第53話 悶々として
今回少し性的描写が入ります。
苦手な方は◆◇◆の後、飛ばして下さい
注意:後半の◇◆◇の後スミスの話が少し入ります
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「ペムペム、今日はよく晴れて良い
「そうじゃな、エニュニュン! 最高のD‐1日和じゃよ!」
「強風も止んだし、飛竜のコンディション次第で最高のポテンシャルを引き出せる訳じゃ!」
「いやいやデイノン、
「何を言っても、今日はドゥラメイガスが来る!!」
「これ、ガンツ! ちと運転が荒いんじゃないか?」
「シロちゃん! あと少しじゃ! 頑張ってなぁ!」
「は〜い♪」
「BBAどもはやかましいのぉ」
シュッシュッシュッシュッシュッシュッシュッ……
ペムペム(ペムプレードー)エニュニュン(エニューオー)デイノン(デイノー)のグライアイ三姉妹とシロ、ガンツの五人は魔導カーゴ、即ち
基本的にはエーリヴァーガル川の岸辺を走り、一路ファーヴニル競ドラ場のあるフヴェルゲルミルの泉へと向かっている。
前日の降雪が作り出した積雪による白銀の世界は、日光石から降り注ぐ光が薄くなった霧を跳ね除けて、辺り一帯をキラキラと輝かせている。
薄く凍りかけた川面を風が吹き抜けて草木を揺らす。
揺れた梢から雪が落ちてドシャリと音を立て、それに驚いた小鳥が慌てて飛び立ってゆく。
バリバリザババババガコンッ……ズッシャアアアア!!
そんな風情も何もかもを! 蹴散らす様に五人を乗せたバギーは川辺りを、川の中を、岩の上を、雪面にしっかりと轍を残して走り去って行く!!
まるでこの世は有為転変であると言わんばかりに、一切合切踏み付けて乗り越えるその様は、一種の
「うっひょおおおおおお!!」
「いいぞ!小娘!!もっと!もっとだ!! 風を追い越せ!!」
「じじいも興が乗って来たようじゃな!!」
「おうよ! 久しぶりの運転に魂が揺さぶられておる!」
「儂らもよもや再びコレに乗ることが出来るとは思わなんだわ!」
「シロちゃん、ありがとうね!!」
「は〜い♪」
ザババババババババ……
「なん……だ? アレ?」
偶然通り掛かった者は、大型モンスターが来たかの様に避難して、過ぎ往くのを見遣ると目を丸くしてそう口にした。
腰が抜けて立てそうになく、じわりじわりとズボンが湿ってゆく。
一同はエーリヴァーガル川を
しかし勝手知ったる他人の山。 川辺りから大きく開けた山道へ入り、一気に加速し始めた。
おそらく対向車が来たら踏み付けてしまうだろう。 なにせ道幅いっぱいなのだから!!
「よおおおおし! 競ドラ場はもうすぐだ! シロちゃん、加速しまくれ!!」
「いえっさー!」
「あばばばばば! 息がっ! 息がっばばばばば!」
「それよりもボイラーが焼けてしまわんか!?」
「大丈夫じゃ! 冷却装置にワシの魔力を注いでおるわ! 抜かり無い!!」
「やりおるのぉ、さすがは我らが護衛隊長じゃ!!」
「ばかもん! 今は二人しかおらんではないか! 隊長もへったくれもないわ! わはははははははは!」
「
「ただの腐れ縁で護衛しておるだけじゃ。 もはや国からの指示もない。 まあ、シロちゃんが対象なら守ってやりたいがのぉ!!」
「あはははははは!」
「さあ、見えて来たぞ! いつもの場所に停めさせてもらえるかどうか……」
ギャ゙ルルルルル……ザザン!
