第209話 幼馴染とは?

永瀬『ママに何言われた?』


いつものフレンドリーで人当たりの良い永瀬綾では決してない、神経質そうな落ち着かない余裕のない雰囲気。

目はギラギラして少々怖い…!

永瀬ママが何か都合悪い事を俺に言ったって思っちゃったのかな?


『…いや、別に。

永瀬さんの学校での様子を聞かれて、永瀬さんは成績優秀で部活も頑張って生徒会の仕事もバリバリこなす頑張り屋さんですって答えたよ。』


永瀬さんは少し照れながら、


永瀬『…褒めすぎ!

なんか恥ずかしいよ…。』


えへへ…って満更で無い様子。

…あとは…



『あと、一ノ瀬先輩の話し…。』

永瀬『何を言われた?!』


食い気味にずずい!って距離を詰める永瀬さんに俺は一歩下がってしまう。

こわ!


『…家が近所で子供の頃から幼なじみで…無防備なとこあって変な男の子に好かれるって…。』


俺は思わず、以前に一ノ瀬会長から聞いた事を口に出す。

116話 一ノ瀬先輩の誘い 参照

https://kakuyomu.jp/works/16817330663085191362/episodes/16818023213486947084



…少しだけショックだったのかもしれない。

永瀬さんは会長と噂出る度に違う!って否定していた。

会ってすぐ、5月位には否定して昔同中で、家近所で…って聞いてて。

だから高校入学してしばらくは永瀬さんが『司くん!司くん!』ってママに言ってた事は全然矛盾していない…なんとなくやっぱりかぁって気持ちもある。

…やっぱり少しショックだったんだな。



永瀬さんは少し頬を膨らませて、


『…そうなんだ、一ノ瀬先輩は昔から家が近所で…でも別に!何も無いよ!


それより!変な男に好かれるってー!』


…俺はなんとなく高校入学後も家でママに司くん!司くん!って言ってたって事を指摘出来なかった。


永瀬『戻ろ♪』


機嫌よさそうにトレードマークのポニーテールをぴょこぴょこ揺らして永瀬さんは部屋に戻る。


…でも、俺の中で高校入学しばらくは一ノ瀬会長の話しばかりしていた事、多分ふたり互いの家を行き来していた事。

だからふたりは親密な幼馴染。

そしてそれを永瀬さんは秘密にしていた事が引っかかってしょうがなかった。

…いや、俺が別に口出す事でも無ければなんか言う立場じゃ無いのは重々承知しているけど…。



勉強会はその後もつつがなく進行していく。

浩と高橋さんは和やかに談笑しながら、康司は黙々と…たまに二宮さんに聞きながら。

俺は田中くんと永瀬さんに挟まれながら…。


夕方になり、ラストスパートの時間。

俺の引っかかった古文の解釈について討論始めるふたり…。


田中『宏介くん!ここはね!』


永瀬『…先輩に借りたノートだとここはね?』


先輩って一ノ瀬先輩かな?

頭をよぎるのはさっきの話し。

さっきママに何聞かれた?って時に素直に聞いておけば良かったな。

俺は少しモヤっとしながら勉強会を終えて家路に着く。


永瀬『お疲れ様!また来てね♪』


見送ってくれた永瀬さんに手を振り、ターミナル駅で康司や浩たちとも別れて俺と田中くんは新川駅へ向かう。


田中『まぁ色々あったけど有意義な勉強会だったね。』


『…そうだね。』


田中『…宏介くんなんか引っかかってるの?』


『…うん、大した事じゃ無いんだ。

…田中くん、幼馴染って居る?』


田中くんは居ない、なに?また別ヒロイン?って食いついた。


『子供の頃から一緒で思い出沢山あって兄みたいに慕ってて、信頼と尊敬があって後を追って高校へ入学して来る…。

そりゃ可愛いよね?』



ボソボソって俺はひとり呟く、

田中くんは不思議そうな顔で、




田中『あぁ…望ちゃんのこと?』


『なぜ?』


即聞き返す。

…客観的に見たら…望もそう見える?

