第14話 覚悟の丘

レイの様子を見かねたライガーは提案をした。


「レイ、二人で夜の散歩でもしよう」


「...うん」


「疲れてない?2人とも大丈夫?」


「はい、奴ら(エクソシスト)にも警戒しますので、ミライさんも休んでてください」


「うん、行ってらっしゃい」


ガララッ


二人は玄関を出て夜の山を登る事にした。夜の山は不気味だがとても涼しく心地いい。


二人は黙々と山を登り、暫くすると開けた頂上に到着した。そこからは夜の街が一望出来、雲ひとつない夜の空には星々が散りばめられていて、とても綺麗だ。


「...いつもなら飛んで眺めていたが、こうして足を使うのも悪くないな」


「...おう」


ライガーはレイを見兼ねて、ため息をついた。


「なぁレイ、お前は命を懸けてでも守りたいものがあるか?」


「え?.....前は、いたよ。俺を庇って死んじまったけどさ。ポンタっていう犬だよ。今でも大好きな家族なんだ」


「...そうか。俺も弟がいたんだ。だがお前と同じくらいの歳で死んじまった」


「病気か何かか?」


「いや、強盗だよ。俺ん家は昔からある神様を祀ってる金持ちの家系でな。その金に目が眩んだ奴の仕業さ」


「先輩はどうしてたんだよ?」


「ライガーでいい。俺も襲われたが、俺は祀ってた神様に魅入られて助かったんだ。俺以外は親も皆死んだよ」


「...ならライガーが奈落なのはどうしてだ?神様って事は天子なんじゃねーのか?」


「天子と言えど、宿主の魂が奈落に落ちれば奈落に近いものになる」


「そうなのか。てかライガー、お前は何に憑かれてるんだ?」


「.....俺は八咫烏さ、俺はこの力を以て、一番近くにいた弟の蘇生を試みたよ。だが八咫烏は人を導く力はあれど、甦らせる力はなかった。その時思ったんだ。例えこの身に変えようとも、世界を正しく導いてやるってな」


強い風が吹き抜けていった。強風に煽られているライガーの表情は真剣だった。


「ライガー...でも俺は、お前に死んで欲しくないよ」


「レイ、ミライさんに教わったろ?大義には必要悪と犠牲が付き物だ。俺は俺の命と引き換えにこの世を地獄絵図に染めるんだぜ?多くの善人も死ぬ。悔やまれる道理はないのさ」


レイは拳を強く握り叫んだ。


「でも...!家族だ...!」


「...」


「だってそうだろ?!喧嘩もしたし、楽しく稽古もしたし、同じ飯を食って、一緒に暮らした!俺はお前が大事だ!」


「レイ...俺も最初はお前をバカでどうしようもない奴と思ってたけど、今はお前に弟を重ねる時すらあるよ...でもな、家族でさえ、譲れない覚悟なんだ。止めないでくれないか」


「...でも」


「...お前に託したい事があるんだ。聞いてくれるか?」


「...何だ?」


「必ず、お前がブレイクマンになってくれ」


「!でも、どうやって?まず存在するかもわからねー伝承なんだろ?!」


「...必ずいるよ、ブレイクマンは。俺は信じてる、そして、お前がこの国を、、、世界を正しく導いてくれると願ってる」


「待ってくれよ!何で俺なんだよ!何もしらねーのに...」


「お前は馬鹿じゃない。経験が無いだけだ。だから、その身で、その心で、見て欲しい。俺と弟がみれなかった、正しい世界を、、、」


「ライガー、、、」


「頼んだぜ、レイ」


そう言うとライガーは優しく微笑んだ。優しい表情だが、その奥には強い決意をかんじさせる。


「............任せろ!」


レイは涙を零しながら力強く応え、二人は固く握手をした。


一方その頃、いわき市の某病院ではーーー


「......ここは、、、」


「意識が戻って良かったよぉ、体は完治してるけど、気分はどうだい?」


「クドウ先輩...はい、心臓を撃たれたはずですが...大丈夫です...それより面目ありません。私とした事が、、、」


「君の心臓はねぇ、今は機械式になったからねぇ、以前より爆発的に強くなれたかもよぉ。だからこの失態は今から挽回すれば良いさぁ」


「機械式、ですか...。はい!精進します!あ、奈落はどうなりましたか?」


「あぁ、上手く逃げられたねぇ。東京に誘導は失敗、あの人に怒られちゃうけどぉ、まぁ居場所はある程度わかってるんだぁ」


「え?!どうやって絞り込んだんです?!」


「んん?勘だよぉ、アレならきっと、もう時期に百鬼夜行を決行しようとするだろうからねぇ」


「クドウ先輩、また隠し事ですね。まぁ良いですけど、、、百鬼夜行となると幾つか場所が絞れるな...」


「そこまで遠くには行けないだろうからぁ、神磯の鳥居(かみいそのとりい)だろうねぇ」


「そこまで分かってるなら早速行きましょう!」


「良いのかい?この任務ぅ、か〜な〜りぃ、危険だよぉ?」


「...私にはもう家族もいません。元より死ぬ覚悟は出来ていますよ」


シズクはマグマの様に熱い感情を抱いている様子だ。


「ハハハッ、聞くまでもなかったねぇ、ならぁ、行こうか、シズク君」


「はい!」

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