第六章 魔導学園2
第107話 おかえり
「お届け物でーす!」
学生寮の表を箒で掃いていると、何やら大きな荷物が届けられた。 大きさにして百五十センチ四方の木箱だ。 宛名は僕ノワール、差出人は……マキナ=プロメット!!
ちょっと大きいが、これは確定だな。
─ゴーレムだろう!?
画像イメージとゴーレムの規定、大会の規約は送っておいた。 その通りのモノが出来ているのならば、これでロゼはキング・オブ・ゴーレムの大会に出る事が出来る筈。
流石に大きいので配達の人にに手伝ってもらって、部屋まで運んでもらった。
満を持して箱を開けると……。
「そこで何をしてるんです?」
箱の中を覗くと、猫の着ぐるみを着たマキナさんがスヤスヤと寝入っていた。
一拍おいて目を覚ましたマキナさんは、目をパチクリさせて寝ぼけ眼で言う。
「あ、クロ……おかえり……」
「何がおかえり、ですか! よく運んでもらえましたね?」
「おわ!? クロではないか!? もう着いたのか、サプライズしようと思っていたのに……非常に遺憾であるな!」
「遺憾なのはこっちですよ! ゴーレムだと思って開けてみたら、マキナさんが入っていただなんて!!」
「いや、ちゃんとゴーレムも入っているではないか!?」
見るとリボンを付けて包装された、それこそ五十センチ四方のプレゼントボックスがあった。
「これはロゼへのプレゼントだが、ほれコレを見ろ? 可愛いであろう?」
「いったい何です? まあ、可愛いと言えば、可愛いですね?」
マキナさんは猫の着ぐるみを着て、首に大きなリボンを付けている。
「そうであろう。 気に入ったか?」
「……まあ、可愛いですよ?」
「クロ、お前へのプレゼントだ!」
「な!? やっぱり変態は治ってませんね!? 姉さん! それからクロは辞めてください、ノワールです!」
「わははははははは!! サプライズは成功であるな!!」
「コラッ!!」
あらぬ方向から怒号が発せられた。
「寮長!?」
「寮内では不純異性交流は禁止だと言っただろう!! しかもそんな幼気な少女を連れ込むなど言語道断だぞ!!」
「いや、彼女は僕の姉さんで、マキナ=プロメットです。 女性は女性ですが……はい、すみません」
「姉さん? 全然似ておらんではないか?」
「はい、血は繋がってはおりませんので。 彼女はドワーフで、僕は人族ですので、似てはいませんが、戸籍上は姉弟となります」
「ほう、キミが寮長か。 日頃うちの弟が世話になっている。 これはつまらぬモノだが受け取ってくれ!」
マキナさんは四角い箱を寮長に渡すと、寮長は遠慮もなく箱を開けた。
中から円盤型の何かが出てきたが、いったい何なのか解らない。 付属の充電するような部品からおそらく電気で動くモノと解るが……。
「これはいったい何だ?」
「ふむ、説明してやろう。 コレは充電器をコンセントに挿しておくと、コレを基点にして勝手にお掃除してくれると言う代物だ! 言うなればお掃除ドローンの【お掃除君】だ!」
「お掃除君……だと!?」
「マキナさんにしては捻りがないネーミングですね!?」
「人が気にしていることをズケズケと言うではないか、弟よ!!」
「いやしかし、これは良いな!! これでオレの鍛錬の時間が設けれると言うものだ!! マキナ殿、感謝するぞ!! 申し遅れたが、オレはこの学生寮の寮長をしているスクルドだ! ようこそ、マキナどの!」
「おう、遠慮なくもらってくれ!! それはそうと、ロゼッタはどこにおるのだ?」
「ロゼならリビングでゲームしてるんじゃないですか?」
「そうか!」
そう言うと寮長の案内でマキナは、ロゼのいるリビングへと向かった。
直後。
─ドタバタ!ドタダダダダ!バーン!
「おいおい、廊下は静かに、部屋に入る時はノック──」
「──どこ!? マロカたんは!?」
「うん、今出すから落ち着こうな」
「うん!」
「………………」
「はやくはやく!」
「なあ、ロゼ?」
「なあに?」
「落ち着こうな?」
「うん!」
ロゼは僕の背中から伸し掛かって前のめりになり、足をバタバタさせて落ち着かない。 ちょっとだけ柔らかいものが当たるから……まあ、良いんだけどね? 僕が立ち上がれなくなってしまいそうだから。
言葉に出来ない言葉をつらつらと心の中で呟く。
ロゼに続いてゲームをしていたマグヌス先輩やメリアス先輩、ココさんが部屋に入って来た。 非常に狭い。
……そしてマキナさん……ちょいとリアルに作り過ぎてませんか?