五人を乗せたバギーが一気に横を向いてドリフトしながら車体を停めた。
「おう、駐車場案内のジジイもまだ健在だったようじゃな」
「ジジイとは何じゃ、お主もジジイではないか!? ガンツ、久しいのお!?」
「ああ、壮健でなによりじゃな、ドワンゴ! 変わりないか?」
「ああ、鍛え方が違うからの! それよりも……今日は帝国の客人もおるぞ……BBAどもも用心した方が良かろうの?」
「ぬ……そうか。 情報感謝する。 では、このカーゴはいつもの所へ頼む。 ワシらは裏から入るとしよう」
「分かった。 まあ、BBAどももコッソリ楽しんで来い」
「「「ああドワンゴ、感謝するぞ!」」」
「おじいちゃんありがとう!」
「おや、可愛らしい客人じゃな? お前の孫娘か? ベノムはまだ独身じゃと思っておったが?」
「この子はBBAどもの客人じゃ。 ベノムは今入院しとるわい」
「おや、入院とは穏やかではないな。 しかしそれで合点がいった。 この時間にお主が護衛とかしとるのはおかしいと思うておったのじゃ。 まあ、何があったか知らぬが会ったら宜しく言っておいてくれ」
「わかった。 終わったらまた来る!」
「ああ」
そう言うとガンツは、バギーのキーはそのままにカーゴのドアを開けてステップを出し、グライアイ三姉妹を降ろした。
シロも姉妹の手を取って、足元に注意を払いながらガンツの後ろをついて行く。
後ろでバギーの蒸気音が聞こえ、ドワンゴさんが指示された場所へと運んでいる。
競ドラ場も当然雪景色で、何処もかしこも日光石の照明に煌めいている。
少し眩しいくらいと言えよう。
「クロ……来てないかなあ?」
シロは独り言ちるが、年老いた者たちの耳には届く筈もなく、ただ言い捨てるのみだった。
◆◇◆
「師匠、ギンヌンガガプはどうやって超えれば良いのですか?」
「はあ…はあ…はあ…ん、んん! ん?」
「……師匠?」
「な、なんだ!? キミはいったいボクの元で何を学んでおったのだ!?」
「今、何してたんですか!?」
「ボクは何を学んでおったのか聞いておる!」
「ナニしてたんですか?」
「へっ、変な汗をかいたではないか! ボクは風呂へ行って来る! キミは自分の答えを考えておき給え!」
マキナは、ヘッドセットを外して机の上に置いた。
ヘッドセットは心做しか湯気が上がっているように見える。
そして、マキナはヘッドセットの中で蒸れていたのか、髪の毛が額にペッタリとくっついている。
ヘッドセットの中から現れた紅潮した顔は、少しスッキリとして艷やかだ。
「師匠、風呂で続きとか考えてませんよね?」
「そりゃあもう……なっ!? ボクは研究に全てを捧げた身だ!! そんな邪な考えは持ち合わせておらん!!」
「邪と言いましたね……そしてそれ、ベノムさんの研究ですよね?」
「そうじゃ。 ベノム君はの、鎖骨が張っておって声も低く……くっ!! 知らん!! ボクは行くからここは任せたぞ!?」
「はいはい。 早く戻って来てくださいね……はあ……」
「あんた……デリカシーが無いわね?」
「ルカさん、デリカシーが無いのはマキナ師匠でさぁ。 俺は今、ルキナの動向に集中してるんです。 仮にルカさんが同じ事をしてても……してても……」
「……してても、何?」
「あのっ、すみません!!」
「あらまあ……邪な考えを持っちゃったのかしら?」
「る、ルカさん……」
ルカがハイモスの左隣に座り、右手を太腿の付け根あたりにソっと置いた。
ピクリと何かが動くが、ルカは見て見ない振りをする。
ハイモスは言葉が声にならず、口をぱくぱくとした後、ごくりと固唾を呑み込む。
ルカはハイモスの少し湿りだしたシャツの上から胸板に左手を当てて何かを探し始めた。
「る……ルカ、さ……んっ……?」
ハイモスのシャツは自身の汗で身体に張り付いて、引き締まった胸板を浮き彫りにしてしまっている。
「どうしたの? 息が苦しそう……ん……」
ルカは探していた何かを見つけ出すと、細くて長い指先でころころと弄り始めた。
ころころころがし。
つんつんつついて。
こねこねこねる。
つまさきではじいて。
またころがす。
「んん……」
息とも声ともつかぬ音が漏れる。
ハイモスの身体から温かい空気は登り始め、口から漏れる空気は激しさを増していく。
ルカの右手がそろそろと滑るように、ハイモスの身体で最も熱い部分へと滑り込んで行く。
「ルカさんっ!」
ルカを引き寄せようとする、ハイモスの手が宙を泳ぐ。
ルカはねちゃりと湿った唇を軽く開くと、指先で転がしていたモノをつまみ上げて、かぷりと………。
「いっでええええええええ!!」
否、がぶりと噛んだ!!
「バカね、早くお風呂で汗を流して来なさい!!」
「ひっ、ひゃいいいいぃぃ!!」
「うふふ♪ 可愛いの♡」
「ふふふ、意地悪ねぇ」
「ほんと、続きが見れなくて残念♪」
「へっ!? クロートーさん? アトロポスさん? いつからそこへ?」
ハイモスとルカが腰掛けていたソファの後ろからモイラ姉妹が姿を現した。 何故か少し息が荒いが、きっと気の所為だろう。
シロとクロがすれ違っている間、ミドガルズエンドの研究所は桃色の空気に染まっていたのだ。
◇◆◇
〜♪
マッキーナのデバイスの着信音が鳴る。 マッキーナはモニターでの情報収集と平行してデバイスを起動させる。
「よう、どないや?」
「うん、まあまあってところかのお?」
「そうか、こっちもボチボチや。 拾った情報はそっちに送ったから解析してくれるか?」
「
「まあ、それでおまんま食べてるさかいにな? まだ少し調べんとアカン事が出来たから、しばらく合流出来やんで?」
「分かった、任せたぞ」
「ほな!」
スミスがそう言うと通信を終えて、マッキーナは解析を始めた。
得体が知れない男だが、情報屋としてはピカイチの腕を持っていると言えよう。
今解析している情報を精査すれば、クロのある程度の居場所が特定出来そうな程だ。
しかし、そのスミスだが、一つの情報を前に冷や汗を流していたのだった。
「帝都教会諜報員……トリニティ・ファイブの一人……」
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