☆不老不死☆
とある街に巨大な病院が建設された
それはもう巨大で、ありとあらゆる施設が揃っている
医者のレベルも高く、名だたる名医が名前をつらねていて、治らない病気は無いと錯覚さえ覚える程だ
そんな巨大な病院に、ひとりの老人がやって来た
かなり遠方からやって来たのだが、老人の住んでいる町の病院では対処出来ない病気らしく、紹介状を書いて貰ったようだ
受付に紹介状を見せると、待合室で待つように言われた
待ってる間、何気に周りを見渡していると、病院の地図が目に入る
噂は聞いていたが、改めて見ても巨大である
内科や外科は勿論の事、歯科なども病院内にあるようだ
感心しながら、更に見ていると機械科という文字が目に入った
機械科?
病院では聞いたことのない科である
医療機器が入っている部屋なのか、医療機器を修理する場所なのか
どちらにせよ病院の中に機械科というのは、違和感しかなかった
色々考えを巡らせていると、受付に名前を呼ばれ、機械科に行くように言われてしまう
看護師さんに聞こうとも思ったが、忙しそうなので諦めて、機械科に向かう事にする
病院内にあるので、違和感はあれど怪しい感じはしなかったからだ
暫く歩くと機械科の札が見えたので、近くの長椅子に腰掛けて待つことにした
他の患者さんは居ないようだ
どれくらい経っただろうか、長椅子でうとうとしていると、名前を呼ばれる
指示された番号の診察室に入ると、そこには主治医らしき人物が椅子に腰掛けていた
主治医が話し出す
「紹介状を拝見しました
貴方の病状も書いてありますが、小さな診療所では設備が整っていないこともあり、診察に限界があるものです
しかし、ここの病院は全ての機器が揃っているので、見落としなどは無く安心です」
老人は頷きながら話を聞いている
「まずは、貴方の体の状態を隅々まで調べましょう」
そして、最新の機器で老人の体を隅々まで調べる事となった
かなりの数の検査を行い診察室に戻ると、主治医から椅子に座るように促される
「検査お疲れさまでした
率直に言いまして、結果はかなり悪い状況です
ご家族の方を呼んで頂きたいのですが」
長年生きてきた経験上、家族を呼ぶということは、相当状況が悪いのだろう
しかし、老人は独り身な為に呼べる家族は居なかった
「家族はもういないので、私に話して下さい
小さな診療所では対処出来ないと言われた時から、薄々感じていました
先生も気になさらずおっしゃって下さい」
主治医は少し悩んだが、本人の希望なので話す事にしたようだ
主治医は老人に事細かに病状を伝える
そして、最後に一言付け加えた
「余命はあと三ヶ月です」
若い頃からがむしゃらに働き、仕事ばかりの日々
お陰で金は余るほどあるが、趣味らしい事は何一つしなかった
そんな人生もあと三ヶ月で幕を閉じる
そんな事を考えていると、不意に主治医が話し出す
「色々考えている所申し訳ないのですが、あくまでも今の状態で何もしなければの話です」
「と、申しますと?」
「今の病状を完治させる方法がひとつだけあります
失礼ですが、肉体的に限界がきているのです
骨も弱くなり、内臓なども悪化の一途を辿っています
医療的には完治させるのは困難ですが、機械的なら完治させる事は可能です」
「機械的?」
「はい、悪いところを全て機械に変えるのです、メンテナンスは必要ですが、これ以上悪くなる事はありません
今の技術であれば、頭から足の爪先まで機械での代用が可能となってます」
なるほど、老人はやっと機械科の意味が理解できた
どのみち、機械に代用しなければ三ヶ月の命
この世に未練はないが、趣味を楽しめる時間ぐらは出来るだろう
少し考えた末に、老人は機械化することを決心したようだ
「機械化をお願いします」
「わかりました
それでは、書類のほうを書いてもらい、後日病院に来てください」
その日は、簡単な書類を書いてから帰路についた
病気が完治したら何をしようか?
あれもしたいし、これもしたい
老人は色々考えてる内に眠りに落ちていった
そして、いよいよ手術の当日がやってきた
病院に行くと、この前の主治医が対応してくれてスムーズに進んでいく
手術も完璧で予定よりかなり早く終了したようだ
手術が終わった老人がベッドに寝ていると、病室に主治医がやってきた
老人はそれに気が付いたのか、上半身をゆっくり起こす
「寝たままでいいですよ
術後そんなに時間が経ってないですし、安静にしていてください」
主治医がそう言ってくれたので、老人は再びベッドに横たわる
「術後の調子はいかがですか?」
笑顔で主治医が問いかけると、老人がゆっくりと話し出した
「チョウシハイイデス
センセイアリガトウゴザイマシタ」
無表情で棒読みだが手術は成功したようだ
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