第274話 雪と立花家

新学期が始まって早々、成人の日を含む連休がある。

学校帰りのバイトならまあ距離はそこまで感じないのだが寒冷地あるあるで、雪が降るとバイト行くのがとにかく大変。

俺カレ側も、大雪で来れない!とか困るから、シフトは流動的に、週間予報見て決めてたりする。近場の大学生がメインで雪降らなそうな時俺入る。

雪が降ってひーちゃんは大喜びで毎日キャッキャしてるけど、


『雪降ると登下校キツい…バイト遠い…。』

望『雪降るとフィジカルトレーニングばっかだよぉ!』

ひー『まっしろだ!やったー!』



そんなわけで成人の日、俺も連休、その2日目。

朝からのんびり、ランニング出来ないし、朝ひーちゃんと散歩してその後、のんびりする。こたつで勉強したりして過ごす。


ひーちゃんは2日とも俺が休みなの嬉しいらしく遊びに行かず、家の外と中を行ったり来たりしてる。


ちょっとひーちゃんが心配だから外が見える居間のこたつに座椅子を持って来て勉強する。

…俺、大学…行こうかな?って考えてる。

昔と違い勉強嫌いではないし?これからどんな夢を見つけるにしても学はあった方が良い。

奨学金借りて?自分の稼ぎから返済して?バイトもするし。

…大学…位は…釣り合わない…いや、雑念捨てろ!


俺は外を見ながら勉強をする。

真っ白な雪化粧な光景も室内からは綺麗な光景。

外は極寒地獄だけどね。


血圧的に寒暖差どうなの?って思うけどひーちゃんは雪が大好きで防寒装備マシマシでもっこもこになって外へ飛び出す。

息が上がるような遊び、汗びっしょりにならないように言ってあるけど飽きもせず雪で遊ぶ。


ひーちゃんはしばらく遊ぶと居間へ戻って来る。


ひー『にいちゃあ…ててつめたい…。』


泣きそうになって帰って来る。


ほら、言ったじゃん。

雪を直に触りすぎて手袋びちょびちょ!

ひーちゃんの防寒装備を一回解除して、ストーブに当てる。

少し濡れてる。


こたつに入る俺が抱っこする形でひーちゃんをすぽっと抱き抱えこたつの中でひーちゃんの手を包み込みマッサージする様に揉み、さする。

冷たかった手が暖かくなっていく。

しばらくすると、


ひー『にいちゃん!もうだいじょうぶ!いってくる!』


またひーちゃんは防寒装備一式を身にまとい雪原へ飛び出す!



…30分後、



ひー『にいちゃあ…またててつめたくなった…。』



これを3回繰り返したとこで、


ひー『にいちゃん!おそと!おそときてー!』


満面の笑みを浮かべて、ひーちゃんが外へ誘うけど…雪嫌なんだよね…。


やんわり断るけど、ひーちゃんが食い下がる。


ひー『おねがい!にいちゃん!』


仕方無く着替えて外へ出る。

ひーちゃんはドヤ顔で、




ひー『ゆきだるまつくったー!』


家の前に小さな雪だるま。

お世辞にも大きくなくって歪な雪だるま。

でも、小さなひーちゃんが汗かかないで、心拍数上げないように一生懸命作ったのがわかる、可愛い雪だるま。

我が家の敷地内駐車場スペースの玄関へ繋がる道の横。守り神みたい。



『すごいね?さすがひーちゃん!』


えへへー!園児はドヤ顔。


望『お?雪だるま作ってんのー?』


望が部活から帰って来たんだ。

部活フィジカルメニューばっか!って悪態をつきながら望は、フィジカルメニューの続き!って宣言して雪玉を大きくし始めた。

望の癖でひーちゃんに良いとこ見せたいんだよね?

俺にひーちゃんの為にすっごい雪だるま作ってあげようよ?って持ちかけてきた。


望『ね、ひーちゃん!姉ちゃんたちが大人の雪だるま作ってあげるよ!』


ひー『ほんと?!ほんとに?すごいよー!みせてー!!』


ひーちゃんは顔や手を作る準備してて?はーい!って妹弟は楽しそう。


(大人は雪だるま作らないだろ…。)


そう、思いつつ兄の威厳を見せつけたい俺はまだ子どもなわけでw



望『ふぁいとー!』


『いっぱーつ!!』


ノリノリで大型雪だるまを作った!

俺は土台の大きい雪玉、望は頭部分の雪玉。

さっきのひーちゃんの雪だるなんて目じゃないくらい、大きな奴!!



でもさ、頭部分大きくしすぎてちゃって…。



『うおおおおおおおあああ!!』


望『がんばれ♪がんばれ♪』

ひー『にいちゃん!にいちゃん!』


妹弟の前で格好悪いとこ見せられない。



なんとか完成!でっかい雪だるま!さっきの雪だるまの横!

すごくない?俺頑張った!



