最終話
都市目掛けて大量の魔物が突っ込んでくる
最前線の魔物が突然空を舞う
槍を持った男が魔物の前に立つ
「一匹たりともこの先の土を踏ませやしねぇぞ」
「総員!構え!」
レイズ率いる都市防衛組が対峙する
都市防衛が始まる
~~~
「リベラは武装の準備しろ」
「了解」
リベラと呼ばれた人物が投擲武器などを並べる
リベラは基本として戦闘には参加しない荷物持ちだ
「スフィアとフィーネ、リベラが後衛で他が前衛……作戦は何かあるか?」
「自由に動け、臨機応変に行動しろその方が動きやすい僕はサポートメインでやる」
黒龍と戦う前に確認する
全員今ある最大の装備と防具を身につけている
「レスその剣は?」
レスは2本の剣を持っている
柄は布が巻かれて分からないが刀身は厄災の聖剣に酷似している
「これは僕の切り札だ。黒龍を討つ為の」
前衛組が黒龍に突撃する
かなり回復しているがそれでも傷が目立つ
油断している黒龍に一気に強撃を食らわす
「ウィンドブレイド」
「地砕き!」
「オーラブレイド」
「鮮烈彼岸 乱れ桜!」
攻撃を受け咆哮を発した黒龍は戦闘態勢に移行する
「こっちだヘイトハウリング」
レスが背後から斬りかかりながらタンクの使う魔法を使いヘイトを集める
思い通り黒龍はレスの方に攻撃を仕掛ける
「今だ!畳み掛けるぞ」
エーデルワイスの掛け声で攻撃を畳み掛ける
ヒットアンドアウェイ、攻撃を仕掛けて相手の攻撃が来る時には距離を取る
単純だが効果的な戦い方
「オーラブレイド」
魔力を叩きつける
後衛が間髪入れずに魔法を放つ
「ウィンドブレイド」
魔法に気を取られた瞬間に拳を振るう
「地砕き!」
支援魔法も常時発動させている
上手くレスがサポートしているおかげで有利に事が動く
それでも疲労とダメージが増えていく
「アルフレッド回復しろ」
「クッ……了解」
「サポートする……」
交互に回復して長期戦に持ち込む
順調とは行かないが黒龍は鱗がところどころ剥がれてダメージは蓄積されているだろう
炎のブレスを辺りに無差別に吐く
スフィアとフィーネが結界魔法を使い防いでる間に距離を離す
破壊して辺りを炎で包む
「風で切り開くバルファ!」
アルフレッドが先導して風霊剣バルファで巨大な風を起こして道を作る
レスがテレポートして黒龍の目の前に移動して切りかかる
「鮮烈彼岸 乱れ桜」
2本の剣で高速の連撃を浴びせる
キッカが斬りかかる
「硬い……」
炎のブレスがキッカ目掛けて放たれる
「この馬鹿が!踏み込みすぎな!」
テレポートしたレスが迎え撃つ
「鮮烈彼岸 写桜!」
炎のブレスを切り裂き魔力の軌跡で逸らす
「助かる」
「次は無いぞ」
「分かった」
それぞれが攻撃を重ねている時
「なにか来るぞ!」
レスが違和感に気づき叫ぶ
全員近づくのをやめて距離を取る
空間が歪み始めた
全員の通信機器に連絡が入る
『ウルダ城壁付近で時空が歪み始めた。時空間魔法』
レーネの声だ
『食い止めろ!』
レイズが叫んでいる
ウルダの上空の空間が歪んでいる
これは黒龍がウルダへ転移していることを意味する
「地砕き!」
高速移動してエーデルワイスが勢いよく黒龍をぶん殴り転移範囲から逸らす
「総員!攻撃せよ!」
エーデルワイスが空気を揺らす大声を出す
スフィアとフィーネも攻撃に参加する
「行かせればウルダは落ちる!そしてこの作戦も失敗する!阻止しろぉ!」
レスが攻撃しながら言う
「あの子達が居る!絶対に行かせない」
(あの子達から未来は奪わせない!)
