殺し合い

慶喜は隣に突っ立っている参加者の方を見た。そいつの淀んだ視線の先には、頭部がぐちゃぐちゃになって倒れている参加者がいる。

目の前で起きた事を処理し切れないのか、呆然としながら視線をぼんやりそこへ向けていた。


慶喜は金槌を持った手を振り上げ、その死体を眺めるままの参加者の頭部に、思い切り振り下ろした。

金槌の頭部が、そいつの頭部にぶつかる瞬間、ようやくそいつは異変に気付き顔を慶喜の方へ向けかけたので、金槌の頭部はそいつの前頭部にめり込んだ。


グシャ、という鈍い音と凄まじい悲鳴。そいつは前頭部を抑えながらうずくまり、呻いてる。

もう一振りしようとしたその時、殺気を感じ思わず飛びのくと、元居た位置にバールが降ってきた。


振り下ろしたバールを両手に握ったその参加者は、慶喜を仕留め損ねたと知るや、頭部を抑えうずくまったままの参加者に目を止める。

血走った目で、今度はその参加者にバールを振り下ろした。

何かが折れる音がして、打たれた参加者は仰向けに倒れた。起き上がる気配は無く、目も口もぽかんと開けたままである。


木に登りながらよりも、平地の方が戦い易い。ここで少しでも多くライバルを減らしたいというのが、慶喜を含めた皆の考えだった。


しかしあまりかまけ過ぎると、先に登って行った英二が頂上にたどり着いてしまう。引き際が肝心だ。


隙を見て木によじ登りかけた参加者を発見した慶喜は、思わずその頭部を殴ろうとしかけた時、その参加者の背中にナイフが突き立てられた。

参加者は悲鳴をあげながら、登りかけていた木から手を離し、地面に転がり落ちる。

その頭部が、他の参加者のバールによって砕かれた。


――ひょっとして、最後の一人になるまで木登りに取り掛かる事はできないのか?


なら、さっさと片付けなければならない。既に英二という参加者の一人が木を登っているのだ。

誰からも邪魔される事無く、木登りのみに集中できる英二が妬ましかった。あいつは確かに運が強い。しかし銃を手に入れた参加者を真っ先に殺し、武器を奪った彼は何もせず運が転がり落ちてきたわけではなかった。

行動する事で、運を掴み取ったのだ。


自分も行動しなければ――慶喜は、既に動かなくなった参加者の頭部を夢中になってバールで砕き続けるそいつの後頭部に金槌をめり込ませた。そいつは呻き声をあげながら、その場にうずくまる。


もう二、三振り下ろそうとした時、自分に向かってナイフの刃先を向け走り寄る参加者が目に入り、バールを手にうずくまった参加者の両脇を掴んで引き上げ、盾にした。

ナイフを持った参加者と慶喜は、まるでサンドイッチのパンの様にバールを持つ参加者を挟み込んでいる。


それでもしつこくバールを握ったままの参加者の腹に、胸に、顔に、滅多刺しにナイフの刃先が突き立てられた。




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