第197話 哲学と芹の癖【side立花望】

あたしの屑龍閃が…!


たまに兄ちゃんにかわされる大振りな必殺技。

当たれば必倒だけど発動前にかわされる…!



不良『…マジ危ない女だな…どうなってんだ…。』


不良のくせにー!

親友sが頷きながら、


緑『本当だよね?』

きい『危ないw』

茜『こんなステレオタイプの不良に言われるなんてw』


『どっちの味方なのー!』


親友sに文句言うけどいつもの芹が捕まってるから!締まらないよ!

芹はガクガクブルブル!やば!

早く助けないと…!


不良『じゃあ、今度は俺の番だな!』


腕をぐるぐる回して不良がすごむ。

こっわ。


ダメ元で言ってみるよ。


『もう一回!もう一回だけ!お願い!』


両手を合わせて拝んでお願いのポーズ!

ごめんて!泣きの一回!

上目遣いのうるうるモードでお願いすると、


不良『…お前の攻撃は殺気がありすぎんだよ…

来るって分かれば間合い外すだけだろ…?』


ひょっとしてコイツ良い奴なのかも知れない…。

そうだよね、ヤンキーマンガ読むとわかるけど良い奴orクズだもんね。

こいつ良い奴なのかも知れない…じゃあ屑竜閃は効かないな。

だって屑を殴り倒す技なんだもん。


じゃあそれならさ?


『この攻撃で倒れたらあたしの勝ち!

倒れなかったらあたしの負け。それで良い?』


不良は面白い!って顔して言った。


不良『良いぜ?それで。

もし食らっても倒れなかったら俺の勝ちなんだよな?

俺が勝ったらさっきのこと謝って貰うぞ?』


ごく。どうしよう?身体とか要求されんのかな?

あたし可愛いし…。


負けた時の事を考えてどうする!

いくよ!


あたしは腰溜めにスラッパーちゃんを構える!

もう芹が限界!早く勝負決めよう!



不良の人はあたしの一挙一投足を凝視しつつ全体に気配も窺っている。

…やっぱ強い人なんだね。

余裕があるから周りが見えるし冷静。

場数こなしてるんだろうな。


あたしも今は辺りを伺う余裕があるよ!

三島裕太がガクガクしてるの、鈴木くんが芹を助けようって窺ってるのも。

親友sはあたしを見ながら芹を伺ってる。


緊張感がある。

ギャラリーの新川中に生徒が固唾を飲んで見守っている…。

危ないから逃したのにー!


ふふ。

笑うと不良も笑ってる。


会う場所違ったら友達になれたかな?



芹『うわーん!!』


唐突に!芹が暴発した!

待ってた!


芹が叫んだのを見て鈴木くんが芹のとこ突っ込んだ!

危ないよ!



一瞬、ほんの一瞬だけ不良のおっさんが芹方へ意識を向けた。

ほんの一瞬だけ。


それで十分!


殺気を消す。

あたしはその技をもう開発してあった。


☆ ☆ ☆


屑龍閃を兄ちゃんが躱わすから!

まあ屑じゃ無いってことなんだろうけどさ?


承『殺気ありありなんだって。

ゾワってくるもん。』


『だってやる気だもん!』


承『もっとこう…優しい娘に育って欲しい。

兄として。ひーちゃんを見習え。』


『ひーちゃんは良い子に育ってる。

ねえちゃん嬉しいっ!』


!!!



承『痛ってぇ!!!望!』



☆ ☆ ☆

あたしには心臓の悪い歳の離れた弟が居る。

立花光、通称ひーちゃん。

再発したらとんでも無い事になる爆弾を抱えた心臓、人と違う境遇。

でも、ひーちゃんはそれをモノともせずにすくすく育つ。

誰より純粋で素直な良い子に育ったひーちゃんを見ると万物に感謝したくなる。


最愛の弟ひーちゃんを思い浮かべるあたしは笑顔。

優しい笑顔で自然に全関節を同時加速しつつ超光速の殴打を見舞う。


攻撃の意図を、殺気を完全に消した攻撃。

それは腰溜めから全力インパクトする瞬間に絶妙のタイミングで左足を踏み出す。その踏み込みによりスラッパーちゃんを加速し、神速を超える「超神速」で打ち出すよ!


理屈は簡単だけどスラッパーちゃん側の足を前に出した状態で抜刀攻撃は身体のバランスを崩すと同時に自分の足が邪魔になる。そうゆう難しい超神速殴打なのだ!


それをひーちゃんを思い浮かべて微笑みながら行うと…!まるで相手は察知出来ないよ!


いくよ?


