第134話 キング・オブ・ゴーレム
キング・オブ・ゴーレム。
それは、ゴーレムの中の頂点を決める戦い。
各国から全国魔導学校対象『
全国の魔導学生が、毎年アイデアを駆使してゴーレムを製作し、競技を通じてその成果を競うもので、発想力と独創力を合言葉に毎年開催され、今年で360回目を迎える。
初めに開会式が行われ、一日目は団体競技・『
三体のゴーレムを一組としてトーナメント方式で行われる。
今年は八組の参加が決まっていて帝国から三組、ニヴルヘルから一組、ヨトゥンから一組、ドヴェルグから二組、ガンドアルヴから一組が出場する。
中でも帝国はここ五年に亘るディフェンディングチャンピオンだ。 帝国は三組も出ているが実質強いのは帝国軍魔導予備校だ。 何を隠そう、リリーズ
さりとて、他の学校が弱い訳ではない、帝国軍魔導予備校が強過ぎるのだ。
そして、二日目は個人戦によりゴーレムの王を決める
これもまたトーナメント方式による勝ち抜き戦で、まさにゴーレムの中のゴーレム、ゴーレム王の名を勝ちとる戦いである。
当然ここでも上位に名を連ねているのは帝国軍魔導予備校の面々だ。
会場の正面に設けられた壇上に大会委員長のアルマンド・クラウンが開会式の冒頭の挨拶を飾る。
「魔導を愛する生徒諸君! 今年もこの時がやって来た!! ゴーレムの中のゴーレム、ゴーレム王が決まるその時が!!」
─ワアアアアアアアア!!
「魔導を探求し、試行錯誤を繰り返し、一体の個性の塊とも言うべきエゴイズムの権化、ゴーレムを作り出した君たちは、もはや神だ!! そしてそのゴーレムこそ
つまりこの大会はもっとも優れた
─ワアアアアアアアア!!
「さあ! 生徒諸君!!
神々の遊びをしようではないか!! 心行くまで戯れるがよい!!」
─ワアアアアアアアア!!
少し誇張し過ぎた挨拶ではあるが、会場は大いに盛り上がっている。
リリーズ
ちなみにわが校のサークル顧問はボルトン先生が担当している。
そして、今回傍観者を決め込んだ僕は、場外からマキナさん、エカチェリーナさん、ピコ君、ノラさんたちと観客席にいる。
やがて開会式を終えた選手たちは、ゴーレムとマギア・グラムの審査を受けて、それぞれの選手ブースへと移動して試合に備える。
「さあ、ついにこの日がやって来た!! 今回の大会で俺たちは帝国軍魔導予備校の奴らをギャフンと言わせてやる!! 先ずは
─オオオオオオ!!
サークルの部長フランクの言葉に指揮があがる。 二年の四人は非常に悔しそうな顔から次第に口角を上げてゆき、帝国軍魔導予備校の連中を焼き殺すほどの目付きで睨む。
「ふふ……ふふふふ。 目にもの見せてやる。 僕のイージスの仇だ、思い知るがいい!!」
「パウル、お前そんなキャラだったか?」
「ふん、何とでも言え。 奴らを前にしてあの時の雪辱がふつふつと蘇ってきたんだよ!」
「そうだな、おれも許せねえ。 ギッタギタに切り刻んでやりたいが……キメラはそんな機能はねえな……」
「ヘンリック、心配すんな! 私たちは負けない!!」
「ああそうだクレイ! この大会は全部勝ちに行くぞ!!」
─おう!!
「何だオメェら気合が入ってるじゃねぇか! 前回の親善試合の時は今にも死にそうなくらいに落ち込んでいたのに、何か秘策でもあるのか!?」
「まあ、見ていてくださいよ、ボルトン先生! 先生もきっと驚きますよ!!」
「へえ、言うじゃねえか! よし、そんなに言うなら見せてみろ!! お前たちの骨は俺が拾ってやる!!」
「自分の生徒に縁起でもない事言わないでくださいよ!!」
─ワハハハハハハハハ!!
