第228話 一年生の事情

愛莉『…その…うち寄って一緒に分析する?』


愛莉先輩は考え事しながら俺に提案…して自分が何言ってるか気付いて真っ赤になった!


愛莉『あ?!でも!その…お手伝いさんのお姉さんは居るよ?』


噂だと差堀先輩を敵のように追い回す怖いお姉さん…!

…でも俺は先入観無しでまず試合の動画を見たかった。

一回見た上で皆や愛莉先輩の意見聞きたい。

俺はその旨伝える。

今日は1人で。


愛莉先輩は頷くと仕事出来るお姉ちゃんモードになってすぐ見よう!って言うとスマホですぐに車を呼び家へ帰って行った。

皆も寄り道せずに今日は帰ろう!ってことになった。


同じ方向の後輩、熊田と鷲尾は隣の市の出身。

俺の新川駅から更に30分位かかるらしい。


一年はまだ高嶺農業の怖さを知らないので若干能天気だった。

トラウマになるよ?でもそんなのは今日の試合映像見ればわかるし、脅す意味も無い。自分がマッチアップするかも知れない相手よく見ておけよ?とだけ話しする。


鷲尾が俺に話しかけてくる。


鷲尾『宏介さん、今日鳳さん来てましたよね?』


鳳?鳳日奈子?


鷲尾は中学時代に全国大会に出場したこともあるPGで一年で試合にも出て一年トップの実力者。最初は愛莉先輩の指導に疑問を持ってたけど愛莉先輩の理論と熱意と美貌にすっかり負けてすっかり愛莉教信者になってる男。

理想的なPGで間違いなく去年の俺より上の楽しみな後輩。

…その後輩が…。


『…あぁ来てたね?

あいつしょっちゅう2年の教室出入りしてるよ?』


熊田は驚いて、


熊田『鳳さんすっごい可愛いじゃ無いですか?

一年男子間ではすっごい人気なんす。ぼっちだけど。』


熊田は2m近い大男!待望の大型センターで今大会でも出場している期待の、文字通り大型新人!気は優しくて力持ちを体現してる男だね。

こいつも最初は抵抗あったらしいけど今はすっかり愛莉教の狂信者。


『…日奈子なんでぼっちなん?』


日奈子って呼んでくだサイ!ってうるさいから最近は日奈子って呼んでるけど…。稀有な怖く無い女の子なんだよね?望っぽいからかな?

そうそう、その日奈子。

なんで皐月やゆかりさんと?そこも疑問。あいつらに言われて俺に近づいた?

まったくわかんない。


鷲尾が日奈子と同じクラスだと言う。

鷲尾はその頃の様子を語り出した。


☆ ☆ ☆

鷲尾の見た日奈子のはなし。  side鷲尾くん


最初の自己紹介で鳳日奈子さんは流暢な中国語(まったくわかんない)で話し初めて、


クラス有力女子『何言ってるかわかんないしー!あんたのあだ名は中国人なー!』


そのツッコミに、

どっ!!!ってクラスは大爆笑。

あれは良くなかったと思います…。


鳳さんは真っ赤になりながら日本語でクセある語尾で趣味は三国志って言ってまた女子に笑われたんです。

そのクラスの有力女子はクラスの一軍女子に君臨してて鳳さんは女子に全く友達が出来ない状態。


外に跳ねたちょっと癖っ毛な茶髪のクリっとした大きな目によく変わる表情豊かな笑顔が間違いなく学年屈指の可愛さ!

…それが女子には敬遠されて、一軍女子も全然媚びない鳳さんを目の敵にしてたんす。


でも男子人気はあって男子は結構話しかけて来てたみたいでした。

俺見た時は、


チャラ男『三国志好きなんだ?俺も趙雲とか好きー!』


日奈子『袁紹配下の郭図の話しまショ?』


チャラ男『は?』


日奈子『出ると負け軍師!郭図のはなし!』


チャラ男『はあ?』


こんな奴ばっかで鳳さんは辟易してたんです…。

俺も三国志そんな詳しく無いんで遠くから見てるだけだったんすけど、

直後に、


オタク男子『郭図、逢紀、審配、許攸あたりは一緒にされがちだけど審配は降伏せずに死をえらんだりちょっと違うよね?

田豊や沮授を重用して郭嘉や荀彧を手放さなければねぇ?』


日奈子『おお?!あなたイケる口デスね?』


こうして鳳さんは念願の三国志の話や軍師の話が出来る友人を手に入れた!

鳳さんは休み時間度にオタク男子と笑顔で語り合って楽しそうでした。


…かのように見えたが…。


オタク男子『日奈たん…本当に三国志の話と軍師の話だけ?』


日奈子『日奈たんって呼ばないでくだサイ。

曹操!違った!そうそう!その話しまショ?』


段々オタク男子と鳳さんの認識がズレて来て…。


ある日、


オタク『日奈たんはぼっち!俺の彼女にしてあげた!!』


日奈子『…。』


ってオタク友達に自慢しているところ本人に聞かれて…!


日奈子『…はは…仲良くしてくれてありがとうございま…シタ。

もう結構death。』


オタク男子『日奈たん?!』


日奈子『…。』



☆ ☆ ☆

鷲尾『それから鳳さんはクラスで無表情に孤立してて?

休み時間もフラって居なくて。

そうっすか二年生の教室に…。』


『…あいつ…あんなおバカなキャラなのに…。』


鷲尾『おバカ?成績めっちゃ良いですよ?鳳さん。』


なんかわかるかも。

ぼっちでやっと出来た異性の友人!って思ってた男が自分を彼女だって吹聴してて自分の話に実は興味持ってない。

…男性不信っていうか…なんか怖くて敬遠しちゃうよな。

俺に懐いてたのそこか?

三国志、軍師の話が好きでなおかつ日奈子を異性として見てない俺は…安心するのかも知れない。

…俺も同じで異性として見られずに安心している…。


鷲尾『なんで鳳さんが友達と一緒なの見てなんか良かったなぁって気持ちなんす。』


熊田『…そうだねぇ。』


鷲尾『だれかクラスに友達居れば楽なんでしょうけどね。』


クラスに友達1人も居ないってゾッとする。

昔承がその状態で大変なことになってたもん。


誰か日奈子の友だちになってやってよ!

出来れば同学年の女子!


鷲尾『マネ美とか良いと思うんですけど…あいつ人に興味無いし。』


マネ美も同じクラスなんだ?

一瞬明日の試合を忘れてしまうような後輩の話だった。

後で意見交換する約束して俺は新川駅で下車する。

…疲れた…まずは回復!

俺は帰って回復に専念。

一息付いてから高嶺農業の試合を再生する。

そこには冬より尚一層の進化を遂げた高嶺農業の脅威が余すところなく記録されていた…。




☆ ☆ ☆

書いてて思った。

北翔高校良い奴か悪い奴かイヤな奴しか居ないのか(笑)

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る