全力で拳を振るい妨害する
攻撃に夢中になっていたエーデルワイスに黒龍の攻撃が直撃する
血を吐き吹き飛ばされる
「ワイスさん!」
「問題ない!戦える」
瓦礫を退かして戦いに戻る
「エーデルワイス」
「……分かってる、後は任せるから……絶対に倒して」
「その為の準備はしてきた。必ず勝つ」
顔を見合わす
レスはそっとフードを上げてエーデルワイスにのみ顔を見せる
「君は……成程ね道理で」
「下がれ!最高火力を叩きつけるぞ!フィーネ結界魔法を使え」
レスが指示を出す
エーデルワイスは覚悟を決めて走る
レスはテレポートでスフィアの元に行く
「オーリーの秘技を使え、出来るな」
「なんでそれを……」
「説明している余裕は無いリベラ、あの魔道具をよこせ」
「はい」
杖と腕輪を手渡す
スフィアに投げ渡す
「この2つはサポート系の特性を持つ魔道具だ、それを使えば打てるはずだ。失敗は許さん」
「……わかった」
「フィーネ、支援魔法の準備を」
「分かった」
スフィアは詠唱を始める
「我祈る、大罪を裁く天使に祈りを捧げる。咎人を封じろ咎人を殲滅せよ、断罪の天使の剣は万象を歪ませ切り伏せる……並び立つは愚者の軍勢、調べを説くは亡者の参列、地を伏せ天を仰げこれが貴様の終末だ!」
同時にふたつの魔法を詠唱する
オーリーの秘技は2つの高位魔法の同時詠唱及び合成する
偉大な魔法使いが編み出した賢者が届かなかった魔法の極地
「フォール・オブ・ジャッジメント!」
黒龍の上に巨大な魔法陣が展開されそこから大量の真っ黒な歪んだ大量の剣が現れる
禍々しい凶悪な魔力の塊
黒龍は危険を察しして逃げようとする
「誰が逃げていいと言った?」
逃げようとすることを予知していたかのように待ち構えていたエーデルワイスが居た
エーデルワイスから大量の魔力が溢れ出し魔力をガントレットに蓄積する
ガントレットの魔力の許容がオーバーしてヒビが入るが構わず集めて放つ
(命を持っていけ!)
目や口から血が溢れる
力も魔力も生命力も注ぎ込む
「星砕き!」
先程とは比べ物にならないほどの一撃が黒龍を襲う
「砕けろぉぉぉ!!」
全力で振るう
黒龍の顔と首元の鱗が砕け肉が現れ抉れ大量の血を流す
今まで以上のダメージだ
ガントレットは砕け散り力を使い果たしたエーデルワイスは力なく落下する
レスが回収する
「よくやった、あとは僕らがやる休んでろ」
「……なら休ませてもらうよ」
安全な所に移動してエーデルワイスを地面に置く
大ダメージを受けて逃げられなかった黒龍は大量の剣に刺し貫かれる
魔力を使い果たしたスフィアは倒れる
致命傷を負った黒龍は自己治癒に魔力を回している
キッカは両手剣に変えて魔力増幅で高めた魔力を一点に集めていた
「あの技を扱えるな?」
「出来る」
「僕達が先導する必ず当てろよ……アルフレッド!」
「あぁ任せろ!バルファ!!」
アルフレッドとレスが先導する
3人にフィーネの支援魔法が上乗せされる
アルフレッドが一撃目の炎のブレスを風の纏った風霊剣で防ぐ
「ぐっ……うぉぉぉぉ!!」
アルフレッドの風の補助も受けて2人はジャンプして黒龍の顔元まで飛ぶ
それに気づいた黒龍は炎のブレスをやめて即席の魔力のブレスを放つ
即席でありながら的確に狙いを定めている
レスがキッカに触れる
「頭上に飛ばす、そこでぶち込め!」
テレポートさせた後魔力のブレスを魔力を込めた2本の剣で受け止める
「少し付き合え!黒龍!鮮烈彼岸 写桜」
キッカは黒龍の頭上にテレポートしたあと構える
「神聖剣」
災厄の聖剣の特性魔法固定の力を使い神聖系と呼ばれる祈りに魔力を込めることでアンデットや魔人などに特攻となる特異な魔法を使う
レスから教わった魔法だ
祈りを込めた魔力は光り輝き剣を包み巨大な剣となる
「これで終わりだァ!」
切っ先を天に向け両手で強く握り黒龍目掛けて振り下ろす
その一撃は黒龍の鱗を砕き肉を裂き真っ二つに切り裂く
黒龍は声を上げることもなく倒れ伏す
レスがキッカを抱き抱える
「良くやった!」
「……行けた?」
薄れ行く意識の中キッカはつぶやく
「あぁ……勝ちだ僕達は黒龍を倒したんだ!」
レスは今までの無情との言える冷たい言い方でも今までの偽りの声ではなくキッカの聞き覚えのある人物の声で歓喜の言葉を漏らす
「よかった……」
「あぁ、ようやく……ようやく終わったんだ……」
キッカは軽く微笑んだ後意識を失う
~~~
「彼女は黒龍に果敢に挑み大きな貢献をしました」
黒龍討伐においての被害は負傷者多数と死者1名
葬式が執り行われている