「まあ、あとはオイラにまかせとけぃ!!」
ロゼは肩越しにサムズアップを決めている。
「この娘だれだ!?」
「ああ、ボルトン先生に入部届を持って行ったでしょ? 新入部員のロゼさんですよ。 今回の大会のダークホースです」
「ダークホース? この娘が?」
「はい。 今回、マリオンとこの娘が活躍します! 俺たちはオマケみたいなもんですよ」
「へえ。 まあ、見てみんことには何も言えんな! みんな頑張れよ!!」
「ああ、わかってらいっ!!」
ロゼは鼻を啜り上げてニカッと笑う。
「……この娘、変わってるな?」
「可愛いっしょ?」
「……そうだな?」
「うちの部のマスコットです」
「マドンナじゃねえのか?」
「「「「マスコットです!!」」」」
「そ、そうか……」
一日目は
──Aブロック──
『一回戦』
帝国軍魔導予備校
✕
ガンドアルヴ国立魔導学園
ドヴェルグ魔導具専門学校
✕
帝都教会魔導学院
──Bブロック──
『一回戦』
ドヴェルグ国立魔導学校
✕
ヨトゥン王立魔導学校
リリーズ魔導学園
✕
バベル建塔師魔導専門学校
組み合わせは以上の通りだ。
僕たちのチームはBブロックの二戦目なので午後からの部となるらしい。
午前中はそれぞれのブロックの一戦目が各会場で行われる。
気になるのはやはり帝国軍魔導予備校なのだが、勝てば次の相手となるであろう相手も観ておく必要がある。
と言うわけで、Bブロックの一戦目、ドヴェルグ魔導学校✕ヨトゥン王立魔導学校の戦いを観ることになった。
ドワーフ対巨人族。 どちらかと言うと物作りで優位にあるドワーフの方に軍配が傾くかと思われそうだが、戦闘センスで言えば巨人族のほうが有利だ。
そして三対三のチーム線であることから作戦によっては例えゴーレムの性能が劣っていいたとしても勝てる場合もあると言うものだろう。
基本的なフォーメーションとしては前衛・中衛・後衛があり、役割としてはアタッカー・ジャマー・ガーディアンそしてスナイパーがあるが、とりわけそう呼ばれているだけで決まっているわけではない。
最近の流行りはスナイパーで、エントリーフラッグすなわちファースト・キルを狙うものである。
勿論これに対応した防御策も生まれているのだが、やはり、速攻が狙えるのと支援攻撃も有用であることから、増えているのだとか。
ちなみにリリーズ魔導学園のチームは前衛アタッカー・キメラ、前衛アタッカー・マロカ、後衛ガーディアン・ロザリアの攻・攻・守となっている。
─『一回戦』第二競技場
ドヴェルグ国立魔導学校
✕
ヨトゥン王立魔導学校
ドヴェルグ国立魔導学校のゴーレムはアタッカー・ジャマー・ガーディアンで、ヨトゥン王立魔導学校はアタッカー✕2・ガーディアンで配置されている。
ステージはジオラマになっており、対局の丘の上の砦に旗が掲げられており、ゴツゴツしたゴーレム隠れられるくらいの大きな岩や、水魔法用であろうそれなりに深い池が配置されている。
火魔法などを使うと燃え移る可能性があるために、植物などは配置されていない。
[一回戦、試合開始!!]
試合開始のアナウンスが流れる。
─ワアアアアアアアア!!
同時に凄い声援が観覧席から聞こえて来る。
─ready!! キュイーン…
ゴーレム・ボックスの継ぎ目に光の筋が走り、四方向に開放されていく。
─fight!! シュウウゥゥ…
それぞれのゴーレムが起動し、身体強化や魔法陣展開など予備動作を始める。
先に動いたのはドヴェルグのゴーレムで、魔法陣を展開していたガーディアンが自陣のフラッグを防壁で固めた。
次いで動いたのはヨトゥンのアタッカーだ。 脅威の身体強化で身体がメキメキと膨れ上がる。
ドヴェルグのジャマーが魔法陣の展開を終えて、水魔法で地ベタを穿ち、一面の泥沼を作り上げた。
ヨトゥンのゴーレムは土魔法で体躯を大きくしたが、
ドヴェルグのアタッカーがここぞとばかりにヨトゥンのアタッカーの間をすり抜けて、その後ろにそびえるガーディアンに近付く。
ヨトゥンのアタッカーは身体を大きくするためにつけた土塊を落として、すぐに自陣へと戻ろうとするが、ドヴェルグのジャマーがそれを許さない。
ヨトゥンのアタッカーの足元の泥沼を固めて歩を止めた。
ドヴェルグのアタッカーがヨトゥンのガーディアンに目もくれず、フラッグに真っ直ぐ突っ込んで行く。
当然ヨトゥンのガーディアンも素直にフラッグを譲る気はないので、前に立ちはだかり防衛を試みる。 図体ばかりがデカいヨトゥンのゴーレムだが、本体に傷をつけると失格となるので、肉壁防御結界はかなり効果的だと言える。
とは言え、ヨトゥンのゴーレムからもドヴェルグのゴーレムを傷付ける事が出来ないために手が出せないでいる。
ドヴェルグのゴーレムがヨトゥンのゴーレムを俊足で翻弄して隙を窺っていたところ。
─ドゴゴゴゴゴ……
地鳴りがして、
─ズンッ!!
─ピ──ッ!!
試合終了のホイッスルだ。 審判がヨトゥン側の旗を上げている。
ドヴェルグ側の陣営を見てみると、土魔法で作られた防壁、いや、砦とフラッグ諸共壊されている。
つまり、ヨトゥンのアタッカーがもう一体のヨトゥンのアタッカーを放り投げたのだ。
まさに肉弾戦!! わりとスピードが決め手で勝負で終わりがちなこの
[勝者、ヨトゥン王立魔導学校!!]
─ワアアアアアアアア!!
「まあ、おれたちのテキではないな!!」
ロゼが仁王立ちでふんぞり返って言う。 ……うん、可愛いな、お前は。
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