第273話 雪とひーちゃんドーナッツ

子供は雪が大好き!

当然、立花家の末っ子ひーちゃんも例外では無い。


幼稚園では、冬休み明け最初の日。

園児は手付かずのお庭の雪に大はしゃぎ!


『雪だるま作ろうよ!』

『かまくらつくろ!』

『雪合戦するやつあつまれー!』


みんな自由時間はそれぞれ友達と遊んでる。

ひーちゃんも基本友達は多いのだが、ひーちゃん友達は雪合戦に集中しちゃった為、ひーちゃんはひとりポツン。

ひーちゃんは心臓が悪い為激しい運動厳禁。

皆んな楽しそうだなぁ、ひーちゃんは基本的にひとり遊びも好き。

ブロックとかプラレールが大好き。

想像しながら遊ぶのだ!


折角雪があるから?何か作ろうかな?お庭の端っこで雪を集め始めるひーちゃん。


??『ひーちゃん!わたしとあそぼ♡』


ひーちゃんに声をかける彼女はニナちゃん、おめめがぱっちりした幼稚園で評判の可愛い女の子。

ひーちゃんは嫌な顔をする。

…ニナちゃんはひーちゃんが唯一苦手な女の子。

ひーちゃんは何でもひとりで出来るのにお世話を焼こうとするし。子供扱いする…。

人当たりの良い、誰ともうまくやれるひーちゃんが唯一自分から行かない娘さん。

ちなみにニナちゃんはおままごとのプロ。

ニナちゃんのおままごとで旦那さんをやった男子はもれなくニナちゃんが気になって仕方なくなる魔性の女。

ひーちゃんは毎回旦那さんをやらされそうになるが何とか逃げ出す。

おままごとは漢の遊びじゃないんだよ?ひーちゃんはそう思っている。

さて、ニナちゃんのお誘いだけど…?



『ぼく、ゆきでおしろつくるからだいじょうぶ…。』


歯切れの悪い言葉で遠慮するよ!


ニナ『ふたりで作ったら大きい立派なおしろ作れるよー♪』


『…。』


☆ ☆


以前、砂場で全く同じ提案を受けて共同作業でお城を作った事があった。

ひーちゃんは砂でお城を、兄ちゃんの好きな日本のお城をイメージして作る。


『ここのもんでまもるでしょ?ここのかべでふせいで…りっぱなてんしゅきゃく!』


天守閣は噛んじゃったけど、確固たるイメージを持って作るひーちゃんのお城は見てない所でニナちゃんの手によってシンデレラ城にリメイクされていくw


何と言う事でしょう!

ひーちゃんの城を守る為の無骨な高い壁は、お城が見やすくなるように低く、薄くされ、壁に花模様をニナちゃんの手で彫られる。


城の象徴たる雄々しい天守閣は取り壊され、飾り付けられた尖塔を何本も有する優美なお城へと変貌する。


ひーちゃんの力作、城を守る為の矢倉門は、


ニナ『今はいくさなんて無いじだいだよ!』


そう言うとお姫様に会いやすいように門は取り壊され、フラワーアーチのような可憐な入り口に早変わり!


ニナちゃんは手先が器用でそれがまた上手く綺麗に仕上がる。


『ひーちゃんとニナちゃんのお城すごい!』

『舞踏会とかするのかな?』

『綺麗!すごーい!』


ニナ『ふふ!ふうふの共同さぎょうなのー!』

『…。』


断じて違う。お城は漢の守るべき象徴。

身命を賭して奪い合う漢の戦場なんだよ!


ひーちゃんは文句言いたいけど、ニナちゃんに口で勝てる訳無いから黙って寂しそうに微笑むのだ。


☆ ☆

そんな思い出が頭をよぎり、ひーちゃんは断る姿勢。

でも、ニナちゃんだって?

新しい白いモコモコのコートに白い耳カバー、白い手袋と雪の妖精をイメージしたおろしたての可愛い真っ白な防寒装備でひーちゃんのハートを撃ち抜く気まんまん!

食い下がるけど、ひーちゃんはうんと言わない…。



ニナ(てごわいひーちゃんもかわいい!ぷらんBにしようっと!)


ひーちゃんが頑固なので、ニナちゃんは攻め手を変えるよ!



