第39話 時は早く過ぎ、光る星は消える ~Before 10 Days OR One Person's Life~

 ~第四次小惑星群フォースインパクトの迎撃から十年後~

 

 そうだったな。

 お前は、いつも肝心な所で、私に逆らう。


 偶然、ホシクズの適性があって、誘拐され、反政府勢力のエネルギー源として酷使されただけだ。

 そんな人間は何十万人もいる。

 もっと過酷な経験をした人間は、星の数ほどいる。


 生きていれば良いではないか。


 昔、助けてやった恩義で、そこまでする必要はないだろう。


  生きるのに必死だった。

 自分の居場所を守るのに必死だった。

 必死に走り続けていたら、追いかけてくる人が増えた。


 自分の背中に夢を重ね追いかけてくる仲間達。

 自分が示した理想など、たかが知れている。

 ただ、飢えもなく脅威に怯えることがない生活。


 たれもが望むことを、求めた。

 ただの凡人だ。


 尊敬を受ける人間じゃない。


 アミークスもセレーネも眩しすぎる。

 だが、その眩しさが、いつの間にか居心地良くなってしまっていた。


 もう十年も経つのか。

 セレーネと話せなくなってから。

 まだ存在を保っていたはずだが、それを確かめる術もない。


 なあ、わしは間違っていたのか。

 お前達の願いに、報いてやれたか。 

 

 カグヤは立派に育ったぞ。

 まだ幼い所もあるが、経験を重ねていけば成長するだろう。

 あの子なら過酷な未来も乗り越えていく。

 

 その姿を、見たがっていたはずだ。

 

 カグヤを受け入れなくていいのか。

 

 生きていたいから、まだ現世に留まっているのだろう。

 必死に生きてきた人間が報われる世界を求めてきた。


 同じ未来を夢見てきた。

 これでよかったのか。 


 本当にいいのか。

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