第33話 見えない航海図 ~Before 10 Days~

 昼食の後、箱船号に戻って地球との交信を試す。

 プラトン採掘基地の設備も使って、地上で健在の通信施設との交信を試みのが、最近の日課になっている。


 今のところ成果はない


 発信側に問題はない以上、受けて側の問題だろう。

 予定では地上に通信施設を建設しているはずだ。

 工事がうまくいってないのだろうか。


 月と地球の間には、小惑星の破片やデブリが無数に滞留している。

 これらは広大な宇宙といえども、局所的な通信の妨げになる。


「お願い。繋がって」


 危険な小惑星の破片やデブリを避けるには、地球からの観測情報が必要だ。

 帰還の成功率を上げるには、地球側にサポートは欠かせない。


 あの子を無事に地球に送り届けるために、地球との通信は何としても実現したい。

 モニターを見ながら、思わず祈り捧げそうになった。


 脳内イメージに表示が飛び出る。

 カグヤから通信。


「カグヤ、どうしたの」

「オキナが目を離した隙にいなくなって、そっちに行っていませんか」

「落ち着きなさい。監視システムで位置情報は確認した」

「それが、上位権限で監視システムを停止させたみたいで、位置情報が取得できないです」


 慌てた口調で話すカグヤを見ながら、頭を抱えようになった。。

 あの状態でここまでのことができるのか。


 更に通信が入る。

 私とカグヤの二人宛に同時に通信が来た。


 脳内イメージにピーターが現れる。


「ピーター、どうしたの?」


 カグヤが、驚いた声色で質問する。


「大変、採掘場の閉鎖区域、侵入者あり」


 ピーターが言い終わると同時に駆け出した。

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