デスゲーム
空き地
部屋を出て、屋敷を出ると玄関前には大型バスが停まっており、昭三郎の親族らは誘導されながらぞろぞろと乗り込んでいた。広間にいた時はよく分からなかったが、あの様子を見ていると訪れた親族は二十人程かもしれない。
自分達も乗るべきだろうか、と慶喜が思っていると「あなた方はこちらです。」と昭三郎に招かれ、バスの側に停まっていた乗用車に案内された。
後部座席に慶喜と英二が乗り、助手席に昭三郎、運転席に西丕日野が座り、車は発進した。
乗用車は前方を走るバスを追うように進んで行く。ジャングルのような中庭を通り、門を抜けて、邸宅の並ぶ住宅街を走る。
――どれくらいの時間、車に乗る事になるのだろう…こんな事なら、CDとプレイヤーを持ってくるべきだった。
慶喜は後悔しながら、窓から外の景色をぼんやりと眺めていた。
それにしても、人けの無い村である。
最初に屋敷を出てこの辺りを見た時は、村人皆が集っているのであろう葬儀の時であった。だから、村をうろつく者を見かけなくても不思議に思わなかったのだ。
車は山道に入り、奥深く進んでいく。慶喜は段々不安になってきた。
――ゲームの内容について、全く考えていなかったが…命を危険にさらすようなものでないと良いが…
藪根家の異様さを散々見た後なので、安心できない。広間に居た時、激昂した親族の誰かが「警察に」云々と言っていた事も気になる。
慶喜は遠慮がちに昭三郎に声をかけた。
「あの…ゲームの内容をお聞きしても構いませんか?」
「ゲームの内容は、現地に到着してから他の皆様と同じようにお伝えします。」
運転席の西丕日野が、よく通る声で言い切った。
「今お教えすると、アンフェアですから。」
昭三郎もにこやかにそう言うので、慶喜も英二もそれ以上は問う気になれず「あ、はい。すみません…」と言い押し黙るしか無かった。
気まずくなった慶喜は、視界を再び窓に向けた。外の景色は延々と木々が続いている。
車は山道の角を曲がり、くねくねとした道路を経ると木々に囲まれた空き地に着き、そこで停車した。
バスからぞろぞろと親族らが出てきて、慶喜たちも乗用車から降りた。
西丕日野が「では皆様、こちらにお集まりください。」と誘導し、昭三郎以外は皆その弁護士の前に集合する。
昭三郎だけは乗用車の側に立ち、成り行きを見物していた。
昭三郎はゲームに参加せずとも、遺産を譲り受ける権利を獲得している。この中で誰も勝ち残らない方が、彼にとっては都合が良いはずであった。
それなのになぜ、わざわざ自分達を参加させ母数を増やしたのか慶喜には分からず、ますますもって不気味だった。
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