第15話

「えっ……帰っちゃうの?」

「まー私の家ほったらかしだからね。私の仕事場でもあるんだし、一度帰らないと」

「むー……ずっとここに居てくれても良いのよ?」

「あはは、ありがとう……」


川から戻ってきた後、私がミリアだけでなくスイまで助けた話は、あっという間に妖精の集落全体に伝わったみたい

色んな妖精たちが私を一目見ようとやってきたんだ。とりあえずみんな妖精らしく小さくてかわいいので手あたり次第に頭を撫でてあげたけど、それにしても数が多すぎるよ。五百人くらいはいるんじゃないかな。


「リリスはすっかりみんなに受け入れられたわね」

「そうだね……今更だけど、人間が勝手に集落に入ってきたりしてゴメン」

「集落を荒らす人間なら追い払っていたけど、リリスはそうじゃないでしょ? そんな冷たいこと言わないで?」

「そうよ? スイも私も、集落のみんなはリリスのことがだ……受け入れたんだから」

「何でちょっと間があったの?」

「うるさい……これじゃライバルがまた増えるじゃない……」


ミリアが顔を赤くしてまた何かぶつぶつと言い出した。

こういう時はそっとしておくのが大事だと分かったので何も言わないでおこう


「ありがとう二人とも、それじゃあ私はそろそろ王国に戻るね」

「そうね。それじゃあ行きましょうか」

「ええ。早くしないと日が暮れて真っ暗になっちゃうわ」

「……え?」


ミリアとスイは私の肩に乗った。あれ、二人とも見送りしてくれるんだよね?


「あの、ミリア? スイ? 私これから王国に帰るんだよ?」

「知っているわ」

「ほら早く歩いてよ?」

「まさか、着いてくる気なのっ!?」


二人とも呆れたようにため息をついて私の正面に飛んだ。そこは呆れるところじゃないと思うんだけど……


「リリスは私たちがいないとダメでしょ? 妖精の魔力がないとダメダメ錬金術師のままなんだから」

「それにどうやって王国まで帰るつもりなのよ? 帰り道知らないのに」

「うぐ。それは確かにそうだけど……でも良いの? 二人にとっては妖精の集落を離れることになるんだよ」

「まー確かに人間の国ってちょっと怖いかもだけど、リリスが守ってくれるでしょ?」

「それに二度と帰れなくなる訳じゃないわ。集落と王国はすぐ近くなら気にする必要なんてないよ」


あわあわしている私に、二人はとどめを言った


「リリス。あなたは私とミリアの恋人なのよ?」

「初耳なんだけどぉ!?」

「そう。じゃあ今知ったからちょうど良いわね……好きよ、大好き」

「ずっと一緒よ。錬金術をしているときも寝ているときも。妖精を恋に落としたんだから、最後まで責任取りなさいよね?」


いよいよ混乱してきた私に、二人の唇が迫ってきた。

交代でのキスを何度もされていって、周りの妖精たちも何故か手をたたいて祝福してくれた。


「はぁ、分かったよ。二人とも、これからよろしくね」

「よろしく。水のことなら私に任せてね」

「錬金術をするときは私と一緒よ? 手伝ってあげるから」

「うん。それじゃいこっか。王国に!」


こうして私は、にぎやかな妖精二人を連れて王国に戻った。

妖精の強い魔力と、誰も近寄らない森のさらに特別な妖精の集落から採れる錬金術の材料は、王国のトップレベルの錬金術師であっても手に入らない物だった

私はあっという間にトップレベルの錬金術師になった。それでも良くある豪邸とか弟子を取るとか連日パーティーに行くとか、そういう俗世間とは一線を引いている

だって3人でにぎやかに住む家と、妖精の集落で妖精たちとたわむれている時間がすごく楽しいもん。こんなのやめられないよ。

いっそのこと王国から引っ越して、妖精の集落の中に自分の家を作っちゃおうかな。そうすればずっとみんなと一緒に生活できそうだし!

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錬金術師ですが妖精を恋に落としました 畳アンダーレ @ojiandare

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