすんなり信じんの?」
意外にあっさりと、リオの出自を認めている傭兵達を、ルーナが訝しく思う。
「信じるもなにも、王様ちゃんが認めてるんでしょ? それに、昔からリオはどこか他の奴らとは違うなあって思ってたし。だからまあ、むしろ、リオが王子だって言われてなんか納得しちゃったよ」
「......そ」
ルーナはうつむいた。彼らの反応は、初めてリオに会った時のルーナとまるで同じだった。
「てか、なんで、ちゃんルナはこの事ずっと黙ってたん?」
「だって、兄貴が言っちゃダメっていうから」
「ガハハハ! 水臭いぞ、リオ! 俺たちだって、お前が王子だって言われたら普通に信じてた!」
突然、ヘイグが鬼の形相で怒鳴った。
「おい、お前達! さっきから聞いていれば、その物言い......レオナルド殿下に対して無礼だぞ!」
皆驚いて彼に目を向けた。
「もうレオナルド殿下は私達一般人とは一線を画したご身分なのだ! 言葉遣いを直せ!」
「ブフッ――――」
意外にも、変な音を立てて吹き出したのは、リオだった。
「......っ、れ、レオナルド殿下って......っ」
リオは込み上げてくる笑いをなんとか抑える。
「これからも普段通りで良いよ。俺の出自がどうであろうとこれまでとやる事は変わらない。俺たちはまた戦い続けるだけさ」
「ガハハハ! ま、お前ならそういうよな!」
「これからもよろしく頼むぜ、レオナルド殿下」
ヴィクターが言うと、今度は全員が吹いた。
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