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二次創作。
「モーヴ・モブデッサはアールヴ大森林の夢を見る(下)」
「虫けらどもぉ! 集会《サバト》へ集まったか! いいか……、良く聴け! 魂でシャウトしろ!」
さっきまで、丁寧なイケメン、好印象なバーテンダーだったベノムさんは、バンド「サマエル」のベノムとなり、舞台上からマイクを手に、群がる観客に罵詈雑言を浴びせるシンガーとなったのだ。
「ええええーっ!」
あたしは、その変身ぶりに驚き、間抜けな大声をだした。
(……痺れるくらい、格好良い!)
デスボイスが店を雷のように走り、空気をつんざく。鼓膜が破けそう。
──ぁ゙ぁ゙ぁ゙ぁ゙ぁ゙ぁ゙ぁ゙ぁ゙ぁ゙ぁ゙!
──誰か殺して!
──ぁ゙ぁ゙ぁ゙ぁ゙ぁ゙ぁ゙ぁ゙ぁ゙ぁ゙ぁ゙!
──誰か壊して!
それは、魂の叫び。
迸る、全てを破壊したい衝動。
ああ、これだ。
あたしが求めていたのは、叫びたかったのは、これだ。
何が、十人並のモブ人生。
何が、空気のモーヴ。
そんなの、クソ喰らえ!
全部壊して、ガンガンに叩きのめして、火をつけて燃やしてしまえ!
本当のあたしは───、もっと自由だ!
舞台上で、ベノムが、あたしの神が、「叫べぇぇぇ!」とマイクに向かって声をぶつけた。
「ベノムゥ──────ッ!」
気がついたら、カウンターを立ち、「サマエル」の音楽に酔いしれる大勢の観客と一緒に、腹の底から叫び、頭をガンガン、振っている自分がいた。
気持ちいい───ッ!!
あたし、生きてるぅーっ。
「姉ちゃん、いかしてんなぁ! ヘッドバンギングが決まってんぜ!」
知らない、いかついお兄ちゃんが、ビッ、と親指を立てて、声をかけてくる。
「そうでしょ!」
弾む息で、はちきれんばかりの笑顔で、あたしは答える。
───その日から。
あたしは、仕事返りに、「倶楽部パンゲア」に入り浸るようになった。ちゃっかり、ロッカーで、どーんと振り切れた服装にチェンジするのよ。
うふふ。職場の同僚も、友人も、だーれも、知らないの。あたしの秘密。
大好きよ、「サマエル」。
ありがとう、ベノム。
……実は、通いつめる日々のなかで、こっそり、マスターに、
「ベノムさんって、好きな人、いるのかな……?」
と訊いてしまった。マスターは、
「秘密にしてくれよ。ものすごい高嶺の花の女性(本当は異母妹)を、助けるべく、あいつは頑張ってるんだ。他の女性に目がいく事はないだろう。」
と教えてくれた。
「そっかぁ……。」
その晩は泣いた。
バーテンダーの時は礼儀正しくて、でも、眼差しに苦労人というか、悲哀を漂わせた人。
ライブステージに立つと一変、マグマのような怒りを放つ人。
あたしに、アールヴの緑陰を教えてくれた人。
あなたは、あたしの人生を変えてくれた。あたしの代わりに、叫んでくれた。
……推し活で良いの。
どこまでも、ついてくわっ! ベノムっ!
───完───
追記。
コメント欄のスペースを大量に占拠し、申し訳ありません。
もちろん、どこで紹介していただいても、かまいませんし、「続く」を削除なさって、ひとつなぎにするのも良いかと思います。(全部繋げて書き上げ、コメント欄のスペースを取りすぎるので、三つに分割しました。)
これは、今まで頂戴した絵のお礼ですので、お気になさらず〜。(. ❛ ᴗ ❛.)
お仕事中でしたか! お疲れ様です。(◍•ᴗ•◍)
作者からの返信
加須千花先生
ラストまで一気に読んじゃいましたよ!!!!仕事中!!
勿体ないので、スピンオフとして公開しても宜しいでしょうか?
私、先生のファンで良かったっす!! (*꒦ິ꒳꒦ີ)♡
先生の二次創作作るの難しそうだから、お返しするとしたらまた絵になるなあ(´-`).。oO
編集済
かごのぼっち先生、この回激烈最高ですわ(*`ω´)b更新感謝しかない
ベノムの歌にもむっちゃ痺れたけど、クロがむっちゃくちゃかっこよすぎ、惚れてまうやんけ(とっくに惚れてるけどね♡♡♡)
テンポ良い歌詞の配置でリズムと熱いライブ感を感じた、先生やってくれましたわね٩( 🔥ω🔥 )وこれは燃える‼️
ノリノリで次回の更新もよろしくお願いしますm(_ _)m
作者からの返信
みかぼし先生
いつも熱の籠もったコメントをありがとうございますm(_ _)m
皆から離れて少しヤンチャなクロが芽を出して来ました。
ベノムは妹のヘレンとは腹違いなので、セイレーンの血を引き継いでいる訳ではありません。
ただ、心に溜まった澱を排出する為の手段として歌っております。
うたは世に連れ世はうたに連れ!
世界はうたに満ちている!!
!!\(◎o◎)/!!
魂の叫び!!!