第210話 中間テストと親友の決意

そうして迎える中間テスト。

二年生になっての初テストになる。


前のクラスがふざけていたとかでは無い。

ただ高成績者から選抜して選ばれているだけあってテスト前の雰囲気は真剣そのもの。

全体的にピリっとしている。当然俺も集中して臨む。

別に五味との勝負はあまり気にしていない…嘘だ、気にしてる。

やっぱり勝負ごとには全力!全力で勝負して勝つから嬉しいし、負けたら悔しい。


この一週間は午前のみの日程でテストを受ける。

終わって帰れば翌日教科の復習。

ここまで来ると勉強会とか意味無いから皆それぞれ家でひとりで黙々とテスト対策をする者が大半。

満遍無くおさらいする者、苦手科目を重点にする者この辺はスタイルそれぞれ。

俺は満遍無くおさらいするタイプ。

これを繰り返し中間テストは終わる。


☆ ☆ ☆


…テスト終わりを待ちかねた様に承から連絡があって、相談を受けた。

承は思ってた以上に大変なことになっていた。

まさか…ずっと好きだった娘…香椎玲奈に婚約者…!

10も年上のおっさんと政略婚約だったけど相手が本気になって婚約破棄を許さずにそれどころか県内屈指の大企業が圧をかけてくるなんて話し…!


承は真面目な顔で知恵を借りたいって来て、俺たちは一日中色々検討して、シュミレートして、頭を絞って考えた。

それでもこれ!ってアイディアは出ない…。


承『いいのいいの!宏介と検討した事でまとまった事もたくさん!さんきゅ!』


承には何か考えがあるみたいだけど…生半可じゃ上手くいかないし…

相手は子供部屋おじさんみたいなもんでしょ。

親友の修羅の道に俺は常識的な事しか言えなかった…。

そして…承の香椎玲奈への想いに胸を打たれる。

そこまで好きなのか?これはもう愛なんだって思う。

自分の全てを投げうっても解決したい、何を犠牲しても出来る事は何でもするって爽やかに言い切る姿…尊敬してやまない親友の絶好調の姿があった…!

承はこうでなくっちゃ!って思う反面、

…俺はそこまで皐月をゆかりさんを…

承の行動原理を見るたびに俺ははいつも漢とは?って問いかけられてる気がする。


☆ ☆ ☆


週明け、いよいよテストが返却されてくる。

…点数は結構良い。

でも相手は特進のクラスメイト…正直五味がどれ位の成績なのか俺は知らなくって…学年10−15位前後の辺りなら自分前後ならなんと無くわかる。

大体近い成績者の名前は見る事多いしね。

永瀬さん、小佐田さん、優木さん辺りがその辺り。

…だから五味はそれ以上かそれ以下か…?

あれだけ自信ありそうなんだから…五味はもう少し上と見るべきか…。



返却されるテスト、五味はニヤニヤしている…。

そんなに良いのか?

…負けたら素直に賞賛しよう、こういうので負けてぐちぐち言うのが1番格好悪い。


…例えば科学や数学のように答え〇〇みたいなモノは〇か×かわかりやすい。

でも、現代文や古典などの文章問題のニュアンスとかって結構採点が割れる。

5点問題だけど△3点とか教師によって採点ジャッジが割れる。


五味『先生!ここどうなんですか?!

こういうニュアンスだったんですけど?』


先生『いやだったらそう書け?』


五味は嫌なアグレッシブさを発揮してテスト返却時のテスト解説でたびたび先生に絡む。それで…



先生『うーん、△1点かな?』


とか言って点数を訂正するケースがあった。

そんな時五味はニタァって笑って俺を見る…。

あんまりこういうの好きじゃ無い…でも古典で採点ミスじゃ無い?って問題が1箇所あった。

五味を見習うようで嫌悪感強い…でもコレ先生解説だと5点問題で△2〜3点のはずが×になってる…。


…嫌だな…五味はこういうの嬉々として行くけど他人の粗探しみたい…でも負けたくない…!


『…先生、ここの…。』


先生『あー…本当だな…△2点!惜しかったな?点数訂正しておくな?』


席に戻る時、五味がすごい目で見てる…!

