四等分のゾンビ達
「うおあああああああ」
と雄叫びをあげながら振り下ろされたキエヌィギョ=マカル・ドゥナエフ=チーフケエポリの剣は、もはや年齢・性別不詳であるゾンビの胴体を、横真っ二つに切り分けた。
キエヌィギョ=マカル・ドゥナエフ=チーフケエポリは、間を空けずに次々とゾンビ達に剣を振り下ろしていく。
ゾンビ達は、胴を真っ二つにされる者もいれば、頭のてっぺんから縦に切られる者もいた。
――さすが巨漢のファイター…!
キエヌィギョ=マカル・ドゥナエフ=チーフケエポリは、先ほど子供の様に怯えていた事が嘘のような勇ましさであった。
まるで、ハリウッド映画のヒーローの様である。
真っ二つにされたゾンビの胴体、その上下はその後もうねうねと蠢いていた。蠢きながら移動し、あっという間に両者はくっつき、何事も無かったかのように立ち上がった。
他の真っ二つにされた者達も、同じように蠢きあっという間に元通りになっている。
慶喜達三人は、その光景にあっけにとられた。
頭の中で、あの音楽が鳴っていた。あの至高のCDではなく…
ダダンダダンダダンダン…ダダンダダンダダンダン…
――こいつら、ターミネーターかよ…未来から来て俺達を殺しに来たのか?!
襲い掛かろうと身構えるゾンビを前に、慶喜は叫んだ。
「キエヌィ…えーと、キエヌィ!もう一度、こいつらを真っ二つにしろ!そしてこいつらが元通りになる前に、逃げ切るんだ!」
既に元通りになったゾンビ達が、涎を垂らしながらこちらに向かって飛び掛かろうとしている。
キエヌィギョ=マカル・ドゥナエフ=チーフケエポリは彼らを再び真っ二つにし、それだけでは安心できなかったのか、更に四等分にしていた。
三人は急いで部屋を出て、走り出した。ゾンビ達が元通りになる前に、少しでも離れた場所へ逃げなければならない。
蜘蛛の巣が至る所で張っている、埃っぽい廊下を走っていると先の方から獣の様な唸り声や吠え声が近付いてきた。
三人は事態を察し、足を止める。三人共、顔が真っ青だった。慶喜は音を立てて唾を飲み込んだ。
獣の吠える声はどんどん近づいてくる。そして闇の中から姿を現したゾンビ達は、まるで食い物を見つけた飢えた獣の様にこちらに向かって走って来た。
――あの部屋で、飛び掛かってきた時も思ったが、なぜこいつらは動きが俊敏なんだ?!
ゾンビと言えば、非常に緩慢な体の動きであるはずだ。しかしこいつらゾンビは、活きの良い山犬か何かのように俊敏に動き回る。
更に、背後からも走る足音、そして獣の咆哮が聞こえてきた。四等分に刻まれたゾンビ達が元に戻り、追いかけてきたのだ。
三人は、ゾンビに挟み撃ちにされていた。
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