第227話 再びの挑戦

…4回戦は熾烈を極めた。

同格…よりは格上。

平均身長は10cm高く攻防共に隙の無いチーム。

愛莉先輩の解説もそれに尽きた。


色々アクシデントもあったけど承たちのおかげで気が逸れたって言うか切り替えが出来た。

二戦目でこのあとの試合が無いって心で、明日さえも度外視して全部出し切る勢いで飛ばす俺たち。


俺たちはチームカラーの走力戦で早いチェック、オールコートでマンツーマンで必死に食らいつく。

向こうもパワーでゴール下を捩じ込む!

拮抗してた試合が動いたのは第三Q、キャプテンの個人技だった。


183cmだけど190cmの選手に当たり負けしない、むしろ競り勝つキャプテンも疲労は相当な物だっただろう。

そして要所で外さない勝負強さ。

このチームはキャプテンのチームだ。

キャプテンが1番しんどいところで踏ん張ってその背中をいつも俺たちは追いかけている…。


…それでいいのか?

良いわけない!


『康司!キャプテンのフォロー!』


俺も声を出す!

パスを散らして、キャプテンさえも囮で使って!

熊田も鷲尾も限界!

変わって入った三年生も必死の形相で食らいつく!


せめて!


俺も!パスだけじゃない!

ドリブルで突っかけて!ミドルシュート打って!

早い強いギリギリのパスを送り続ける!


第四Q1ゴール差で先行する俺たちを強豪校のプレッシャーが容赦なく責め立てる!

それでも…



キャプテン『好きな娘が見てると思えばまだやれんだろ!』

※率直な感想です。



『『『おう!!』』』


俺たちは強豪校からの追い上げをわずか2点差で凌ぎきり、82-80で辛くも勝利を収めた…!


言葉も無い俺たち。

疲労と勝ったって安堵感が緊張の糸を切ってしまい、まったく動けない。

…タフな試合だった…。

まったく試合前の雑事を思い出す暇も無いほどの目まぐるしい攻防と緊張感。

良い試合だった…これで明日もここに来れる…。

間違いなくMVPはキャプテン。

最後はキャプテンの個人技とメンタルで競り勝った試合だった。


マネ子とマネ美が戻ってくる。

2人とも硬い表情。


マネ美『…予想の通り…明日は…高嶺農業です…。』


組み合わせ見た時から皆んな思っていた。

ウインターカップで惨敗した相手、半年前の屈辱を思い出すと背筋が凍る。

県内で一二を争うスポーツ高にして全国大会の常連校それが高嶺農業。

ウインターカップの結果は44-102…あの時は部が分解しそうになった…。

※81話 一つの結実 参照

https://kakuyomu.jp/works/16817330663085191362/episodes/16817330669556857826


ゴクリ。

マネ子の言葉に皆息を呑む。

…惨敗だった。ベスト8になったけど苦しい思い出になったあの日。

今回もそう、今日の勝ちでベスト8に進出した。

明日勝てれば決勝リーグ…相手は冬と同じ高嶺農業。

つい半年前、代が変わってない以上メンバーは一年の顔ぶれ以外変わりはないわけで。


言いにくそうに、


マネ子『…相手は去年もベスト8の…先日合同練習した…。』


先日の3校互いに行き来した3日の合同練習の相手…うちとほぼ同格の高校。

かろうじて勝ち星先行したが…。


マネ子『120-52…。高嶺農業の圧勝でした。』



120-52?!


俺たちが接戦だった相手に?


マネ美はわからないんだろう。

まだ一年のマネだし。


マネ美『ねー?強かったね?

でも勝つんしょ?愛莉先輩!今日もビシッと皆んなに必勝法教えてあげてくださいよう?』


愛莉『…うん、見てからね?

まだわかんないし。』


監督『じゃ!また!録画見とけよ!

今日はここで

解散!明日もハードだぞ、ゆっくり休め!』


監督の明るい声が事態の深刻さを物語っていた。


☆ ☆ ☆

帰り道。

承と紅緒さんに応援のお礼を言って会場で別れる。

承は紅緒さんを送って帰るらしい。ターミナル駅までこの距離なのにバス?