お前俺の10倍クレーム付けるだろ?


☆ ☆ ☆

お昼休み。


永瀬『宏介くん♪どう?中間?』


『…うん、まあまあ良いけど…。』


永瀬『勝って元4組の力見せてやってね?

そしたら五味くん寄ってこなくなるかな?』


そうだね、賭けの対象が『永瀬さんと距離をとる』だからね…。

…でもコレだって五味の勝手な僻みで俺から永瀬さんに行く事ってほとんど無いんだよ。

※それが綾をナイーブにしてます。


『…ところで五味って学年何位くらいか知ってる?』


永瀬『友達と自分の前後くらいしか見なくって…?』


『俺の周りも誰も知らないんだ…。』


永瀬『…実は私も皆んなに聞いたんだけど…誰も知らない…?』


ふたりで首を傾げていると、



五味『去年平均!7位だよ!格上だぞ!

知ってろよ!』


五味が鼻穴膨らませてやって来た…。


『さっきの科学のさ?』


永瀬『あー!うんうん!わかる!難しいよ!』


五味『無視するな!空気読め無い奴だな…!

…斉藤宏介!約束忘れるなよ!』

※今日のおま言う。


ひとりでキレ散らかして五味は出て行った。

強敵だな…!

※いまさらです。



永瀬『大丈夫そう?』


『…わかんない。

コレばっかりは相手のある事だから…!』


永瀬さんは不安そうに頷く。



☆ ☆ ☆

その週の金曜日昼休み。

テスト順位発表!

勉強会メンバーで発表を見に行く。


ゴクリ。

教師たちが長い紙を貼り出して行く…。

特進勢は大体集まってる、当然五味も。





8位 小佐田恋

9位 五味 聡

10位 斉藤宏介

11位 永瀬綾



五味…サトシって言うんだっけ?

いや、今はそんなこと…。


負けたっ!1点差…!

皆んなが協力してくれたのに…!

トップ10には入ったけど悔しさが胸に渦巻く…!

永瀬さんの顔が曇る…10位以上を目的に掲げていたし、俺が負けたから…!


ニタニタ笑って…五味が近づいてくる…!


五味『ふひひ♪斉藤くぅん♪』


五味は心底嬉しそうにニタニタしながら俺に笑いかける…!

おもむろに永瀬さんの方を向いて、


五味『ふふふ!勝ちました!勝ちましたよ!綾さん!

斉藤宏介敗れたり!』


永瀬『…。』


ドヤ顔…めっちゃムカつく…!


周りの生徒たちは自分のテスト点を確認しながら俺たちをチラチラ見てる…!

ここで負けたのは悔しいし、恥ずかしい!


五味『1点差だろうが負けは負け!バスケだってそうだろう?

負けたけど1点差なんて言い訳しないよねぇ?』


ふふーん?俺の顔を覗き込んで来る五味…!

…ムカつく!


浩『宏介くん。』

康司『10位大したもんじゃん!』


友達ふたりのフォロワーを遮るように!


五味『一桁と二桁は意味が違うんだよ?一点が明暗を分ける世界。

真の特進!特進の中でもカーストはある!』


あるか?1位の彼も2位の彼女も自分の事に必死だけど別に五味ほど成績を鼻にかけないし、至って普通な高校生だ。


五味『兎に角!一桁順位は特別ってことだ!

わかったなら!もう!綾さんに近づくな!』


永瀬『どいつもこいつも綾って呼ぶなぁ…。

五味くん!名前で呼ばないで!』


永瀬さんがキレた!ポニーテールも怒った様に跳ねている!


永瀬『五味くんはもう黙ってて!

宏介くん!点数間違いとか無い?!

古文で採点ミスあったじゃない!』



…!

あったね!


一応…スマホに入れた点数…確認…!


『…古文の訂正が反映されていない!』


五味『…バカな?!

だったら僕にだって!』



風雲急を告げるテスト結果発表!

視野の端っこで今来た小佐田さんと優木さんがテスト結果発表を確認して…、



小佐田『…やったぁ♪』


目をキュって瞑って両手を握って小さくガッツポーズしてるのが見えた。

…良かったね、小佐田さん…!

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