第138話 あたしの立ち位置【side立花望】

夕方、永瀬さんとの買い物を終えた俺は一度家に戻った。

戻ったと言っても、リュックはそのままにお返しの入ったカバンを持って自転車で立花家へ向かう。


時刻は16:00頃。

立花家の前の駐車場に自転車を停める。

…小さい雪だるまが3個。

これが兄妹弟で作った雪だるまだな?

本編274話 雪と立花家参照↓

https://kakuyomu.jp/works/16817330656200078233/episodes/16818023211814179289



呼び鈴を鳴らすとすぐにドア開く!

古い家だからインターホン無いんだよね。


望『へい!らっしゃい!』


『…お寿司屋さんか。』


…承じゃ無いんだから…!

ツッコミ苦手なんだよ。


望は満面の笑みを浮かべて、


望『ふふー!どうぞどうぞ?』


『じゃ、お邪魔します?』


長年通ってるから勝手知ったるお家なわけで。

玄関横の居間に居る承の祖父母にご挨拶。


望に促され客間へ通されて、座って待ってて?

って言われて和室の座布団に座る。


承も弟のひーちゃんもまだ帰って来ていないらしい。

長い付き合いだけど承が居ないのに家に入るのってなんか不思議…!


望『お待たせ!』


望が日本茶を淹れて来てくれて、お茶飲みながら少し話すけどさ…?

望どうした?体調悪い?

なんか汗かいて?全然話さない…?


聞いても体調は良いとしか言わない…。ほんと?大丈夫?


多分、今日着てるの香椎玲奈さんお下がりの有名ブランドワンピースだよね?

承が言ってたな、望の一張羅だって…?


☆ ☆ ☆

宏介くん?宏介兄ちゃん?  side立花望


宏介くんが…立花家に…来るー!


そろそろ時間じゃないかな?

兄ちゃん帰って来るかも?ひーちゃんも帰って来るかも?

でもふたりが居ない時間に来るかもしれないし?

帰り道の作戦会議も最後は、


親友1『喋らない方がいい。』

親友2『ただ笑っていれば?』

親友3『勝負下着は着といた方が?』


芹『…あながち間違いでは無い…?』


芹ぃ。ほんと?信じるよ?

親友の妹ではなく、妹分じゃなくてひとりの女の子として見て欲しい。

それが望み。名前が望だからややこしくなっちゃうね?

そんな事ぼんやり思い出してると宏介くんの顔近い!


宏介『望?大丈夫?出かけてきたの?』


…私が先輩譲りのワンピースを可憐に着こなしてるのでお出かけしてたと思ってる宏介くん。

私は笑うばかりで全然喋らないのを体調不良か疲れだって勘違いして、私を横にしようとしてる…?


えー!横にして?

どうするの?添い寝?撫で撫で添い寝が良いよぉ!

親友sの言う通り!

笑顔で話さず、勝負服作戦成功じゃない?!

※一応勝負下着も着用中。


あたしがニマニマしていると、


宏介『じゃ、長居しても負担だし俺帰るね。

お大事にね望。』


宏介くんの優しい笑顔にふふ!ってなっちゃうけど…待って!来たばかりじゃない!


あたしは飛び起きて、大丈夫アピールするよ!

宏介くんは大丈夫なら良いんだけど…って首を傾げてカバンをガサゴソ。


宏介『バレンタインでチョコくれてありがと。

これお返し。

喜ぶと思うんだけど…?』


そう言って取り出したのはでっかいバケツみたいなプラスチックボックス。

開けて?いわれるがまま開けると…!


でっかいバケツみたいな容器にお菓子がいっぱい!

こないだ量り売りで買ったとこのやつかな?

兄ちゃんと感性が同じでちょっと笑っちゃう。


色とりどりのチョコ、飴、ラムネ、ガムを始め色んな駄菓子が隙間無くぎっしり。

おお?!

私はテンションが上がっちゃう!


『ありがとう!宏介くん!』


宏介『…可愛い妹分だからね?』


そう言って頭を撫でてくれた。

兄ちゃんと同じような大きな暖かい手の感触に頬が熱くなる…!

…でも、妹分か…可愛い妹分…。

お返しも喜んだけど子供っぽいって思われているようにも思える…。



ひー『ぼくも!ぼくもなかまにいれてー!』


弟のひーちゃん帰ってきた!