エーデルワイス・ルーガルドの葬式だ
孤児院関係者や蒼月の銀狼のメンバー以外にも多くの人間が参加している
涙を流す者も多く居る
「おい、レス」
レイズが話しかける
「なんだ」
「最悪は避けれたのか?あいつの死は……無駄じゃ無いよな」
「あぁ、彼女のおかげで最善に近い結果になった」
「そうか、なら良い」
疾風怒濤は前衛都市クランという事もあり蒼月の銀狼と関わりの多いクラン
当然クランリーダーの2人も関わりがあった
冒険者は死ぬもの
冒険者の死に多くの語りはいらない
2人は死体に花を添える
「安らかに眠れ」
~~~
黒龍を討伐したキッカ達は英雄として讃えられた
数日後目が覚めたキッカは黒龍討伐とエーデルワイスの死を聞いた
「ワイスさんが……」
スフィアとフィーネはキッカが起きたことを知り駆けつける
「少し良い?」
「貴方は確か……リベラさん?」
そこにはリベラが立っていた
黒ローブを脱ぎ捨てる
「僕だよ」
「リオ!?」
「リオさん!?」
スフィアとキッカは驚く
フィーネは何となくで察する
「傷に響くから声は押えて……僕が生きてた理由について話すよ」
「私たちは出ておきます」
状況が分からないスフィアを連れてフィーネは部屋を出る
椅子に座りレウリスで黒龍と戦ったあとの話をする
炎のブレスからレスに救われた事、その後にレスと行動していた事、そしてレスの正体について語り始める
信じられないような出来事を語るが嘘はついていない
「嘘……」
「キッカ、まだ間に合うから行ってあげて」
キッカは癒え切ってない体に鞭打って目的の場所へ向かう
廃墟と化した豪邸の端にある小さな2つ並ぶ墓の前にレスは居た
かつてアルクティス家として栄えた家、2つの墓はキッカの両親の墓だ
「来たか」
声をもう変えていない
「…………」
「言いたいことが多いのはわかるけどそんな時間はない」
レスの持つ2本の剣は柄の布を外して武器の本当の姿を見せている
その姿は正しく災厄の聖剣
キッカの持つ災厄の聖剣は病室にある
本来2つは存在するはずの無い装備だ
この武器の存在がリオの説明したことが本当だと物語る
「私やリオを助けてくれてありがとう」
「目的の為に必要だったからだ」
「目的はなんだったの」
「最悪を避ける事」
雑談を交わす
何気ない言葉だ、強いて言うならフィーネと交わした話に似ている
時間を忘れて話に没頭する
「もう時間だ……」
「まだ……」
「あとの話はあいつにしてやってくれ……世話かけるが頼むぞ」
キッカは涙を流す
正体について知っているから……そしてどうなるかも知っているから
「分かってる」
「頼みがひとつあるんだけど……聞いてくれるか?」
「なんでも言っていいよ」
「……と言ってくれ。それを頼みたい」
小声でレスは言う
「……わかった」
涙を流しているキッカは精一杯笑い
「さようなら、じゃあね」
風でフードが外れて顔が見える
レスいや『 』は満面の笑みで
「あぁさようならだキッカ!」
そう呟き光の粒子となって消える
ただ1人残されたキッカは感情が溢れ出し涙が流れるが手の甲で拭う
「この命無駄にしない」
この世界は残酷に冷酷に時間を進める
死した命がかつて持った多くの感情も思いも努力も忘れ去られた記憶も置いて世界は動き続ける
だが死しても尚意思は完全には消えず生者が死者の意思を継ぎ人々は生きる
決して悲劇を忘れぬように過ちを繰り返さないようにと人々は前に進む
「姉さん?そろそろ行くよ」
「あぁうん、今日はどの依頼?」
「Aランク討伐依頼です!黒龍以降迷い出る魔獣が居ますがその中の一種にAランク魔獣が居たらしいです」
「初めてだね」
生者は進む
「キッカか、依頼か?」
「そ、Aランク依頼」
「……そうか黒龍の件でSランク認定されてたな」
「レーネ調子はどう?」
「ようやくクランで依頼を受けれる程度には収まったよ。リーダー争いは終わってはいないけど」
「レーネ自身は大丈夫?」
「あぁ、もう弔いは終わった。前を向かねばワイス姉さんに殴られてしまう」
「確かに殴りそう」
2人は笑い合い別れる
それぞれが己の道を進む
「話長いです」
「ごめんごめん」
「早く行きましょう」
未来は誰にも分からないけれど人は進む
「うん行こうか」
かつて憎み恨んだ黒龍を素材とした剣を携え彼女は未来を切り拓く
信じた未来を求め命を持って成した者の為にも
災厄殺しの剣姫 代永 並木 @yonanami
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