次のステージ
二十人程いた人数が、一気に半分に減った。
無傷の者もいれば、少々怪我をしている者もおり、中には血塗れで片目が潰れていたり、どこかしら骨折していそうな者までいる。
その中に、英二が生存しているのを確認した。正直慶喜は英二について、生きていても死んでいてもどうでも良かった。殆どダメージを被った様子の無い英二をまじまじと見ながら、一体こいつはどんな手を使ったのだろうかと思っていた。
英二の方も同様で、慶喜を目に留めるなり怪訝な顔でじろじろ見てくる。
「おい、お前一体どんな手を使ったんだよ?無傷じゃないか。」
慶喜が話しかけると、英二は面倒くさそうに「俺は運が強かったんだよ。」と答えた。
どうやら単純に、じゃんけんで勝ったらしい。
そしてペアになった相手が幸運な事に、鈍器でどつかれても持ち堪えるようなタフな奴ではなかった。
「お前の方こそ、どうやったんだ?」
今度は英二が同じ質問を寄越してきた。
「後出しの後出しだよ。それで勝って、相手をどついて枠からはみ出させた。」
「そんな事やっても、良かったのか?!」
「ああ、良かったんだ。言われたルールに『後出しじゃんけんはいけません』とは無かっただろ。審判も何も言わなかった。」
「へー、成る程。言われたルールさえ守れば、本当に後は自由だったって事か。よく気付いたな。」
「改めまして…皆様、おめでとうございます!」
急に西丕日野の声がして、二人は思わず雑談を止めてそちらを見た。他の参加者も皆、彼の方を注目している。
「さっそくですが、次のゲームに移りたいと思います。こちらへいらしてください。」
そう言うとくるりと後ろを向き、スタスタと歩いていったので、皆慌てて西丕日野の後に続いた。
――やっぱり、そうか。
予想はしていた。最初より人数が減ったとはいえ、まだ十人程残っている。残った十人で遺産を山分けし、事業を共有しようなどという甘い考えを、この藪根家が持っているわけがない。
きっと最後の一人になるまで、ゲームは続く。
英二とも、次は敵同士になるだろう。そう思い英二の方を見ると、彼も同じ事を考えていたようで目が合った。
どちらかが死に、そしてあの素晴らしいコンサートをもう二度と経験する事は叶わないのだ。
これまで二人は、あの曲、そして素晴らしいコンサートの実現という共通の目標で協力し合っていた。しかしこの中で、二人のうちその目標の実現を見聞きできるのは、たった一人。
元々英二に対しては、何の感情も持っていない。感傷めいたものは微塵も感じなかった。それは英二も同様に見える。
次のゲームでも、きっと生き残ってみせる。あのコンサートをもう一度目に、耳にしないまま死ぬわけにはいかない。
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