怨霊の継承

「かしこまりました。」


チャンボルケ・フロシュは静かにそう言うと、窓の方へ向かい、外で騒ぎ立てるゾンビの様子をじっと見つめた。

そして慶喜らの方へ向き直り、こう言った。


「メニショヴァ=クッレルヴォ・ヴスマト=ホレイシオ様、あなたここへ来る前に罪を犯しましたね?」


ぎくりとした慶喜を、キエヌィギョ=マカル・ドゥナエフ=チーフケエポリと使用人が見る。


「な、なぜそれを…」


キエヌィギョ=マカル・ドゥナエフ=チーフケエポリも、慶喜が領民を虐殺した事を知らない様子であった。

チャンボルケ・フロシュに何らかの情報源があるのかもしれないが、いきなり後ろめたい事を言い当てられた慶喜は、彼の霊媒能力は本物かもしれないと思った。


チャンボルケ・フロシュは、やはりと言う風に頷く。


「あなた様の犯した罪、それによる怨霊…だけではありません。百代に渡るメニショヴァ=クッレルヴォ・ヴスマト=ホレイシオによる犠牲者達の怨霊も集い、ゾンビとなって表れたのです!」



「メニショヴァ=クッレルヴォ・ヴスマト=ホレイシオ!お前、何て事を…!」


慶喜を責めようとするキエヌィギョ=マカル・ドゥナエフ=チーフケエポリを、チャンボルケ・フロシュが制し言った。


「キエヌィギョ=マカル・ドゥナエフ=チーフケエポリ様、あなた様も無関係ではありません。」


キエヌィギョ=マカル・ドゥナエフ=チーフケエポリは「えっ?!」と何が何やら分からないという風な反応をする。

そんな城の主に、チャンボルケ・フロシュは続けて言った。



「キエヌィギョ=マカル・ドゥナエフ=チーフケエポリ様、あなた様と代々の先代様の罪により命を落とした怨霊達もまた集い、あれらに力を与えているのです!」


そう言ってチャンボルケ・フロシュは、ゾンビを見渡せる窓の方を指差し、キエヌィギョ=マカル・ドゥナエフ=チーフケエポリは「あああ~」と泣き崩れた。


傍から見れば、とんだ茶番に見える。しかし慶喜は馬鹿にできなかった。

メニショヴァ=クッレルヴォ・ヴスマト=ホレイシオの先祖達がどうであったか知る由も無いのだが、現当主に人望が無い事は確かであるし、慶喜が転生してからも恨まれて当然の事しかやっていない。


そして現に目の前に、ゾンビという超自然的な存在が在るのだ。

同じく、超自然的な力に頼るしか無いと思った。


「頼む!あいつらを何とかして…あいつらを消してくれ!」


慶喜達は、チャンボルケ・フロシュに縋るようにして頼んだ。



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