ニナ『じゃあさ?雪でドーナッツやさんごっこしよ?』


『ドーナッツやさんごっこ?!』


ひーちゃんは秋頃からドーナッツ屋さんに並々ならぬ感心を寄せているのだw

241話 ハートで繋がる参照


ひーちゃんは恐る恐る尋ねる…。


『ぼくがドーナッツやさんでいい?』


ニナ『いいよ!ひーちゃんがドーナッツ屋さん!』


『えー?!いいの?…やっぱりこうたいでやろう?』


ひーちゃんは舞いあがった!ドーナッツ屋さん!雪でドーナッツ作れるじゃないか!砂では作れないドーナッツも雪でなら作れる!

砂のドーナッツより雪のドーナッツの方が美味しそう!


ひーちゃんはドーナッツ屋さんが出来る嬉しさに夢中になりながらもニナちゃんもドーナッツ屋さんやりたいだろうから交代制を提案する。

この辺はひーちゃんらしい。


ニナちゃんは首を振る、


ニナ『ううん、ひーちゃんドーナッツ屋さん好きでしょ?ひーちゃんがドーナッツ屋さんずっとやって?』


『いいの?!いいのニナちゃん!』


ドーナッツ屋さんごっこ楽しいぞ!みんなで出来たら最高に楽しいだろうなぁ…。そう思いながらわくわくドーナッツ屋さんの準備をします。


こうしてひーちゃんはニナちゃんの策略にハマった…。







(…これはちがう…。)


最初だけ、ニナちゃんはドーナッツを買いに来てくれた。


ニナ『ドーナッツくださいな♪』


『へらっしゅー!!どのドーナッツがいいですか?

おすすめはポンデリン…』


ニナ『ふふ!おすすめでいいよ?

あ、な、た♡』



?!



『ぼくはドーナッツやさんのてんちょうです…?』


ニナ『そうね?

わたしはドーナッツ屋さんの店長と結婚したばかりのおよめさん!

あなた、今日は何時ごろ帰るの?』


『…きょうはおそくなる…かえりたくない…。』


ひーちゃんは家に居場所の無い疲れたお父さんみたいな事を言い、帰宅を拒否します。


ニナ『おいしいごはん作って待ってるわ?あなた?』


それをニナちゃんは許しません。

ひーちゃんはニナちゃんを無視して無口な職人の様な面持ちで黙ってドーナッツを作ります、ポンデリングー、オールファッション、エンジェルフランス、ハニィディップ。こないだ食べたドーナッツを想像しながら作るよ!

そうだ!やっぱり砂で作るドーナッツより?雪のドーナッツは美味しそう!


ニナ『夜7時、へいてん!』


ニナちゃんは無情にも閉店を宣言しますw

ひーちゃん悲痛な表情w

とぼとぼ家に帰ります。


ニナ『あ、な、た♡

おかえりなさい?おかえりなさいのちゅー♪』


『おそとからかえったら、てあらい、うがいしなきゃ…。』


ニナ『もう!ひーちゃんってば照れ屋さん♪』


『…。せいかくのふいっち…。』


ひーちゃんは意外と難しい言葉を知っています。

いよいよニナちゃんにNO!を突きつけようとした瞬間!


?『うわあ!かわいい!ドーナッツくださいな♪』


同じ組女の子がドーナッツに目を止めました!

ひーちゃんは大喜び!


『へらっしゅー!ドーナッツたくさんあるよ!』


女の子『ほんとだ!ひーちゃんが作ったの?!

すごーい!みんなー!』


ひーちゃんドーナッツ本店に人集りが出来ました。

それが更なる行列を産み、ひーちゃんドーナッツ屋さんは大繁盛!


男の子『ひーちゃん!ドーナッツの作りかたおしえて!』


ひーちゃんに弟子が出来ましたw

その間の本店は妻のニナちゃんが回します。予想外のブームにニナちゃんも大興奮です。


ひーちゃんドーナッツ屋さんは支店をいくつも出して新川幼稚園に一代ムーブメントを巻き起こしました。


ひーちゃんはもう、ひーちゃんドーナッツ店の社長として、実務はニナちゃんが担い、ドーナッツを作る事もなくなり、店長たちの新作をジャッジする仕事しか無くなりました。


みんながキャッキャドーナッツ屋さんごっこを楽しむ光景をひーちゃんは寂しく見つめながら、渋くつぶやきました。





『ゆめはかなえるまでがたのしい…。』



☆ ☆ ☆

昨日の更新で10万PVを達成できました。

こんなに長くなってしまったのに付き合い頂いてる読者様には感謝しかありません。

キチンと大団円を迎えられる様に頑張ります、もうしばしお付き合い頂ければ幸いです。


ある

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る