『『向日葵光閃ヒマヒキ…。』

※ヒマワリノヨウニソダツヒカルノヒラメキ



相手の横を通り抜けながら勢い余って一回転しながら着地する。

お尻にも1発入れちゃった…オーバーキルだったかも知れない…!


ブオオオオォォン!ってスラッパーちゃんがすっごいしなった音がする。

不良の人は悶絶してた。

静かになった現場に声がやけに大きく響いた。



三島『…おパンツ見えた…!』


もう頃しちゃお?

そう思った矢先!


芹『いやぁ!!』


いっけない!

芹が!


芹は何処からか取り出した催涙スプレーを抑えてた男たちにコレでもか!と噴射してスタンガンで相手を昏倒させると、あたしのより小型のスラッパーを抜き放ちブンブン振り回し始めた!

…芹は真面目でしっかりしたお嬢さんだけど…小心の余り過剰に用心をするタイプで護身用具とかそっちの知識がすっごいの!

あたしのスラッパーちゃんだって元々芹の持ち物だったしね。

芹を助けに行った鈴木くんも巻き添えでスプレー浴びちゃった!


芹『こわい!こわいよ!』


鈴木『相川さん!大丈夫!もう大丈夫!』


鈴木くんは涙ボロボロ、芹のスラッパーを1発食らっても芹を抑えて大丈夫を連呼する。

…漢じゃん!


不良チームの男たちは不良がKOされたのに襲って来ちゃうし!

あたしもパンツ見られちゃったからにはタダじゃ返せないよぉ!!

あたしは格好つけて呟くよ。



『kill them all.』

※皆殺し。




大乱闘が始まった!!

とは言え、ボス倒したし芹の催涙スプレーとスタンガンでもう勝負がついてる!

皆んなスラッパーちゃんで薙ぎ倒す!


最後ひとりを打ち倒した瞬間!


不良『…このまま負けられねぇ…!』


倒れてた不良のおっさんが後ろからよろよろあたしにつかみかかる!

でも!あたしは周りが見えてた!


『チェリオ!!』


振り向きざまに殴打!


三島『うわあ!』


三島?三島が間に入ってきた?!間に合わない?!

…振り抜いちゃえ。



三島にクリーンヒットしたスラッパーちゃん。

三島はよろけて不良のおっさんに倒れ込んでふたりはもつれ合うように倒れる…。

不幸な事故だったね…!



『誤チェリオにごわす…。』


※ 元ネタ 誤チェスト

誤チェストとは読んで字の如く”チェスト”し間違えることである。

某マンガで宮本武蔵を探す薩摩藩士が武士と見ると斬りかかる。

武蔵ならかわせるはずって乱暴な探し方で「またにごわすか!?」というツッコミの通り、幾人もの無関係な侍を誤チェストしてしまう結果となった。



『よし!今の間ににーげよ!』


三島を回収して同級生たちも動員して急いで哲学の道を南禅寺方面へ強行したよ!



危なかったね?


緑『望!望!』

きい『見て見て!』

茜『アオハライド…!』


そこには…。


芹『ごめんね、鈴木くん…私のせいで…。』


鈴木『…そんなこと無い。相川さんが無事で良かった…。それが1番。』


芹『…ごめんね…。』


芹の催涙スプレーが目に入って涙ボロボロの鈴木くんの目を必死に水で洗い流してハンカチで拭う泣き顔の芹の姿があった。

…いや、鈴木くんは漢だね…。


緑『スラッパーも1発入ってるのに鈴木くん一言も責めないもんな。』

きい『芹真っ赤じゃん?』

茜『…イイ!アリじゃない?』


『上手くいくとイイね?』


あたしたちは遠くからニマニマしながらふたりを見守った。

鈴木くんは一言も芹に泣き言を漏らさず、責めるような事も一切言わなかった。



☆ ☆ ☆

三島裕太が我に帰るとさっきまで望が戦っていた不良が体の下に居た。


裕太『…?』


どさくさに紛れて離脱したけど…

なんでこうなった?





『三島くん望ちゃん庇った?』

『え?でもパンツ見えたって裕太言ってたろ…。』

『…でも不良の人押し倒して無かった?』

『…そう言えば前にも…。』

『えー?ショックー!』

※外伝 嫌いな男 参照

https://kakuyomu.jp/works/16817330663085191362/episodes/16818023211990185151



みんな『『そう言えばセクハラを持ってセクハラを制すって三島くん言ってたような…?』』


裕太『言ってねー!』



三島裕太また男を押し倒すって噂が目撃者多数で一気に広まった!

あと望のおパンツ見たって宣言が女子人気を大きく下げた…。

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