第022話 追跡者
在福岡米国領事館の一室。
ホルダー、スケリーの2人がアストマ本部と「異星人が海辺の滑り台で遊ぶ事件」についてビデオ会議を行ってる、まさにその時、監視衛星から異星人活動信号検知を知らせる通知が来た。
ビデオ会議の途中で即座にアラートが出され、2人にはその場で緊急調査の指示が出た。
もちろん、ビデオ会議はお開きとなった。
1分後、2人は車に乗り込み領事館のゲートを出ようとしていた。
領事館周辺を24時間警備している日本人警察官の脇を通り抜け、信号発信源の住宅地へ向かった。
早朝と違い、日曜日の午後は市街地の交通量も多く、思うように車が進まない。
目的地1km手前の脇山口交差点に差し掛かった時、スケリーの手元の端末が監視衛星から異星人活動信号検知を知らせた。
「また微弱な信号を検知したわ。」
「くそっ、せっかく連続で信号検知できたというのに、現地まであと5分はかかる。」
「これは本当に微弱ね。やはりギリギリ検知できた感じで、位置は同じ住宅街よ。」
5分後、目的地である川沿いの住宅街に到着した。
「ここまでは昨日の朝と同じだ。短時間に連続して微弱信号を拾った事だけは違っているが。」
衛星データではここが発信源となっている。しかし、測定誤差は最大で数百メートルあるので、ここで手詰まりだ。
「みろよ、水鳥がたくさん浮かんでいる。」
「野生の鴨ね。種類までは知らないけれど。」
室見川との合流点に近いこの場所は河口に近い汽水域となっており、水鳥も多い。
「どうするの?」
「野鳥でも見ながら、3回目の信号を待つか。」
あいにくの曇天であるが、鴨を見ながらしばらく路上に止めていた。
すぐ脇を小型車が通り抜け、目の前の民家のカーポートに入って行った。
車から中年女性が降り立ち、買い物袋を抱えて家に入るのが見えた。
女性は2人を怪訝そうに見ながら家の中に入った。
「このままここにいたら通報されちゃうわよ。もう移動したら?」
「衛星の検知座標はここなんだ。」
「知ってるわよ。」
「1km手前だから特定できなかったが、今ここだったらもっと絞り込めるはずだ。」
「分かってるわ。でも、いつまでここで張り込むつもりなの。」
「それもそうだな。」
彼は周囲の住宅を見渡した。近辺を見渡せる高層マンションが何軒も見える。
「長期監視拠点が必要だ。この一帯を見渡せるマンションを探そう。」
「知り合いに不動産屋がいたよな。」
「犬飼不動産の田中さんね。」
「そう、田中さんだ。適当な物件を手配してくれ。本部には私から申請しておく。」
「明日、午前中のうちに行っておくわ。」
「マンションを手配したら当面は缶詰で監視業務ね。」
「久々だから監視装備を総点検しておいてくれ。」
「分かったわ。」
「そう言えば、田中さんの自宅、この辺だって言っていた気がするわ。」
「おい、そこの家、さっき子供たちが窓から覗いていた家、表札が『田中』になってるぞ。そこじゃないのか?」
「まさかね。まあ可能性はあるけど、違うでしょう。田中が何軒あると思っているの。」
「それもそうか。」
その後30分程度で追跡調査は断念し、一帯を何周か回って領事館に戻った。
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