武器選び
一体どこへ行くのだろうかと一同は黙って従い、歩いていたのだが、西丕日野は歩き始めてすぐに足を止めた。
空き地から出る事無く、端に寄っただけである。
「次のステージは、こちらになります。」
そう言って西丕日野は皆の方を向き、両手を広げて言った。
彼の背後には大木が一本そびえ立っている。
木の種類は分からない。絵本でよく見るような、三角形に葉が生い茂っている、そんな木だった。そして高い。見上げても、頂上が見えないくらいには高い木だった。
「ルールは至って簡単。この木を登って、頂上にある木の先を掴んだ方の勝利です。それ以外のルールはありませんので、ご自由になさってください。」
使用人二名が、ガラガラと車輪付きの台にテレビを乗せて現れ、西丕日野にリモコンを手渡した。
彼が何某かリモコン操作をすると、テレビ画面にパッと映像が映り、そこにはこの大木の頂上を思しきものが現れた。
勝者をここで確認する、という事だろう。そして先ほど言ったように、その過程で何があろうと、何をしようと自由なので確認する必要は無いという事だ。
「道具をご用意致しましたので、お好きな物をお好きなだけどうぞ。ただし、早い者勝ちです。」
何があるのか分からない、広げられた道具の元へ、皆我先にと走り寄る。
そこには金槌やら拳銃やらあるように見えたが、慶喜がたどり着く頃には半分以上取られて無くなっていた。
拳銃が欲しかったが、当然無くなっている。仕方がないので、残っていた金槌を一つ持っていった。
――まあ良いや。どうせ手に入れた所で、拳銃の使い方も分からないのだから、上手く扱える自信も無い。
元の場所に戻ると、英二が浮かない顔をしていた。
「何を手に入れたんだ?」と尋ねると、渋い顔でインパクトを片手でプラプラ振って見せる。
武器にならない事も無いだろうが、金槌などの鈍器や飛び道具と比べると、使い勝手が悪そうだ。
「この勝負、俺の勝ちだな。まあ、コンサートへの意志は俺が継いでやるよ。」
慶喜はまだ勝負が始まってもいないのに、勝ち誇った顔でそう言った。
しかし英二も負けん気の強い顔で
「ふん、インパクトだって使い方によっちゃ鈍器より良い武器になる。さっきも言ったが、俺は運が強いんだ。」と言い返した。
しかし一番の敵は、飛び道具を手に入れた参加者だろう。周囲を見渡すと、一人拳銃を手にした参加者が目に入った。
他と同じく、荒れた土気色の肌をしたその初老の男は、既に勝った気でいるのか唇を吊り上げている。暗い目は脂が浮いたようにギラついていた。
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