第115話 家族会議?
ロゼはちょこんと地べたに座り、こちらに耳を向けてくれている。
ロゼは良い。
何もかも良い。
こんな良い娘、他にいないだろう?
「なあ、姉さん!?」
「何だ、弟よ?」
「話を聞く気あるんですか?」
「おうよ、ピロートークだろう?」
マキナさんは僕のベッドに潜り込んで、掛け布団をめくり上げ、反対の手でベッドを叩いている。
「口にべったりとシチューが付いてますから、僕の布団に入らないでくださいよ!?」
「ほれほれ、舐めて取ってくれんのか? ぺろぺろ」
「ウラノス呼びますよ?」
「そ、それはヤメロ!! 顔がベトベトになるではないか!!」
「じゃあ、ちゃんと座って聞いてください!」
「ウラノスの鱗をピアスにしてやったのは誰だと思っておるのだ!?」
「マキナ姉さんですよ? ちゃんと代金は支払いましたからね? 通常の五倍くらいにふっかけたのも知ってますからね?」
「そ、そそそ、そんな、ことは……ない、ぞ? あ、あれは、て、ててて、適正価格だ! そうだ、ボクの指名料が含まれておる!! むしろ安かろう!?」
「ふふん、そう言う事にしておきますから、早く座ってくださいよ!?」
「世話が焼けるなあ、ノワールは……よいしょっと」
マキナさんはベッドから降りて来て、テクテクとボクの前まで来ると僕の膝の上に腰を下ろそうとしたので……。
「いっ!?」
指で浣腸をしてやった!! 女性にする事ではないなと思ったが、いい加減腹がたったので半ば腹癒せだ。
「もうお嫁には行けぬ!! 責任とってくれぬか!? ノワール!?」
「自業自得と言うやつです姉さん……」
「まあまあ突き刺さったではないか……ヒリヒリするぞ?」
「じゃあ、軟膏でもぬりましょうか?」
「そうか! そんなご褒美が待っておったか!?」
マキナさんはオーバーオールの肩紐を外してズボンを下ろそうとし始めた。
「冗談なので、脱ごうとしないでください! ロゼ、頼む!」
「いえっさー!!」
ロゼは用意していた養生テープでマキナさんをグルグル巻きにした。 口にはテープで
「お!? おうおう、おえあおおいうおおあ!? 」
「とりあえず話が終わるまで、そうしておいてください」
「ねぇね、きもちいい?」
「う……ぅん……」
「良かった♪」
「最近、姉さんの変態レベルが加速してないか? 誰のせいだ?」
「わかんな〜い」
「まあいっか……やっぱり
ロゼはマキナさんの
マキナさんは軽く深呼吸をすると……。
「もっと……」
……聞かなかった事にしよう。 これ以上相手をすると、こちらまでおかしな趣味に目覚めてしまきそうだからな。
「折り行って、二人に相談したい事があります。 姉さんもちゃんと聞いてくれるならロープも外しますから」
「良かろう。 話してみよ!」
「はなしてみよ!」
「う……うん」
僕は二人に向き直って姿勢を正した。 ひとつ息を吐くと意を決した。
「今日、僕はキャロライン教授と言う魔法植物研究の権威に、メリアス先輩の紹介で会ってきた。
彼女の研究は魔法植物のリジェネラと言う寄生植物を使って、魔法生物の蘇生を行うと言う研究だ。
僕はもしかしたら、アハトさんを生き返らせる事が出来るのではないかと、教授に相談しに行ったんだ」
「ほう、キミにしては思い切った事をしたな!?」
「はい、自分でも思慮が浅いと言われても仕方ないのは解って行ったのです。 僕はどうしてもアハトさんの死に責任を感じています」
「クロ……」
「うん、解ってる。 僕が悪い訳では無い。 無いが! 眼の前で散ったシロと瓜二つのその命を! 惜しまない日なんて無い!!」
シロが僕に寄り添ってくれる。 きっと共感してくれているのだろう。
そうだ。 この子を失う様な事があれば、僕は気が気でなくなるだろう。
アハトさんの時だって胸が引き裂かれそうなくらいに苦しんだんだ。 今だって癒えた訳では無い、シロが居るから何とか前に進める状態だ。
帝国は許さない。 帝国に住まう人たちが悪い訳では無いが、ギッタギタのメッタメタのグッチャグッチャにしてやりたい!!
「でも……」
「魂が残っているかどうかだな?」
「そう……なんです……」
「たましい?」
「うん、僕や君の事を覚えているのかどうか……もしかしたら全然覚えてないかも知れないし、生き返っても動かないかも知れない。 或いは別人のようかも知れない」
「君は……転霊術を覚えているか? ……いや、覚えていまいが、君は自分が転生者なのは解るな?」
「はい、僕は別の世界からこちらに来ました」
「では、君の魂は何処から来た?」
「エクスさんの錬成器にプログラムされた転霊術によってこちらの世界にデータとして転送……え!?」
「あの錬成器を作ったのは他ならぬボクだぞ!? エクスが異世界の友達と遊びたいとかぬかしよるからのぉ?
