第11話 厠神の慈悲
「頼むッ!私は何をすればいいのだ。それを聞いてはもらえまいか」
「いや、あの……その……」
今、俺の目の前では身なりの良い紳士が、土下座をせんばかりに、必死にとあることをセーラに訴えている。
それは、神である俺が起こした奇跡にどんな対価を支払えばいいのか、ということ。
俺のいる公衆トイレは今、紳士とその護衛と思われる大勢の騎士たちに囲まれて物騒な雰囲気を醸し出していた。
おおう、どうしてこうなった…………。
★★
ことの発端は、数日前、俺のいる公衆トイレに血まみれの男が飛び込んで来た事による。
「うおおおおっ!!何だ?何だ?」
背中から大量の血を流し、息も絶え絶えの紳士が息荒くトイレへと入って来たのだ。
そしてその後方からは、血まみれの剣を手にした複数の男たちの姿。
「青き血を蔑ろにする報いを受けよ!!」
追いかけてきたひとりの男が、紳士にその手の剣を振り下ろす。
「させねえよ」
俺が右手をひと振りすると、紳士以外の男たちは一瞬にしてトイレの敷地内から追い出される。
「何だ!?」
「何があったんだ!?」
「おい、入れないぞ!」
「クソっ!何が!」
トイレの外からは、例の結界で中に入れずに大騒ぎする男たちの声が。
トイレでナニしようとした男たちの後にも、良からぬことを考える者たちはそれなりにいて、その度に出禁にしていたら随分と腕が上がっていた。
今ならば、出禁だと念じて手をひと振りするだけであら不思議、トイレから外に放り出された挙げ句、中には入れない者たちの出来上がりとなった。
外から必死な声が聞こえるが、君たち程度の実力では無理だよ。
何せこちとら、
フフフフフフ…………。
そんな感じで外に出された男たちの叫び声を聞いていると、血まみれの紳士の呼吸が弱く鳴っていく。
「ううう…………」
どうやら、背中の傷が致命的で素人の俺が見ても先は長くないように思われた。
「おいおい、大丈夫か?」
俺が紳士の背中を撫でようとするも、実体を持たないこの身体は、真摯に触れることすら出来ない。
「何とかならないのかよ?このままトイレで死なれちゃ、目覚めが悪いぞ」
…………神様になってからは寝てないけど。
そんな事を考えていた俺は、せっかくだからとチャレンジしてみることにする。
怪我治れ!
怪我治れ!
怪我治れ!
願ったことが反映されるなら、もしかしたらと一縷の望みに賭けた訳だ。
――――『厠神の慈悲』発動。
すると、どこからともなく例の声が聞こえてきた。
「えっ!?」
俺は思わず目を見開いた。
何故なら脳裏に声が響いた瞬間、眩いばかりの光が紳士の身体を包む。
そして、光が静かに収まると、そこには傷ひとつない紳士の姿があったのだった。
呼吸も落ち着いており、生命に別状ないように思える。
「マジかぁ……」
俺は目の前の奇跡に、これからひと騒動あることを予想してため息をつくのであった。
★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★
怪我も癒やすトイレ。
まぁ、力ある神様てすからこのていどなら問題ないかと。
あと2,3話くらいで終わる予定です。
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トイレの神様に転生した件 うりぼう @tsu11223344556677889900
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