…いや…無い無い。兄みたいには思われてるだろうけどね。


田中くんはふふって笑いながら、小5からしか知らないけどさ?って前置きして、


田中『望ちゃん綺麗になったよね。

髪も伸ばして女の子らしくなってきて。

初めて会った時は猛獣でw承くんが抑えきれなくてw』


ああ、そうだね。


田中『もう来年には高校生だけど、いまだに会えば元気よく挨拶してくれておやつあげると嬉しそうに笑ってその場で食べ始めて…僕でもかわいいって思うんだから宏介くんなんて目に入れても痛くないほど可愛いでしょ?』


『…目に入れても痛くないかはわからないけど…目潰しならされたことある。』


田中『ぷふ!何それ?詳しく!』



☆ ☆ ☆

承、宏介中2、望小6、ひーちゃん2歳。


日曜日のある日。


ひー『…。』


俺は立花三兄妹と立花家でまったり。

ひーちゃんには録画した天空の城ラピュ⚪︎⚪︎ピュタを見せながら承と小声で話してた。


望『そろそろ!大詰め!

来るよ!滅びの言葉!

なんで目が見えなくなるのかな?』


光が目を直撃したんだよ?

俺はそう答える。

大体みんな何度か見てるよね?だからそこまで真剣には見てなくて承との話しがメインだった。


でもやっぱり山場だよね、気づいたら引き込まれてて見入ってた…。

名作…!


ふたり『バルス!』

望『バルス!』


同じタイミングで望がにやって笑って俺の目に霧吹き!

シュッ!!勢いMAX!



大佐『目がぁ!!』

『目がぁ!!』



急な目潰しに立花家を転げまわる俺!

横で望はおなか抱えて笑い転げてる!


望『あはははは!ごめん!宏介くんごめんて♪』


顔ビッチャビチャにされて…目に水が入って…このクソガキ…!


『承?』


承は頷く、


望『宏介くん?宏介くーん!ごめん!ごめんて!

ひん!!』


俺は望を抱えておしりを久しぶりに叩いた。

前はプラモ破損だった…俺のアスラーダ…!

ばん!ズボン越しだからそんなに痛くないかも知れない。

承は望の様子を見て、


承『…宏介直に叩いて、じゃなきゃわからない。』


望『わかるよ!もうわかったよぉ!

目潰しはクズにしかやっちゃいけないんだよね?ね?


ひゃん!!!』


ペロンてズボンをズラして真っ白なハリのあるお尻を引っ叩くと望は…。


望『…お嫁に行けないよぉ…!』


…後日もう一回だけお尻叩いたっけ…。

それはまた別のはなし。


☆ ☆ ☆


相槌打ちながら思いを馳せる。

一ノ瀬会長は永瀬さんを気にするはずだ。

妹みたいな特別な女の子。

自分が卒業して居なくなっても大丈夫なように俺を勧誘したり…。

俺も望なら…。


永瀬さんは一ノ瀬会長には塩対応。

しかも結構塩分強め。


それはなぜ?愛情の裏返し?

愛情?それは家族?異性?


望は…望は妹みたいなもの…。


胸は混沌として答えはさっぱり出ない。

頭だって勉強会の疲れかさっぱり回らない。


でも…俺…望に塩対応取られたらショック受ける自信がある…!

どうする?

高校生になって皐月みたいに派手になって無視されたり人前で避けられたり、

『話しかけないで!』とか『名前で呼ばないでって言ったでしょ?』とか言われたら…承と一緒に泣いちゃうかも。

…もし…ひーちゃんがグレたら…!


想像しながら恐ろしくなる。

そんな心配するほど立花家の面々は俺にとって大事な幼馴染で…兄弟みたいなものなんだって痛感する。


永瀬さんに拒否される一ノ瀬先輩の心情はいかばかりか…!

最後の方に現代文で作者の心情を…とかそんな問題ばかりやったせいもあるのかも知れない。

永瀬さんの気持ちと一ノ瀬先輩の気持ちがどうしようもなく気になるのと、自分の胸にある漠然とした不安。

そして望と俺の関係性に初めて違和感を感じていたんだ…。

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