確認
「死んだかどうか、確認しろ」
依頼人は相変わらず偉そうな態度で、飛を指して二人に命令した。
――これくらいで死ぬはずが無い。人間てなかなか死なないものだからな…
と思いながら慶喜達二人は、ノロノロと立ち上がると飛に近付いた。
「さっさとやれ!」という依頼人からの怒声が飛んで来る。
慶喜は飛に息があるかどうかを、顔を近付けて確認した。
英二も胸の辺りに耳を押し付け、心臓の様子を窺っている。
微かだが、息があった。心臓も動いているだろう。
やはり、まだ生きている。
しかし、慶喜達はもうこの作業を終わりにしたかった。
「死んでます。」
慶喜は顔を上げると、依頼人にそう言った。
依頼人は「ああ?本当だろうな?」と念を押してくる。
今更嘘とも言い難い。やっぱり生きていた、などと言えば「何で嘘をついた」と言って殴る蹴るぐらいはするだろう。
依頼人はズカズカやってきて、飛の脈をとった。
「生きてんじゃねえか!」
依頼人は鬼の形相で、慶喜らをぶん殴り蹴り倒した。
「だったら最初から、
英二は常に持ち歩いているのか、釘抜きで依頼人の頭をぶん殴っていた。
まさか反撃に遭うとは予想だにしていなかったらしい依頼人は、その場で尻もちをつき、呆然とした顔で見上げている。
英二は依頼人に躊躇い無く覆い被さり、釘抜きで殴り始めた。何度も、何度も…
余程腹が立っていたらしく、我を忘れている様に見える。
依頼人を助けようとする者は、誰もいなかった。
依頼人は、飛香と珈琲ひっかけた云々で揉めるあたり、それなりに親しい間柄だったはずで、つまり裏社会でも結構な立場を築いていた風に見える。
なのに、舎弟の一人も連れて来ていないのが不自然だった。
昭三郎側が、そう指定したのだろうか。それを聞く程、この依頼人は昭三郎を信頼しているのかと思ったのだが、単に軽率なだけかもしれない。
慶喜もまた、依頼人に腹を立てていたので、英二を止めようとしなかった。
昭三郎もまた、何の感情も読み取れない目でこの事態を眺めている。
英二はたまに殴る手を止め、依頼人の様子を窺っている様だった。
そしてピクリとでも動くと、再び殴り始める。
どうやら、もう動かなくなるまで…気絶するまで殴り続けるつもりらしい。
殺しても構わないと思っていそうだが、英二の力で殴るだけでは、命までは絶てないだろう。
依頼人が動かなくなったのか、英二は動きを止めてノロノロと立ち上がり、横たわる依頼人から離れた。
依頼人の顔は赤黒く、顔のパーツが不明瞭だった。生きてはいるのだろうが、何らかの障害を抱える事になるだろう。
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