死霊とはらわた

慶喜達三人は、窓に身を乗り出し下方を愕然としながら見つめていた。


中庭に落下したチャンボルケ・フロシュの遺体には、あっという間にゾンビ達が群がり、食いついている。

まるで獣が餌にありついたようにして、貪り食っている様子が見て取れた。

ある者は長い腸を両手で掴みながら、フランクフルトを食べるようにかぶりつき、ある者はリンゴでも齧るようにして、心臓を鷲掴みにして口の周りを赤黒くしながら夢中で食べている。


彼らゾンビには、胃や腸などの消化器官が無い。彼らがまだ人間だった頃、慶喜が皮膚を切り、中を空洞にするために取り除いたからだ。


ではゾンビ達の食べたチャンボルケ・フロシュの肉体は、一体どこへ行くのだろうか。

骨をボリボリと噛み砕くゾンビの体を、目を凝らして見てみたが、喉から下、切り裂かれ空洞となっている場所には何も現れる様子が無い。

正に、超自然的な存在だった。彼らは消化器官無しで食べた物を栄養として吸収しているのだろう。


頼みの綱であった、チャンボルケ・フロシュがいなくなった。

ゾンビ達の吠え声は、ますます近くなってきている。この城に入り込み、慶喜達のいる部屋に近付いている様だった。


「バイオハザードだ…これはもう、バイオハザードにシフトするしかない…!」


慶喜は決意したようにそう言って、キエヌィギョ=マカル・ドゥナエフ=チーフケエポリの方を見た。

キエヌィギョ=マカル・ドゥナエフ=チーフケエポリは、困惑した顔になる。


「何なんだ…?バイオハザードって…そういう魔術があるのか?」


「ナイト・オブ・ザ・リビングデッド死霊創世記でも、何でも良いよ!とにかく銃とかあるだろう?!そういうので、あいつらをやっつけるんだよ!」


「ええっ…何、無茶言ってるんだよ?!あいつら化け物だぞ?!」


キエヌィギョ=マカル・ドゥナエフ=チーフケエポリは怯えた顔でそう言った。


「キエヌィ…お前、ファイターだろうが?!ひょろい事言うなよ!とにかくそれしか無いだろ、武器持ってこい!」



キエヌィギョ=マカル・ドゥナエフ=チーフケエポリは不安げな顔で、使用人と顔を見合わせると頷いた。

使用人は部屋の隅の方へ行き、そこにある扉を開けて「こちらに、いくつか武器がございます」と案内した。


武器庫であろう、その四畳程の部屋には長さや太さの異なる、種々多様な剣が並んでいる。残念な事に、飛び道具が一切無い。

しかし文句を言っても仕方がない。今から飛び道具を調達させる間など無いのだ。




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