第006話 家族会議
朝食の時、「後で大事な話をしたい」って家族に話したら、各自いろいろな用事を片付けた後で家族会議を開くことになった。
僕がリビングに行ったら僕以外はみんなソファーに座って待っていた。
影ッちとのファースト・コンタクトについて説明した。
地球人保護の話をした。
家族全員「あんた何言ってんの?」って感じになる。
リビングに空間プラグを出して展望室に招待した。
みんな事態を瞬時に理解した。SF好きの家族で良かった。
地球人保護の意義、なぜ僕が候補者に選ばれたのか、僕が依頼を受けた理由などを説明した。
お母さんには第一声からがっつり叱られた。
実は、お母さんだけは「SF好き」ってほどではない。ただ、こんな家族なので一般人よりも知識はあるというだけ。だから、冷静な立場で叱ってくれるんだろう。
お父さんの反応は対照的だ。展望室に入った直後から興奮しっぱなしさ。娘の心配なんて全くしていなんじゃないかな、と疑いたくなるほどはしゃいでる。お母さんと温度差が激しくて今後の夫婦関係を心配するレベル。
ちょっと落ち着いたら、やはりお父さんにも叱られたよ。
両親とも全く納得しない。
そうだよね、普通の親ならそうなるよね。うん、分かってた。本当に申し訳ない。
お父さんは僕の意志を何度か確かめた後で「後悔しないよう、思った通りやって見なさい。」って言ってくれたよ。
そこからしばらくはお父さんとお母さんの話が続いた。
お父さんの説得をあきらめたのか、その後は僕がひたすらお母さんの説教を聞く時間になった。家族会議のはずだったんだけど、おかしいな。
「そんなの、断りなさい」
「もう契約しちゃったから断れないよ。」
「保護者が承認しない未成年との契約は無効なんだから、その契約も無効でしょう。」
「それはそうなんだけどさ、学校でも習ったから僕も知っているよ。でも、相手は宇宙人だからね。そんなの関係ないよ。」
「じゃあ、昨日の今日なんだから、クーリングオフはできるでしょう。」
「クーリングオフも授業で習ったけどさ、それもやっぱり宇宙人には無いと思うよ。」
「仮にできるとしても、家族4人まとめて記憶を消されちゃうんじゃないかな。」
「記憶を消す」操作について簡単に説明した。
「神経編集」と呼ばれる思考操作技術を用いて記憶操作を行い、ファースト・コンタクトにさかのぼって関連する記憶を選択的に消去する。
脳神経系のシナプス結合のレベルで制御されるだけではなく、影響の及ぶ腹腔内の神経系やホルモン分泌なども調整することで、他に悪影響は出ない。
影ッちに聞いておいた知識の受け売りを講釈した。
しかし、お母さんはどれだけ僕のことを心配しているか説明し出した。
お父さんは黙って行く末を見守っている感じになった。
妹のひかりは全く出る幕が無く、ただ話を聞いていただけだったけれど、途中で一言「いいなあ。」と言ったために、お母さんのお説教のターゲットが僕からひかりに移った。
しばらく説教されたひかりがしゅんとなったところでターゲットは僕に戻った。
同じ話を何度も繰り返した。
午前中には結論が出なかった。
昼ご飯を挟んだ。
昼過ぎから、またお説教が再開された。
家族会議の必要はない、ということで、ひまりは午後から部屋で宿題をやっている。
午後もまた、同じ話を繰り返した。
朝から通算で5時間くらいは話し合ったかな。15時過ぎにはお母さんも折れた。
「危険なことはしない」
「学校はちゃんと行く」
そんな感じの約束を両親にさせられた上で、当面は様子を見ることになった。
よくOKしたよね。平均的な親だったら絶対に許さないだろうな。うちの親はちょっと変わり者なんだ。この親にしてこの子あり、って自分で言うのもおかしいか。
長い家族会議は、いや、途中から単なる説教タイムだったけれど、夕ご飯の前には終わった。
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