ひーちゃんはあたしが撫で撫でしてあげるから!

こっちおいで!


兄『何してるの?』


宏介くんがあたしの頭を撫でて、あたしがひーちゃん頭撫でてるところに帰って来た兄ちゃんはその光景見ながらニコニコしてた。

そしてバケツを見て、


兄『お!こんなに?宏介気を使って!』


宏介『妹みたいな望が初めて手作りチョコ作ってくれて?俺にくれたんだよ?大きくなったなって嬉しくなっちゃったよ。』


兄『わかる。』


もう!気づけば兄弟全員で宏介くんを構い始めるんだよ!


『桃銅やる?99年位?』


宏介『…それ今日帰れないでしょ。』


しばらく遊んで宏介くんは帰っちゃう。

…嬉しかったけどさ?やっぱりお菓子沢山とか、妹みたいな望って…あたしは親友の妹〜妹分って立ち位置なんだなぁってわかってお返し嬉しいけど少しだけ寂しかったんだ。

…仕方ないとは分かりつつ、あたしはまだ子供だってわかってもいるけど悔しい自分も居る。


夕飯どきになり、宏介くんが帰る。

お見送りに玄関まで送る。


私は外までお見送り。


宏介『外まで見送りしなくて良いのに…望は良い子だな。』


宏介くんが優しく微笑む。


(子…子供じゃないし。)


ちょっと頬を膨らませて抗議の意を示すよ!

すると、



宏介『…駄菓子も良いけどさ。

望も随分女の子っぽくなってきたから?

こういうオシャレお菓子もあげるね。』


そう言うと宏介くんはリュックから小さい箱を取り出してあたしにくれた。

ばいばい!見えなくなるまで手を振ってあたしは箱を抱えて家に入るよ。


兄ちゃんやひーちゃんにもお菓子を分けてもぐもぐタイム!

文句言いつつお菓子はおいひい。


☆ ☆ ☆

部屋で1人で宏介くんのくれた箱を開ける。

ぱかり。


中身はマカロンって奴だった。

あー、なんか女子に人気のある奴だ。

確かに美味しいし可愛いしオシャレお菓子。

否定する訳じゃ無いよ?でもさ?すっごい高いし?日持ちしないし?

こんな6個しか入って無いのに結構なお値段するやつですよ?


私は質より量な安上がりの女の子。

宏介くんはオシャレさんだなぁ。

北翔はターミナル駅が最寄りだからきっとそう言った物にも詳しいんだな。

きっとシティボーイって奴だ。

※新川町にマカロン売ってるお店はありません。


一晩明けて、翌日も部活で親友sと会う。

どうだった?どうだった!聞かれるよね。


あたしは包み隠さず話す。

ほとんど話さずニコニコして一張羅で対応して。

汗かいて無言だったら体調不良を疑われて優しくされた。

…可愛い妹分…嬉しいような寂しいような表現でね?

駄菓子の詰め合わせ!バケツ(?)にいっぱい。

嬉しいけど、テンション上がったけど…やっぱり子供扱いなんだよね?


少しだけテンション下げて言うと、


親友1『…その量は愛を感じる!』

親友2『可愛い妹分って!可愛いって言ってるじゃん!』

親友3『そうだよ!まだこれから!』


慰められると…涙出そう…。


芹『他には?他には何か無いの?』


『…帰り際に、追加でマカロンくれた…。

…田舎の子だからだと思う…。』


あたしがしょんぼりしてるから、


親友1『田舎の子って同じ新川町出身だよ!そんなつもりじゃ無いよ!』

親友2『そうそう!マカロン良いなー!うらやま!』

親友3『…マカロン高いよね?駄菓子山盛りに追加でマカロンくれるなんて愛されてるよ!』


…だから…慰められると…余計悲しい…。


芹『…違うよ望!これ見て!』


黙ってスマホぽちぽちしてた芹が素っ頓狂な声を出す!

わ!なんだ?!親友たちも覗き込む。



親友1『なになに?ホワイトデーで?』

親友2『お返しに?マカロンの意味は?』

親友3『…あなたは特別です…?』



『『『『な、なんだってー!!??』』』』

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