閑話 試合前のコンセントレーション【side三島裕太】

ダメ男絡みなのでこっちに来ましたw

同日の望の話し。


☆ ☆ ☆

全中の県予選が各地で行われている。

俺もたちも中学最後のサッカーの大会…

新川中は2回戦で敗れた…

がむしゃらに頑張ったけど…


『(もうちょっとこいつら使えたら…!)』


団体競技の常だけど俺が良くても他がダメなら勝てない。

それを痛感する。

※自然にクズムーブ。


すぐ横のテニスコートが女子の県予選会場と聞いてたから俺は中学校へ戻る部員たちから抜け出して望ちゃんの試合を覗きに行ったんだ…。


…掲示板を見ると望ちゃん一回戦は勝ってる!

まあ県有力選手だし当然!

2回戦…もうすぐか。

まだ会場入りしてないみたい…近くに居るのかな?


辺りを探すとすぐに見つけた!

試合会場横の芝生のスペース。


…そこには天女のような…望ちゃんの優美な姿があった…。


薄い紫のテニスウェア…。

短い裾を翻し、ゆっくりゆったり身体を旋回させる。


腕を伸ばしたり縮めたり舞うような、身体の可動部分を確かめるような流れるような優雅な身体捌き。

…それを芝生の足元が平でないところで目を瞑ったまま行ってる…!


詳しくは無いがまるでひとりで社交ダンスでも踊っているような演舞でもしているような綺麗な動きに通行人も足を止めて見惚れる者も多い。


『(これが新川中の立花望だ!)』


肉食の獣みたいに優美だけどワイルド。

気ままで陽気で綺麗で可愛い新川中を代表する女の子!

…そしていつかは俺が手に入れる未来の彼女!


薄い紫ウェアは裾が短く翻るたびに新川中の男子が皆んな憧れる魅惑の脚線美が顕になる!


これ!他の奴に見せたく無い!


俺は街灯に惹きつけられる蝶のようにフラフラとその美しき獣に近づいた近付いてしまった…!


あと3歩…ってとこで異変に気づく!

ブワって汗が…!


望ちゃんが優雅に回転しながら…裏拳?!


『おうふ!』


顎を強かに打たれてがくんと左膝をつく!

自分の意思では無い完全なダウン?!



『ひっ?!』


望ちゃんがうっすら目を開けながら猛然と突っ込んでくる?!


望ちゃん?!


望ちゃんは俺の立てた右膝に左足を乗せると…!


可愛い右膝を俺の顎に…!


『(太ももは凶器ってほんとだぁ…。)』


通行人『決まったっ!シャイニングウイザード!!!』

   『本当に決まるとこ初めて見たわ!』


※ プロレスラー・武藤敬司さんが考案し開発した蹴り技の必殺技。

片膝立ちした相手の脚などを踏み台にして仕掛ける、飛び膝蹴りの一種。



そんな声が聞こえた…。



…。


…。


はっ!

後頭部の痛さに目が覚める!

痛った!


望『気づいた?立てる?ごめんね?』


望ちゃんの顔が近い…。

心配半分…困った半分…?


膝枕じゃない?普通こういう場面って膝枕じゃ無い?

俺は石を枕に仰向けに倒れていた。

顎はそんなに痛く無い。

望ちゃんはしゃがんで俺を覗き込んでいた。



『…あたしも悪かったけど…なんで近付いた?』

※一方的に暴力振るったけど責任は五分五分を主張する望(笑)


俺はドキマギしながら、


『…スカートの裾が翻って…他の人に見せたくなかったから…。』


君の無防備な姿を他人に見せたく無い!ってアピール!

君を守りたい!って届け!

バッてスカートの裾抑えて真っ赤になる望ちゃんを想像してたけど…

目を細めて訝しげに、


望『ここ女子テニスの会場だしほぼ女子だから気にしないでよくない?

それより三島くんの方が女子会場でフラフラ女子に近づく方が色々ヤバいと思うけどな?』



そう言われて寝転んだまま辺りを見渡すと女子女子女子!

これはやばい!


『よっと。』


しゃがんでた望ちゃんが立ち上がる。

ローアングルから望ちゃんのスカートの中が見えそうで見えない!逆光!!


『ほら。』


望ちゃんが手を差し出す、

きゅ。

俺はその手に捕まる!


小さい!柔らかい!暖かい!

憧れの望ちゃんと初めて手を繋いだ!


??『望?貴女何してんの?』

??『望ちゃん?なんかすごい動きしてたよね?』


望ちゃんは嬉しそうに声のトーンを上げて話しかけて来たふたりに手を振った!



あ?!


ごずん!


望ちゃんが手を離したから起こしかけた体は落下する!

たった30cmだけど無警戒だったから俺は石に後頭部をぶつけて一瞬意識を失った!



はっ!


わずかだけど意識を失った俺はさっきと違う感触に気付く!


『(膝枕…されてる?!)』



頭の下の硬い感触。

…アスリートだもんなプニプニのやわやわじゃなくって張りのある弾力性に富んだ太ももで当然。


『(…これは思わぬ役得だな…痛かったけど。)』


すぐ目を覚ますのは勿体ない…。

少し感触を楽しんで…。

思ったより硬い…分厚い…さすが望ちゃん!


意識は覚醒してるし無防備にぶつけて意識を手放しただけで後頭部も痛く無い!


さっきの飛び膝蹴りも威力セーブしたんだろうし、石に落としたのもわざとじゃ無いし結果オーライ!


芹『…だからね…。』


相川さんと話してるのかな…?


芹『望ちゃんは勝つよ。』


??


望ちゃんじゃない?!

…試合直前だったっけ…?

惜しい、惜しすぎる!

でもまぁ…相川さんも実は結構な男子人気のある地味美人系の女の子!

役得役得!

惜しいけどそろそろ目を覚さないと病院とか大げさなことになっちゃう!


『…うーん。』


俺はわざとらしく無いように声を発しつつ…うっすら目を開ける…。

相川さん膝枕ごちそうさま。

好きな娘の親友にフォロー膝枕ありがとう、でも俺心に決めた娘いるから!ごめんね!って心の中で謝り、ゆっくり目を開けると、




鈴木『大丈夫か?裕太。』



『お前かよ!』


マッチョの鈴木!

…野球場もすぐ裏だったっけ?


芹『三島くんひどい!鈴木くんはすぐそこの野球場から駆けつけて石に寝かされた三島くんを『忍びない』って膝枕してくれたんだよ!』

※久しぶりにいっぱい鈴木くんと話せてキラキラ乙女モード芹。



友人の固くてごつい太ももにときめいたかと思ったらなんかクラクラしてきた…!

鈴木は心配そうに、


鈴木『…裕太無理するな、肩掴まれ。』


芹『…鈴木くん…友達思いで漢らしいね…♪』


相川さんは鈴木を熱のこもった視線で見ている…。

なんか納得いかない。

…望ちゃんは2回戦圧勝で帰ってきた…。

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