☆予知能力の果て☆

学校の休み時間に、生徒たちが集まって話をしていた


「俺、予知能力があるんだけど」


「分りやすい嘘だな」


「いや、本当なんだよ」


「わかったわかった、じゃあ宝くじの1等とか予知できないのか?」


「物に関する事は見えないんだ

人にオーラのようなものが見えて、この人は悪いことが起きるだろう、ぐらいしか分からないんだけど」


「そうなのか・・・まぁ、嘘にしては迫真の演技だね」


「嘘じゃないんだって」


そんな事を話していると、休み時間終了のチャイムが鳴った


しばらくすると先生が教室に入って来る


その瞬間、青年は友達に小声で言う


「あ、あの先生近い内に死ぬよ」


「はいはい、わかったわかった」


友達も信じていないせいか、青年の事を軽くあしらったのだが、次の日その先生は、事故で帰らぬ人となってしまったのだ


「ほらね、言った通りでしょ?」


「いや、まだ1回だけだし偶然って事もあるだろ」


「まだ信じてくれないんだ

そんなに頻繁に見える訳じゃないけど、また見えたら教えるよ」


「わかった

でも本当だったら、それはそれでちょっと怖いわ」


「俺が見た人が不幸になるんじゃなくて、不幸になる人を俺が見ちゃってるだけだから、別に怖くも何ともないでしょ」


「まぁ、そう言われたらそうだけど・・・」


それから何日か経ったある日、同級生にオーラらしきものが見える


「また、見えたよ」


「マジか、今度は誰なんだ?」


「名前忘れたけど、あの一番前の席のメガネ掛けた人

ただ、いつもよりうっすらしてるからケガかもね」


「濃さで程度もわかるのか?」


「うん、大体ね」


「まぁ、今度当たったら信じるよ」


次の日、その生徒は腕に包帯を巻いて登校してくる


こうなれば友達も信じるしかなかった


「本当に当たったな」


「だから本当だって言ったじゃん」


そんな出来事があってから、数日経ったある日


またもや、同級生からオーラが出ているのが見えしまった


今度はクラスで一番可愛いと評判の娘で、誰にも話していないが、青年が入学した当初から想いを寄せていた女の子だ


そんなに仲の良くない奴なら、それほど気に止めなかったが、好きな女の子となれば話は別である


しかも、今回はいつもよりオーラが強烈に出ていたので、死ぬような事が起きるのは明白だった


今までオーラのようなものが見えると、次の日までに何か起きていたようなので、なんとか今日を乗りきれば、助かる望みが有るのではないか?


いつどんな事が起きるかも分からないし、信じて貰うには大変かもしれないが、青年は素直に助けたい、いや、助けなきゃと思った


念のため学校に居る時は、目を離さないようにしていたが、幸いな事に何事も起きなかったようだ


そして、放課後の帰り道に一人になった所で声を掛ける事にした


「あのーすいません」


「え?」


「急に声を掛けてごめんなさい、でも、驚かないで下さい、あなたにとって危険な事が迫っているので、話を聞いて貰いたいだけです」


「え?危険?」


今の状況で危険と言っても、全く説得力がないのは承知の上

説明が難し過ぎる

信じて貰えないかもしれないが、ありのままを話すしか無いと思った


「あなたに危険が迫っているんです

それも死んでしまう程の危険です

何が起きるのかはわかりませんが、僕の予知は外れた事がないんです

だから、何とか助けたいと思って声を掛けました」


「急に何ですか?

訳の分からないことを言い出してきて」


「信じて下さい!助けたいだけなんです!」



女の子は迷惑そうな顔をして、その場を立ち去ろうとする


やっぱり信じてもらえない


女の子も自分の事を不審だと思ったかもしれない

誰でも、急にこんな事を言われたら、そう思うだろうこれ以上食い下がっても、事態は悪化するだけだ


こうなったら最後の手段で、女の子の家を張り込むしかなかった


家の中で危険な事が起きてしまえば、どうしようもないが、何か異変があれば、即座に警察や救急車などが呼べる筈である


あとは、人が集まる場所や車が多い所なんかに、出掛けない事を祈るしかない


そして、女の子が家に帰ってから、かなりの時間が経った


家の外から見守っているが、今のところ異変はないようだ


そうこうしてる内に、深夜になってしまう


何も起きないならそれに越した事はないが、自分の予知は今まで外れた事が無い


絶対何か起きる筈なのである


その時、女の子の家の前に人影が現れた


街頭の薄暗い光に照らされて、光を反射した右手のほうを見ると、刃物が握られている


とうとう来た!


まずは、警察に電話をしなければ・・・

準備していたので通報も早い


しかし、その人影は玄関のドアを開けようと何かしている


警察を待っていては間に合わないかもしれない


そう思った青年は、玄関に向かって走り出していた


護身用に持っていたバットを握りしめて、その人影に向かっていく青年


無言で向かっていったので、ギリギリまで相手も気付かない


もう少しで、手に持っている刃物を叩き落とす事が出来たのだが、気付かれてしまい揉み合いとなってしまった


女の子の家の玄関で、揉み合う二人


そのまま、二人ともドアに激突し、相手は持っていた刃物を離してしまう


青年はそれを見落とさなかった


すぐさま刃物を拾い上げると、相手を威嚇する


正直怖かったが、青年に刃物が渡ってしまった事で、相手は一目散に逃げていったようだ


「ふぅ、何とか危険は乗り越えた・・・」


青年が一息ついていると、女の子の家のドアが開いた


ドアの向こうには、女の子が立っている


「驚かせちゃったみたいだね、不審者は追い払ったから安心して」


青年が女の子に話し掛けるが、女の子の顔はみるみる青くなっていく


帰り道に訳の分からない事を言っていた奴が、深夜に刃物を持って玄関に立っているのだから


女の子は反射的に悲鳴を上げた


「ち、違うんだ!俺は君を助けようとして!

だから、静かにしてくれ!」


しかし、女の子は青年の言うことなど全く聞いてない


「誰か!!!助けて!!!」


女の子は叫び続ける


その時、青年の頭の中で何かが弾ける


青年が女の子に近付いたと思うと、持っていた刃物で女の子を刺してしまったのだ


女の子は帰らぬ人となり、青年は自分で呼んだ警察に捕まってしまう


そう、青年の予知は外れた事がないのだ

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空想旅行 ねぷちゅ~ん @neptune777

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