第15話 百鬼夜行

早朝、レイ達は話し合っていた。


「儀式に使うのはキャバ子ちゃんが作ったこの刀だよ」


ミライはそう言うと、三人の前に真っ赤な鞘のない刀を置いた。


「キャバ子いつの間に!つか真っ赤で禍々しいなこれ...」


「へへ!レイ達との稽古の合間で作った!ミライに頼まれていたからな!因みにこれはキャバ子の血で出来てるんだぞ!大事に使え!」


「本来俺らに弱点はない、血を流し過ぎて再生不能になったら元も子もないがな。だが儀式とは奈落達に血肉を捧げる行為、こいつで俺の心臓を一刺しすれば儀式が始まる、わかるかお前ら?」


レイは唾を飲み込んだ。


「...おう!」


「キャバ子は複雑だ!ロン毛が死ぬのが嫌だけど、嬉しい!」


「キャバ子ちゃんは天子だからね、奈落が死ぬ喜びも当然あるし、仲間が死ぬ悲しみもある。複雑な気持ちだよね」


「...んで、いつ向かうんスか?」


「今すぐだよ」


「え、奈落は夜の方が力が増すってライガー言ってたよな?!」


「ああ、だが今回は奴らが勘づいて動いてる可能性が高い、だから敢えて昼から偵察も兼ねて到着しておくんだ。それにこちらの戦力には天子のキャバ子もいる、天子は朝方に力を増すからな」


「ふーん、そうか」


「じゃあそろそろ行こうか皆。ライガー君、大丈夫かな?」


「はい、問題ありません」


四人は鳥居へ向かい始める。レイとキャバ子はライガーに乗せて貰い空から向かっていた。


「俺思ったんだけどよ、ミライさんは何で移動してんだ?」


「...俺もわからん。ただあの人は俺達奈落よりもっとこう、濃い闇の存在なのはわかる」


「聞いた事ねーのか?何の奈落なのかって」


「あるさ、でも答えてくれなかったんだ」


「あ!俺聞いた事あるぜ!女は秘密が沢山あるってな!」


「フフっ、そんな簡単な話じゃーーー」


その瞬間、何かがライガーの心臓を貫いた。


「グハッ!!!」


ライガーは大量の血を吐いた。どんどん急降下していく。


「?!おいライガー!大丈夫か!!!」


「何だ?!何があったロン毛!!!」


「ッッッ!傷が完治しない...!これは天子の...攻撃か!」


「影縫い」


ライガーの黒い片翼から、ミライが姿を現した。


「?!ミライさ...!」


「ご苦労様、ライガー君」


ミライはそう言い捨てるとライガーを蹴り飛ばした。華奢な身体からは想像も出来ない余力だ。レイとキャバ子も振り落とされて吹っ飛んだ。


「.....!ら、ライガー!!!」


ドシャアアアーッッッ!


「いってぇ...」


「イタタッ...」


レイとキャバ子は砂浜に落ちた。遠くから海に落ちる音が聞こえた。きっとライガーだとレイとキャバ子は走って向かう。近ずいて行くと神磯の鳥居に落ちたと分かった。水面に浮かぶライガーと、そこに立つミライの姿が見える。


「クソッ!何がどうなってんだよ!ライガー!起きろー!!!」


「起きろロン毛ー!!!」


海の果ての方から黒黒しい黒雲が立ち込み、太陽を飲み込んだ。世界の終わりの様な不気味な空気が経ち篭もり始める。


「奈落共よ聞くが良い。我が名は死の悪魔。今此処より世界を滅ぼす者なり。奈落の血肉を喰らい腹を満たすならば、共に世界を滅ぼし、奈落の世界を築かん」


そう言うとミライは血の刀を取り出し、ライガーの心臓に狙いを定める。


「お、おいやめろォ!!!ライガーー!!!」


ズンッッッ!


ライガーの心臓に刀が突き刺さった。血が海に混ざり、海の青を赤く染める。


その瞬間、何処からか地響きの様な男とも女とも区別のつかない唸り声が世界中に響き渡り、大地を激しく揺らした。空は黒雲が完全に飲み込み、雲の隙間からは赤い血の様な光が射し込んでいる。


最悪な形で始まってしまったのだ

百鬼夜行がーーー。


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