第77話 オードブル
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ー・ー・ー・ー・ー・ー・ー・ー
そこは戦場だった。
喧々囂々、侃々諤々と怒号が飛び交い、大わらわである。
皆が皆、集中し、協力し、そしてパーティー料理と言う怪物に立ち向かっているのだ。
基本は立食で食べられる様に、巨大なテーブルに数々の料理を並べて胃袋モンスター共を蹴散らす算段ではあるが、主賓格モンスターは別なのである。 最高戦力の戦略を以て攻略しなければならないのだ!
「絶対に手を抜かないでください!! オードブルはメイン料理よりも慎重に丁寧に仕上げるように心がけてください!!」
「「「「「「「「「「はいっ!!」」」」」」」」」」
「メイガスさん、アミューズのグレーターホーンバッファローのチーズで作ったグジェールはとても好評でした!!」
「マダムは!?」
「はい、おかわりを所望しておりましたが、コース仕立てになっている旨を給仕に説明していただき、理解していただきました!」
「良しっ! くれぐれもおかわりはさせるな! これは絶対にだ!!」
「はいっ!」
パーティー会場の主賓席に座っているマダムはご機嫌であった。 むしろ、少し興奮気味なくらいである。
「何なのだ? 今のグジェールとやらは!?」
「はい、グレーターホーンバッファローの乳を使って作ったグリュイエールチーズとスパイスを混ぜ込んで焼き上げたシュー皮にございます」
「ほわっとチーズの香ばしい香りに誘われるままに口に入れると、サクッと歯を立てた後、モッチリとした生地がそれを受け止めて、口に広がるチーズの旨味の中からピリリとしたスパイスが効いて……涎が止まらんではないか!?」
「おかわりを我慢させてしまいまして、たいへん申し訳ございません。 後の料理を愉しんでいただく為にも、どうぞご協力ください」
低いバリトンの声で料理の説明をしているのは、本日特別にギャルソンを引き受けてくれた、【カノン】のオーナーであるアランさんである。 当然ベンさんも僕の助手として手伝ってくれている。
【カサブランカ】のベスさんやマチルダさんも給仕として手伝いに来てくれている。
「さて、もうアミューズを口にされている方もチラホラ見受けられますが、飲み物の方は皆さんに行き届いたでしょうか?
………………はい、届いた様ですね!」
ステージ上でマイクを握って司会進行役を頑張っているのは、今回ノリノリで手伝ってくれている【ベラドンナ】のマリアさん。 隣でダフネさんがスケジュールのチェックと調整を行っている。
「それでは! 今回マダム・ヘンリエッタ様が全面バックアップのもと、日頃身を粉にして働いてくださっているリリーズ・キャッスルの皆さんの為に、ご褒美パーティーを開いてくださいました!!」
──ワアアアアアアアアア!!
──パチパチパチパチパチ……
盛大な歓声と共に拍手が鳴り響く。
「本日は冥王の弟子のメイガスさん監修のもと、数々の冥界料理と冥界音楽を用意させていただきました!!」
──ワアアアアアアアアア!!
──パチパチパチパチパチ……
「どうか! 今日と言う日が! 皆さんの明日の糧と成らん事を願いまして!! 乾杯!!」
──乾杯!!⌒☆
一斉に会場がざわつき始める。 それも無理もない、見たこともない料理がズラリと並んでいるのだ。 皆が皆、満面の笑みで料理を手にし始めた。
「お待たせいたしましたマダム。 本日のオードブルになります」
「なっ!? コレはどこからどう食べたら良いのかしら!? いっぱいあって判らないじゃない!?」
「はい。 本日のオードブルは……
ニヴルヘル北部アルジェン産のスノーホワイトアスパラガスの冷製アイオリソース仕立て
エーリヴァーガル川の下流域で捕れた淡水ホタテのミキュイ
提携農家から今朝直送されたばかりの季節の野菜のカクテルを詰め込んだマダム・トマト
にございます。 どちらから手を付けていただいても美味しくいただけますので、好きな所からお召し上がり下さい」
「その、マダム・トマトと申すのは何かしら!?」
「本日の為に。 マダムに召し上がっていただく為だけに、水耕栽培と言う新しい栽培方法にて作らせました、特別なトマトにございます。
極限まで水分を抑えまして、特殊な肥料を与えておりますので、非常に糖度が高くフルーツの様に甘く、爽やか且つ濃厚な風味となっております」
「甘い!! 旨い!! こんな甘いトマトを新しく作り出したと言うの!?」
「はい。 これもメイガス様の指示による計らいにございます」
「こっちの真っ白なアスパラも尋常ではない甘さと瑞々しさかしら!? それにこのマッタリと風味豊かなソースが格別にアスパラの旨さを引き立ててるわ!! ん〜〜ん、美味し〜い♪」
「マダム、こっちのホタテも美味しいよ〜♪ 半生でほんのりあったかくてお味がすっごく濃いの♪ オレンジレモンと塩だけなのにウマウマ〜♡」
「モモ、本当ね!? ひと口で終わるのが惜しいわぁ……。 最後のこの卵はどうやって食べるのかしら?」
「はい、殻の部分をお持ちになって、スプーンで軽くかき混ぜてから、お掬いになってお召し上がり下さい」
「……旨い!! 旨すぎるわ!! 卵が半熟で黄身がとろりとしたところにこのソース……それに、このプチプチとしたモノは何かしら!?」
「プチプチとしたモノはエーリヴァーガル川で水揚げされたブラックサーモンの卵巣をほぐして付け汁に漬けたものだそうです。
ソースの方は、何でもアールブの大森林で一つ目豚に探させたとか言うキノコだそうで、独特の香りがソースによく合うのだとか」
「アランさん? この皿をもう一皿いただけないかしら?」
「他のお料理が食べられなくなっても宜しいのでしょうか?」
「ぐぬぬぬぬぬぬ……」
──パチン!