箱を開けるとゴーレムが入るべき箱が出て来て、更に箱を開けると中から裸体の少女を模したゴーレムが出て来た。 ゴーレムは着せ替え可能で、ソレ用の衣装も別に用意されている。
ゴーレムはピンクのツインテールの少女だ。 顔立ちは少し幼くパッチリ垂れ目がちの可愛らしい感じだ。
衣装は三種類。 魔法少女のコスチュームと言うべき一つ目の衣装は、髪の色に合わせてピンク基調とした可愛らしいデザインだ。
武器も設定に合わせて杖が用意されているが……アレで戦えるのだろうか? 物理的には弱そうに見える。
二つ目は天使バージョン。 こちらは白を基調としたもので、大きな翼とセットだ。 シロをイメージしているのか? 武器は弓を用意しているようだが、やはり戦闘向けとは言い難い。
ラストは名前が入ったスクール水着アーマーだ。 色は紺色でスリムボディがとても犯罪的だ。 その上セットとして用意してある装備がバスタオルとか頭オカシイヨネ?
「すっっっっっ………
っご───────いっ!!」
「そうであろう? 気に入ったか、ロゼッタ!?」
「きにいった、きにいった──!! マキナたん大好きだ──!! あははははははは!!」
「うむうむ、そんなに喜んでくれると、作った甲斐もあるってもんだ! まあ、ちゃんと戦えるかどうかはロゼッタ次第だぞ? それから、三つ目のスク水アーマーとバスタオルはメタルスライム仕様だ。 大会の規定上どうなのか確認せねばなるまい?」
「メタルスライム……僕の想像通りなら凄そうですね!?」
「………………助平め」
「ち、違う! 違うからね!?」
「何が違うのだ? 先ほどもジロジロとゴーレムの裸体を見ておったではないか?」
「いやいやいや! 思った以上にパーツや装備が繊細でよく出来ていたからですよ!?」
「どのパーツだ………………助平め」
「助平」
「エロエロ」
「変態」
「ムッツリ」
「すけべ〜」
「うわああああああ!! そんなんじゃねええええええ!!」
「ふふ、冗談だ。
装備はハイモスが作った。 奴は図体はバカデカいが、仕事は繊細で良い仕事をしよる。
工作用ドローンのアラネアちゃんと改良型モスキート君を使えるようになってからと言うもの、物凄い勢いで創作しておる。 思っていた以上に優秀な弟子であったわ!」
「へえ、ハイモスさん頑張っているんですねぇ!?」
「おう──」
「──あ、おはようございます!」
部屋の入口からひょっこりと顔を覗かせたマリオン先輩は部屋のぐるりを見回すと。 ひとつため息をついた。
「あれ? マリオン先輩早いですね?」
「何を言ってるんです、もう八時ですよ? お腹が空いて、リビングに行っても誰もいなかったんで、何やら騒がしいこの部屋に来てみたわけですが……おい……おい、おい、おいおいおいおいおいっ!?」
「ど、どうしたんですか、マリオン先輩?」
「このフィギュアは何処で購入したんですか!?」
「フィギュア? これ、ゴーレムですよ?」
「これがゴーレムな筈がないでしょう!? こんな美しいゴーレムが……いや、ぼくのロザリアだって負けてない!!」
「何を言ってるのだ!? ほれ、ここにラビの
マキナさんが箱の中のデバイスを取り出して見せた。 僕たちがしている携帯デバイスより一回り大きな仕様だ。 中にはいくつかの魔晶石が入っていて、より高度なメカニズムとなっているらしい。 それに対応したゴーレムリングが十個。 全ての指に嵌めて操作するらしい。
「そんな……ぼくのデバイスより可愛いだなんて……ノワールさん!? この人はいったい何者なんです!?」
「僕の姉さんで、マキナ姉さんだよ。 見ての通り手先が器用なんだ♪」
敢えてプロメットの名は濁しておいた。 脳筋の寮長と違って、詮索されても困るからね。
「手先が器用ってレベルを超えまくってんだよっ!? ぼくは手先と造形にだけは自信があったんだ! なのに、何だこれは!?! ぼくのロザリアが凡庸に見えるじゃないか!?」
「いえでも、僕は先輩のロザリア?見た事ありませんし……皆見た事あります?」
「「「「「ん〜ん!」」」」」
「ほら、皆知らないでしょう? 先輩がどんなに器用だって、ロザリアと言うゴーレムが美しくたって、誰も知らないんですから、比べようがありませんよね?」
「くっそふざけやがって!! 今、持ってきてやる!! テメェの姉貴のイカれ加減を教えてやらぁ!!」
「おうおう、持って来い持って来い!!わははははははは!!」
「マキナ姉さん!?」
「くっそおおおおおお!!」
マリオン先輩は凄い形相で自分の部屋へ駆けて行った。
はてさて、先輩の自慢のゴーレム、ロザリア様はいったいどんなゴーレムなのか。
まあ、マキナさんのゴーレムと比べてしまうと……学生のゴーレムなんて及びもつかないのだから仕方ないのだがな。
あれ? これ、試合出て大丈夫なのか? ……ま、いっか。
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