☆最高の趣味☆

広大な敷地の中に、とても大きな屋敷があった


世界屈指の大富豪の屋敷である


その大きさはとてつもなく、部屋の数も数え切れないほどだ


そんな、屋敷の一室から声が聞こえる


「御主人様、猟の準備ができました

ヘリコプターが待機中で御座います」


「そうか、ありがとう早速出掛ける事にしようか」


「承知致しました」


執事は深々とお辞儀をすると、主人より早く部屋の入り口まで移動し、主人が近づく丁度のタイミングで扉を開ける


ボディーガードと共に、ヘリコプターに乗り込むと、今日の狩猟ポイントへ向かった


驚く事に、これから向かう狩猟ポイントですら、広大な敷地の中なのである


想像以上の大富豪のようだ


まもなくして、狩猟ポイントへ到着すると、ヘリに積んである探索装置で、動物のいる場所を特定する


あまり近くに着陸すると、動物が逃げてしまう為に、ここからは歩くしかないのだ


とはいっても、かなりの距離まで接近していたようで


歩き出してから、それほど時間が経たないうちに獲物を発見することが出来た


主人は銃を構え、鹿に狙いを定めると引き金を引いた


見事に命中し、主人は満足気である


しばらく狩を楽しんだ後、主人は言った


「今日はこれぐらいにするか、2頭目の鹿は角がとても立派だった、剥製(はくせい)にしてくれ」


「承知しました」


付き人の返事を確認すると、ヘリに乗り込み屋敷に帰るように指示する


それから数日経つと、剥製が完成したとの報告が入った


「やっと出来たか、早速見に行くとしよう」


「承知致しました」


主人はそう言って、執事と共に剥製を飾っている部屋まで移動する


この部屋には、他にも多くの剥製が飾られており、まるで博物館のようで、すべての剥製を見てまわるには、相当な時間が掛かるであろう広さと量だ


「おぉ素晴らしい!」


狩ったばかりの鹿の剥製を見て、目を輝かせる主人


まるで、子供のよう


剥製の周りをゆっくり歩きながら、隅々まで観察する


その様子を見ていた執事が声を掛けた

「御主人様は、本当に剥製が好きでいらっしゃる

わたくしはそこまで没頭できるような趣味もありません

羨ましい限りです

宜しければ、剥製の魅力などを教えて頂けないでしょうか?」


それを聞いた主人は、嬉しそうに話し出した


「剥製にすると、動物の躍動感や美しさを半永久的に保つ事が出来る

そして、剥製を見る度に狩をした時の事を鮮明に思い出せる」


「なるほど

確かに剥製は、今にも動き出しそうなくらい、美しく躍動感があります」


「そうだろう、今度は君も狩へ連れて行くとしよう

そうすれば、更に剥製が好きになるかもしれないぞ」


「私なんかが御一緒するなんて滅相もないですよ」


「遠慮するな、これは私の希望だ、悪いが付き合って貰うぞ」


少し笑いながら主人は執事に言った


「お言葉ですが御主人様、私なんかを連れて行くより、娘さんを連れて行ったほうが、遥かに楽しいのではないでしょうか?」


「あぁ、私の娘か・・・

私の娘は美しさを半永久的に残すために、もう剥製にしたんだ」

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