照明が暗転して、会場が一瞬真っ暗になる。
──パチン!
ステージに照明が照らされて現れたのはモカ・マタリの二人だった。
モカがマイクを持ってお辞儀をする。
「マダム・ヘンリエッタ様。 本日は
お礼と言っては何ですが、我々の拙い曲でお耳汚しくださいませ!」
【the wondering puss】
作詞:モカ
作曲:マタリ
編曲:メイガス
〜♪♫♬♪♫♬♪♫♬
ボクは野良猫 ☘ 黒い猫𓃠
ユグドラシルの ✿ 樹の下で
気ままに行こう ☘ 散歩道
風を追い越し ✿ 雲の上
𓃠⌒♪♫♬♪♫♬
𓆝゜。月光差し込む海底も𓆝゜。
〰〰 マンティコアの街道も 〰〰
♡⌒キミと一緒なら怖くない⌒♡
✿✿wandering wonderland✿✿
♪teck-tack♪teck-tack♪𓃠……
𓃠……♪tick-tock♪tick-tock♪
♡⌒𓃠
〜♪♫♬♪♫♬♪♫♬
ボクは野良猫 ☘ 黒い猫𓃠
夢も自由も投げ捨てて⌒☆
* ★飛び出した世界は広すぎて★ *
゜。歩き疲れて夢の中。゜
𓃠⌒♪♫♬♪♫♬
_Å_天を貫くシン・バベル_Å_
ⅢⅢアスガルドの鳥のかごⅢⅢ
♡⌒キミと一緒ならどこまでも⌒♡
✿✿wandering wonderland✿✿
♪teck-tack♪teck-tack♪𓃠……
𓃠……♪tick-tock♪tick-tock♪
♡⌒キミと一緒に世界の果てへ⌒♡
✿✿wandering worldend✿✿
♪teck-tack♪teck-tack♪𓃠……
𓃠……♪tick-tock♪tick-tock♪
♪teck-tack♪teck-tack♪𓃠……
𓃠……♪tick-tock♪tick-tock♪
〜♪♫♬♪♫♬♪♫♬
──ワアアアアアアアアア!!
──パチパチパチパチパチ!!
モカ・マタリは一礼して歓声に手を振って応えた。 そして満面の笑みでマイクを取ると。
「皆さんご拝聴ありがとうございました!! 俺たちモカ・マタリは今日! 冥王様の使徒として! メイガスさんと同じ舞台に居合わせる事が出来ました! たいへん恐縮至極であります!! この場に居合わせた全ての人に! 冥王様の
──ワアアアアアアアアア!!
──パチパチパチパチパチ!!
ー・ー・ー・ー・ー・ー・ー・ー・ー
unknown〚おいおいおいおい!!〛
unknown〚キタ━━━━(゚∀゚)━━━━!!〛
unknown〚ついに冥王が尻尾を出した!?〛
unknown〚まあモカ・マタリはずっと居たけどな?〛
unknown〚メイガスって誰?誰かkwsk!!〛
unknown〚メイガスって言やぁ、先日爆バズりしてたサマエルのベーシストだろ!?〛
unknown〚もぐりは消えろ〛
unknown〚なんか、サーセンm(_ _)m〛
unknown〚この後も続くんだろ?〛
unknown〚ヤベ……俺今日タヒぬかも!〛
深淵の大賢者〚………………〛
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