君の遺伝子情報と霊魂の情報を転送させて錬成したのだ。 セフィとやらが向こうで君の身体を使わなければ、君は例えこちらで死んだとしても、あちらの身体に復元ポイントがあるために元の世界へ戻る筈だったのだ。
しかし、君の身体はこちらに帰化してしまった。 君は余程の事がない限り戻れないと言うことになる。
この話からボクが何を言いたいか分かるかね?」
「つまり、リジェネラを使わなくても情報さえ取得出来れば錬成可能だと言う事になる。 そして、それは実験ではなく、僕と言う前列がある以上ほぼ可能と言うことだ……」
「ほほう、さすが我が弟であるな、物分りが早い。
しかしまあ、Gちゃんがアンドロイド化している地点で理解するべきだったな。
なので、もっと早くにこのボクに相談しておれば良かったのだよ」
マキナさんは天才か!?
いや、天才なのだ。
今更考えるまでもなく天才だと言う事を改めて実感させられている。 変態と言うフィルターが邪魔していただけなんて!! なんて残念な天才だ!?
「でも、姉さん?」
「何だ?」
この話を聴いて、僕は一つの疑問が沸き上がった。 そう、蘇生が可能だと言うのならば……。
「何故、エクスさんや他のギルメンは蘇生しなかったのですか?」
「ああ……彼らの身体は帝国にものとして没収されたのだ。 錬成器もな。 我々はGちゃんの訴訟で帝国と戦っておるのだが、あんな事故が起こる事は想定してなかったのだよ。
帝国はGちゃんの研究を根こそぎ欲しているし、その関係者も全て捜査対象らしい。 遺族に身柄も返さないとか、横暴がすぎるだろう? 国権乱用も甚だしい!!」
「そんな……酷い!!」
「ひどい……」
「シロ?」
「わたしたちはじっけんたいでほんらいここにそんざいすらしないものだったかもしれない。
でも、マキナたんのお姉ちゃんはちがう!! ものなんかじゃない!!」
「シロ?」
「ん……」
「お前だってものなんかじゃない。 僕の大切なひとだろう。 無碍な事をいうもんじゃないよ……」
僕はシロの身体を抱き寄せる。 シロはそのまま僕に体重を委ねてくる。
マキナさんが寂しそうな顔をしている。 それは……そうだよな。
僕はマキナさんも抱き寄せる。 マキナさんもそのまま僕に体重を委ねてくる。
無言のまま。
お互いにお互いを感じている。
─皆、独りぼっちなんだ。
皆、独りだからこそ
誰かを求める。
心を預ける
拠り所を。
全てを委ねられる
居場所を。
僕は心の何処かでまだアハトさんのことを実験体だと思っていたのか? シロのことも?
否だ!!
これは実験ではない!
助けたい生命を救う蘇生術だ!!
そうと分かれば考えるまでもない! シロの子供? 妹?
どちらでも良い。
僕は決めた! アハトさんを僕たちの家族に迎え入れよう!!
「シロ、マキナ姉さん、僕はアハトさんを家族として迎え入れようと思う。 良いかな? 手伝ってくれるかな?」
「シロは戸籍上はアランの家族だ。 そしてアハトもそうした方が良いだろう。 ボクの戸籍は危険だからな……クロは存在自体が出鱈目だから良いがな!!」
マキナさんはあんな事を言っているが、やはり淋しいのだろう。 僕が居ることでソレが紛れているなら良いのだが……。
「そうですね。 そして、姉さんに相談ですが、良いですか?」
「おう、このままギュッとしてくれたら何でも聞こう」
「そんなことならいくらでも……」
僕はマキナさんとシロをギュッと抱きしめた。 二人もギュッと腕に力を入れて来る。 今、人が入って来たら大騒ぎになるんだろうな……。
「アハトさんは蘇生しても、魔力過多の為に
「……そんな事か。 もう身体があるのならばどうにもならんが、初めから作り直すのならば問題ない。 君たちの解析データから魔力過多に対する不老不死のデータもちゃんととってある。 今や遺伝子の編集は治療の一環だ。 彼女から死と言う概念を取り払ってやろう」
「本当に姉さんは……僕なんか及びもつかないくらいに出鱈目じゃないですか……本当に、頼りになります!」
「あ、当たり前であろう? ぼぼぼ、ボクは天才だからな!? わははははははは!!」
─アハトさん……、お待たせしました。 けれども、もう少し……、もう少しだけ待っていてくださいね!
─ガチャリ……
「貴様! やはり寮内でこんな
「り、寮長!? ち、違います!! 誤解です!!」
「問答無用だ!!」
─ドンガラガッシャーン!
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