紅緒さん身体弱いんだっけ…。


さて、俺たち。

ずっと考え込む愛莉先輩に付き添うマネ子とマネ美。

キャプテンは陽気に声かけてまわってる。


キャプテン『宏介、康司今日はマッサージして飯いっぱい食って早く寝ろよ?』


キャプテンは嬉しそうに笑ってる。

よく笑えるな…。皆で話し合ってまた頑張ろう!って事にはなったがあの敗戦は部が分解してしまう可能性があるほどの衝撃で…。

このまま頑張っていくか、エンジョイ勢としての部活か。

俺たちは頑張って行く事を選んで練習も厳しくしてレベルアップはした。

…したけど…怖い。

あんなに頑張ったのに…また惨敗したら…そんな事を思っていたのにキャプテンは陽気に笑っている。


キャプテン『だって!今日が引退じゃ無いんだぜ?

あれだけの参加高校がいまやたった8校その中に残れた…。

負けたチームの三年は皆んな引退して行った。

…それを思えば明日も皆んなとバスケが出来る…こんなに嬉しい事は無い。』


気づけば皆んなキャプテンの話を聞いていた。

キャプテンは気付かずに大声で俺と康司に語りかける。


キャプテン『だってそうだろ?

負けて引退した俺同じ学年の生徒はきっと羨ましいと思うぜ?

いいな、明日決勝リーグ賭けて戦えるんだ!

冬のリベンジの機会があるんだ?って。

リベンジ誓って当たらずに終わる可能性だってあったんだ!ラッキー!』


笑ってるけど…キャプテンの目は真剣で。

あぁ、めっちゃ格好良い。

俺の先輩こんな良い漢だったんだ!


『…そうっすよね、どれだけ力ついたか試せる。』


キャプテンはニヤッと笑って、


キャプテン『あの日、惨敗したあの日、宏介いい事言ってたじゃん?

気持ちで負けるな!と試合の得点なんて数合わせ!試合終了まで死に物狂いで点を取り合うもんでしょ!ってやつ。

…本当そう思う…死に物狂いで…明日は点を取りに行く…!』


笑ってたキャプテンの笑顔が鬼気迫る迫力…。

キャプテンが居れば…明日は勝負になるのかも…俺にそんな風に思わせるほどの説得力と頼もしさがあった。

うちの中心はキャプテン。

内藤拓実は間違いないうちのエースで精神的支柱。


愛莉『…。』


愛莉先輩はずーっと考え事していて全然キャプテンの話を聞いていなかった…。

※良いシーンでしたが愛莉嬢は忙しいようでした(泣)


☆ ☆ ☆

一方その頃。

試合後の3人。


皐月『…宏介格好良い♡

さすが私の彼氏♡』


日奈子『…はいはい、ダメですよ?

接触禁止なんでショ?』


ゆかり『私たちをまいて会いに行くなんて…!』


皐月『はいはい、ごめん!』


午前の3回戦、宏介の活躍に胸躍った皐月は2人をまいて宏介に会いに行って復縁の意思も伝えた!

…まあ断られたんだけど…。

2人には挨拶だけ!復縁匂わせただけ!と伝えていた。

2人は疑いの目で見てるけど。


皐月『それより!立花の彼女!ムカつく!』

※紅緒さんまたそう名乗りましたw


ゆかり『…紅緒さんは…まっすぐだからね…。』


午後の試合直前、立花承の彼女(自称)が皐月に話があるってやって来て…5分もしないでケンカ別れしたのだった。


皐月『東光程度で!』



☆ ☆ ☆

東光高校は偏差値50くらい、北翔高校は65くらい(去年調べ)

※紅緒さんは東光で学年一位、本当は公立最難関の県高(71くらい)行けたけど病弱で近い東光へ進学した経緯。

例、内藤くんと田中くんは県高が第一志望で落ちて私立の滑り止めの北翔に進学した経緯。

☆ ☆ ☆


皐月『まじむかついたわ!

宏介も復縁即OKしなかったし!』

※検討せず即拒否だったけどそれは言えないプライドの高さ。


皐月は続ける、


皐月『この私が復縁してあげるって言ってるんだから…過去の事は水に流す度量と自分が悪いって言う心の広さが男には欲しいよね?』


ふて腐れる皐月を呆れた目で見てる日奈子は聞こえるように、


日奈子『ジェンダーな時代にそういう事ばっかり言ってるから女性が叩かれるんでスヨ。

…ふてくされるって…スマホで変換すると…不貞腐れるって出るデスね?

不貞してといて腐った態度ってコト?

日本語奥が深いヨネ…。』


日奈子は驚き感心していた。


☆ ☆ ☆


今日の昼頃不貞腐れるって字面を見て最後のくだり足した(笑)

きっと昔、不貞した側が問い詰められて、詰問されて最後逆ギレしてむすーって態度でそれが語源なんじゃないか?って想像して誰かに話したくなっちゃった。

意見求むw

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