ひー『すごーい!すごいなあ!』


望『だしょー?これが姉ちゃんたちの力だよ!』


何でおまえがドヤ顔なんだ。って思うけどふたりが笑顔だから嬉しくなっちゃうよ。


でもね、


ひー『…ぼくのゆきだるま…ちっちゃくって…変な形だなぁ…。』


望『そんな事無いでしょ。』

『可愛いでしょ。』


ふたり同時に弟のフォロー。

でも、ひーちゃんは横の大きな立派な雪だるまを眩しそうに見つめて。


ひー『ぼくは力出せないし、ちいさいからりっぱなゆきだるまはつくれないのかなあ?』


望は、ひーをギュッて抱きしめると、すぐ横の綺麗な雪で雪玉を作る、ひーちゃんにも作らせる。


ひーが手元を覗き込むのを確認しながら、ふたつの雪玉をくっつけた。

その雪玉を俺が作った大きな雪だるまの肩に乗せる。


望『おっきい雪だるまは兄ちゃん!ひーちゃんの作った中くらいの雪だるまはねえちゃん!今作った小さな雪だるまはひーちゃん!』


ひーちゃんは顔をパッと輝かせ、



ひー『ぼくこんなにちいさくないよー!』


望『ちいさいな、よく兄ちゃんに肩車して貰ってるじゃーん!』


ひー『そうだけど!…雪だるまも兄姉弟きょうだいだったんだ…。

3人一緒なら寂しく無いね?』


ひーちゃんは飽きずに3つの雪だるまを眺めていて、家に戻ってからも居間の窓から雪だるまが無事か何度も確認していたんだ。

結局、ひーちゃんは雪が消えるまで一生懸命にこの三体の雪だるまを、

『しょう』『のぞみ』『ひかる』って名前をつけて、冬の終わりまでそれはそれは大事にしていたんだよ。


望『「のぞみ」貴女にはおっぱい盛ってあげるね?』


望は雪だるまに豊満なバストを付けていたよ。




☆ ☆ ☆


お昼ご飯はお正月の残りのお餅の入った力うどんを食べて、

居間で兄弟3人でゴロンゴロンする。


休日だから後回していた雪かきするかな?

午後2時頃、

走って無いからフィジカルトレーニングだわって俺は1人呟く。

じゃあ手伝うよって望が申し出る。助かるー!

望はパワー強化も課題だから…って呟いたあと、



望『べ、べ、別にお兄ちゃんの為じゃ無いんだからねー!』


ってツンデレのテンプレみたいなセリフを言うと、色気のカケラも無いモッコモコの防寒装備で雪かき準備を始める。

望は寒いの超苦手。雪だるま作る事で少し雪へ減ったけど父さんたち帰る前に駐車場スペースと家の前の道路だけは綺麗にしてあげたいから望の手伝いは超助かる。


『マジ助かる、何か奢るぞ?』


望『いいの?!じゃ…肉まん!ピザまんでも良い!』


『おっけ、じゃ終わったら買いに行ってくるわ。』


俺は約束する、すると、


ひー『ぼく!ぼくがおつかいするよ!にいちゃんたちゆきかきでしょ?

ぼくがいってくる!』


自分だけ何もしないのが嫌なんかな?

…最近ひーちゃんは初めてのお使いをこなした。

コンビニで母さんに頼まれたカレー粉を買いに行ったのだ!

(望が後をつけました。)


コンビニや駄菓子屋さんへは何度も行ってる。駅前スーパーはちょっとまだダメなんだけど。


うーん、じゃお願いしちゃおうかな?

1時間かからない位で終えるから、ひーちゃんの足ならゆっくり息が切れない様に行かせて?


そうしよう。



ひーちゃんに小さいお財布を渡して、肉まん、ピザまん、無ければカレーまんでも良いよって3つ買って来てもらう様にお願いする。

普段なら付き添うけど…何度も散歩してるし、買い物もしてるし大丈夫だよね?

くれぐれも

車に気をつける事、雪で転ばないこと、急いで息が上がらないようにする事を言い付けて、ひーちゃんお使いスタート!


『望こっちもさっさとやっちゃおう!』


望『うん、そんな無いもんね?』


だらだら雪かきするのも面倒くさいので短期間に集中して雪かき!!

せっせと雪を運び、駐車場と家の前の道路、玄関から入り口を猛烈な勢いで片付ける!


俺たちが雪かき始めたのを見て出発した、ひーちゃん。

普通なら片道10分と少々だから往復20分少々、買い物、雪、諸条件を足して30分強位かな?



じゃ、ひーちゃんが帰って来る頃に目処でしょ!

望と目立つとこをやっつけた頃、遠くにひーちゃんが見える。


ひー『にーちゃーん!ねーちゃー!』


望『小走りダメー!』


最近小走りをしようとするの!やめて!

ひーちゃんが帰って来たし、一通りいいとこ終わったから家へ引き上げる。


望『あー汗かいたー!』


ひーちゃんは汗をかく望を羨ましそうに見る。

ひーちゃんは汗をかくような運動は基本させないから夏以外はほとんど汗かかない。


肉まん2個、ピザまん1個だね。ひーちゃんお使いありがとう!

お使いを褒められてひーちゃんは誇らしげ!



望『じゃ、私ピザまん!』


『ひーは肉まんで良い?』


ひー『いいよ!にいちゃんといっしょ!』


3人で居間でかぶりつく。

うま!うめえ!おいしいね!


3人コメントは違うけど、美味しいモノを食べる時は幸せそのもの。

こうして今日も過ぎていく。

いつもの兄弟3人の冬の光景。



そんななか、ひーが俺に何か伝える。



ひー『さっきね?にくまんかいにいったでしょ?

そしたらね?かしちゃんがね?しらないくるまにのってたよ?』


『…ふーん。お父さんかな?』


ひー『ううん、わかいおじちゃん。あおいかっこいいくるまだったよ!』


『青い?香椎家は…?お金持ちだから車何台もあるか?』


わかいのにおじちゃん?香椎パパじゃ無いのかな?

ひーちゃんが香椎さんを見かけたらしい。

なんか不思議な事を言ってるけど俺は気にして無かった。


そんな冬の日。

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